第7話 森の中の出会い
ある程度は依頼をこなす事にも慣れた頃。女神様に急かされた事もあって、私は
宿に戻る途中で夕食を済ませ、宿に戻った私は水の入った桶を貸してもらい、それでタオルを濡らして体を拭いた。あぁ、ホント現代のお風呂が恋しい。いつかはお風呂のある宿とかに泊まりたいなぁ。
なんて考えながらも、体を拭いて洗った後、いつもなら後は寝るだけなんだけど。
「ふぅ、スキル画面、オープン」
ベッドの淵に腰かけて声を発すると、それに答えるように私の眼前に
「さて、と」
私は改めてスキルツリーを見つめ、どのスキルを獲得するか考え始めた。
ここ数日の戦闘で
「う~ん」
私はスキルツリーとにらめっこしながら唸っていた。スキルに関しては、前に女神様に聞いた通り。スキルの大まかな方向性は二つ。
一つはフラッシュライトやホロサイトと言った、新しいパーツを解放して装着できるようにしたり、銃本体を強化という形で扱いやすさなどを強化する物。
もう一つは純粋に弾の威力をアップさせたり、特殊な銃弾を撃てるようにしたり、これまたスキルの力で
問題は、スキルツリーが二つある事。なので欲しいスキルがある場合は、そのスキルが存在する方のスキルツリーにポイントを集中的に割り振らないといけない。そうなるともう片方のツリーのスキル獲得が遅くなっちゃう。
かといって逆に両方のスキルをバランスよく取ろうとするとそれだけ多くのポイントが必要になり、レベル上げ、つまりポイント獲得に時間をかけなきゃいけない。
詰まる所、一極集中で取りたいスキルの優先順位をつけるか、時間をかけてバランスよくスキルを集めるか。こうなるんだよねぇ。そして今まさに私はその問題に直面していた。
二つに分かれ、そこから更に枝分かれするスキルツリー。そしてなんという不運なのか。『現時点で欲しいスキルが二つ』ある。しかも、そのどちらかを取るだけで、今持っているスキルポイント2つを丸々消費してしまう。
「う~ん、困ったなぁ」
スキルツリーを見つめながら、自然とため息が漏れる。
問題のスキルは二つ。一つは『オプションパーツ:銃剣』。もう一つは『
一つ目の銃剣は、一個前のスキルを解放する事で追加される、バレル下部のマウントレールを生かして、そこに銃剣をセット出来るというもの。今の所、前衛職の仲間と、そう言った近接戦用の形態を解放出来ていない私にとって、こういう武器は欲しい。
でももう一つの、
どっちも欲しい。甲乙つけがたい。故に私は迷っていた。
「……どうしよ」
何度目かになるため息をつきながら、スキルツリーを見つめていた。
≪もう。ハルカってば時間かけすぎよ?≫
その時聞こえて来た女神様の声。と同時に、いつもの幻影が私の隣に腰を下ろした。
≪こういう時は、気楽に考えた方が良いわよ?スキルだって、時間をかければ後で取得できるんだから≫
≪そうは言いますけど……≫
女神様の言う事も分かるが、スキルは私の戦闘方法、延いては命に係わる物だし。やっぱり慎重になっちゃうんだよなぁ。
なんて考えていると……。
≪ハァ、そんなに悩むなら、こっちの
≪え?なんでですか?≫
女神様は
≪ハルカがオプションの銃剣を欲しがってるのは、接近戦のための装備が欲しいからでしょ?でもハルカ、あなた接近戦で戦って勝てる自信、あるの?≫
≪ッ、それ、は……≫
聞かれてもすぐには答えられなかった。というか、はい、と返事なんか出来なかった。接近戦で勝てる自信なんて、無い。格闘技とか剣道とか、何も学んだ事が無いんだもん。
と、そんなことを考えていた時、ふと女神様の方を見やると、目と目があって思わず息を飲んだ。
≪その様子じゃ、自信は無いみたいね≫
≪……はい≫
真っすぐ私を見つめる女神様の真剣な表情と声に、私は本音を隠す気力を失いただただ頷いた。
≪だったら、最初から接近戦に持ち込まれないような戦い方をすればいいのよ。幸い、
≪た、確かに≫
女神様の言う事は最もだった。確かに自分や他の人まで治せるのなら、
≪ありがとうございます女神様。そのアドバイス、使わせてもらいます≫
≪いえいえ。役に立てて良かったわ。それじゃ、今日は退散するわね≫
そう言って、女神様の幻影が溶けるように消えていく。それを見送った私は、改めてウィンドウに目を向けた。
そしてすぐさま、お目当てのスキルへと視線を集中させた。するとウィンドウの中央に『こちらのスキルを解放されますか?』との文字が浮かび上がる。えと、とりあえず頭の中で『はい』と意識する。すると『スキルの解放を実行します』、との文字が浮かび上がり、アイコンに巻き付いていた鎖が砕けて消え、スキルがアクティブになった事を表すように、アイコンが仄かに輝く。
まず開放したスキルが『
あ、でも使い方の説明とかスキルの説明欄の所に無いし、どうするんだろう?と思って居ると……。
『スキルの解放を確認。これよりスキルのアップデート及び知識のインストールを開始します』。
そんな文字がウィンドウの中央に浮かんだ直後、いつぞやのような知識がインストールされる感覚に襲われた。
「うっ」
突然の事に思わずうなったけど、気持ち悪さもすぐに収まった。成程、こういう事か、と納得していると。
傍に置いてあった
私は無言でホルスターに手を伸ばしてそれを取り、まず
マガジンは、本来なら抜く必要は無い。なぜなら
さっきの知識インストールで分かったけど、
これら
改めて新しいマガジンを見てみるけど、
で、試しに
「今日はもう寝よっと」
徹甲弾(APバレット)の威力の確認とかは、とりあえず明日、依頼を受けつつやってみようと決め、私はマガジンを
そして翌日。私はいつものようにギルドへと行き、ゴブリン討伐の依頼を受けると森に向かった。
≪おはよ~ハルカ≫
≪あ、女神様、おはようございます≫
歩いていると、いつものように女神様の幻影が現れ、隣に並んで歩き出す。
≪今日は、成程。昨日の夜に獲得したスキルの確認ね?≫
≪はい。
≪成程ね。って、あら?≫
と、その時。隣を歩いていた女神様が何かに気づいたようで前方を注視している。
≪女神様?どうしました?≫
≪いや、あの子って昨日ハルカがギルドで見かけた子じゃない?≫
≪え?≫
女神様の指さす先に視線を向けると、前方に見えた、特徴的な金髪ポニテの見覚えのある後ろ姿。
≪あっ、確かにあの後ろ姿、そうですね。確か、エレナ、ちゃん?≫
≪やっぱりそうよね?あの子も森に行くのかしら?≫
≪そうじゃないですか?向かう方向同じみたいですし≫
前方に見える、エレナちゃんの後ろ姿を目で追いながら、私も歩みを進める。
≪どうせならハルカ、あのエレナって子に声かけてみたら?一緒に冒険しませんか、ってさ≫
≪え?あの子、ですか?≫
女神様の言葉に思わず、私は少しだけ眉を顰めたを浮かべた。
≪いやいや、無理ですって。あの子なんだか一匹狼って感じですし。誘った所で断られるだけですって。他の人たちもそうみたいですし≫
私は無理無理、と言わんばかりに小さく首を振った。というか、最初に一匹狼の女の子を口説いて仲間にする、ってのも中々にハードル高い気が。そう思うとあのエレナって子を口説く気にはなれなかった。
≪そうかしら?案外、あぁ言う一匹狼の子はね、内心では人の温もりや優しさに飢えている物よ≫
≪そういうもんですかねぇ?≫
≪えぇ。そういうものよ≫
自信満々な表情で語る女神様に私は懐疑的な目を向けてしまう。温もりや、優しさかぁ。まぁじゃあ……。
≪分かりました。何か縁があれば声をかけてみますよ。望みは薄そうですけど≫
≪ふふっ、こういうのはトライ&エラーよっ。がんばって♪≫
女神様は私のため息交じりの言葉に笑顔でそう返した。簡単に言ってくれるなぁこの女神様は。
なんて思いながら、私は森を目指して歩いた。んで、森に入って中に少し歩いた所で足を止めて周囲を見回す。
「周りには、誰も居ないか」
周囲に人や魔物が居ない事を確認すると、私は
カシュッ、という軽い音がしてこれで徹甲弾(APバレット)の装填は完了なんだけど。見た目には一切変化なし。こうなったら試し撃ち、してみたいなぁ。
私はもう一度周囲を見回した。よし、周囲には誰も居ない。とりあえず、反動とか分からないから両手でしっかりグリップを握り、アイアンサイトで適当な木の幹に狙いを定める。
そして引き金を引いた。次の瞬間、
「おわっ!?」
ってそうだ弾はっ!? 撃った弾がどうなったのか気になって木の幹の方に目を向けると、見事に木の幹に銃弾がめり込んでいた。確か、前に
「普段の戦いでは使えないかもなぁ」
私はため息交じりにマガジンキャッチボタンを押して徹甲弾(APバレット)のマガジンを抜くと、左腰のマガジンスロットに押し込んだ。そして代わりに
これで
「これ試すには自分で自分を傷つけないといけないんだよなぁ」
思わる気だるげな独り言が漏れる。ナイフで指先をピッ、とやって自分に試しに撃ってみれば良いのかなぁ?って言うか今更ながらに思うけど自分に銃口向けるのも怖くなってきたなっ!?どうしよっ!
自分を傷つけるのも怖いし、何より自分に銃口向けるのも怖い。う~ん、これじゃ
試さないと効果が分からないけど、でもやっぱり色々怖い。そんな思いが頭の中でグルグルと回っていた時だった。
『……ィン……』
「ん?」
静かに考え込んでいたその時。何か聞こえた気がした。何?と思いつつ即座に
風に枝が揺れ、葉が擦れる音に混じって、金属同士がぶつかりあうような音。これってもしかして、剣戟の音?だとしたら誰か、多分冒険者が戦っているんだろうけど。
でもこれ、どうしよ。いや、ピンチなら助けに行くのもやぶさかじゃないけどさ。下手に乱入して『獲物を取られたッ!』って目の仇にされるのもなぁ。そのままどうしようと迷っていたけど。
「……ぁぁっ……!!」
「ッ!?」
こ、今度聞こえて来たの、なんか悲鳴っぽくないっ!?しかも女性の声だったようなっ!?あ、あぁ何かここで迷ってたら後悔する気がするぅっ!こうなったらっ!
「行くっきゃないかっ!」
考えるより先に、声がした方に走り出したっ!文句の一つや二つ、聞いてやろうじゃないのっ!そうなったら『助けられる方が悪い』的な事、ぶつけてやるしっ!
茂みをかき分け、とにかく走るッ!お願いっ!間に合ってっ!と、心の中で願いながら走り抜けた。不意に、正面の茂みを抜けて開けた場所に抜けた。
「ッ!?」
『グッ!?』
『グギャッ!?』
その時、私の目に飛び込んできたのは、あの金髪ポニテが特徴的なエレナちゃんと、彼女を半円状に包囲する10匹以上のゴブリンだったっ!?しかも、エレナちゃんはボロボロッ!あっちこっちに切り傷があって血を流してる上に息も上がってるっ!武器らしい剣も弾かれたのか彼女から少し離れた所に転がってるっ!これは不味いッ!
「このぉっ!」
即座にゴブリン連中目がけて、片手で
「ッ!あなた、は?」
「同業者だよっ!」
銃声に負けないように叫びながらも銃弾を連射する。
『グガッ!?』
『アギャッ!?』
次々と放たれる銃弾。流石に百発百中とは行かないけど、弾が当たったゴブリンから次々と倒れていくっ!3匹目ッ!次、4匹目ッ!まだまだぁっ!5匹目ッ!
繰り出される銃弾の雨と銃声にゴブリンたちは委縮しているように見えたッ!そのまま怯えてなさいっ!逃げてくれたって良いんだからっ!
半分は倒してもまだゴブリンたちの方が多い。一気に攻められたら不味いッ!だから、攻められる前に倒すッ!
「そこぉっ!」
6匹目の腹を銃弾が貫いた時。
『『ギギャァァァァッ!!』』
ゴブリンが2匹、粗雑な剣を手に向かってきたっ!!正直怖いっ!でもやるしかないっ!来るなら迎撃するしかないっ!恐れるなっ!戦えッ!撃てっ!後ろには、傷つき倒れた子がいるんだからっ!
「当たれぇぇぇっ!!」
願いを叫ぶように、叫びながら引き金を引きまくる。1発目、2発目ッ!外れたッ!3発目ッ!
『ギギャッ!?』
1匹目に当たって倒れたッ!これで7匹目ッ!もう1匹もっ!更に連射するけど、当たらないッ!でもゴブリンが手にしていた剣を振り上げたッ!でもなんでっ!?まだ全然、リーチに届いてないっ!
と、その時、ゴブリンが下卑た笑みを浮かべながら、剣を私目がけて投擲してきたっ!?
「ッ!?」
咄嗟の事で、何とか体を傾けたけど、避けきる事が出来なかった。投げられ、回転した剣が右肩の辺りを掠め飛ぶ。
「痛っ!?」
直後、鈍い痛みが右肩を襲う。痛みで、
その時。
≪戦いなさいハルカッ!目の前の敵を、打ち倒しなさいっ!≫
「ッ!?」
突如として聞こえた女神様の声で、反射的に落としかけた
≪撃ちなさいっ!あなたの敵をっ!≫
「ッ!!!」
女神様の激励に背中を押され、私は眼前のゴブリンを鋭く睨みつけた。
『ギ、ギッ!』
剣を投げ捨てる形になったゴブリンは、明らかに動揺していた。避けられると思ってなかったのかっ。でも動かないのなら、ただの的ッ!
「食らえぇっ!」
雄叫びを上げながら引き金を引き、連射。数発はゴブリンの周囲に命中し、武器を持たないゴブリンは咄嗟に腕で顔を守ったっ。でも、ゴブリンの軟な腕なんて、無意味っ。一発でゴブリンの腕が千切れ飛ぶっ!そんでもって2発目ッ!どんぴしゃっ!お腹のど真ん中をぶち抜いたっ!
「よしっ!」
これで残りは3匹ッ!と、残っていたゴブリンたちに狙いを定めたのだけど。
『『ギ、ギギィィィッ!』』
『ギッ!?ギィィッ!』
2匹が慌てふためきながら逃げ出し、残っていた1匹も慌てた様子でそれに続いて逃げ出した。こちらに振り返りもせずに、一目散に森の奥へと逃げていく。
逃げて、くれたと思って良いのかな?いやいやっ、警戒は続けないと。逃げたと思って後ろから奇襲されたら事だしっ!
私は周囲に銃口を向けつつ、エレナちゃんの傍へと歩み寄る。もう一度周囲を見回して、敵となる存在が居ない事をしっかり確認してからエレナちゃんの傍で地面に膝をついた。
「大丈夫っ!?」
すぐさま彼女の様子を見る。あちこちに掠り傷があり、少量と言えど血が流れている。早く止血しないとっ!
「待っててっ、今手当をっ!」
私は
「必要、無いわっ!」
その時、エレナちゃんが表情を歪めながらもそう吐き捨て、立ち上がった。
「ちょっ!何してるのっ!傷の手当をしないとっ!?」
「だから言ってるでしょっ!必要、無いわっ!こんなのっ、放っておけば塞がるわっ!」
戦いの疲労かダメージか、傷の痛みのせいか、表情を歪めながらも、それでも語気を強め吐き捨てるようにエレナちゃんは声を荒らげる。そのまま彼女は落ちていた剣の方へと向かうけれど、その足取りはおぼつかない。見ると片足を引きずっていた。もしかして戦いの途中で捻挫でもしたのかなっ?って、違う違うッ!今はそうじゃなくてっ!
あれを放っておいたら流石にヤバいでしょっ!?下手に放っておいたら傷口から細菌とかが入って化膿したり感染症になる可能性もっ!ど~しよ~っ!?と内心慌てていると……。
≪ハルカ。何を慌てているのよ≫
その時聞こえた女神様の声ッ。はっ!そういえばさっき助けてもらったんだったっ!
≪慣れない事態に遭遇してテンパるのは分かるけど、あなたの腰に下げた
≪え?≫
腰に下げた、と言われて思わずホルスターに収めた
≪そっか
≪そういう事。ハルカも見たところ軽く怪我してるみたいだし。それを治療するところでも見せて、彼女も治療してあげたら?≫
≪はいっ!ありがとうございます女神様っ!≫
テンパっていた所に届いた女神様の声は正しく天の声ッ!私はすぐさまホルスターから
その直後、改めてエレナちゃんの様子を伺うけれど、彼女は何とか剣を拾い、それを鞘に納めた所だった。そして彼女は、私の方へ視線を向けた。
「……助けてもらった事には、お礼を言うわ。ありがとう」
そう言って彼女は会釈程度に軽く頭を下げた。
「でも、私は他人の手を借りるつもりは無いわ。借りを作る気も無い。だから、あなたが倒したゴブリンの所有権を全部あなたに渡すわ。それで貸し借りは無しよ」
それだけ言うと、彼女は離れていこうとする。って不味い不味いッ!
「ちょ、ちょっと待ってっ!」
「……何?」
「い、いや無茶だよっ!その傷で行くなんてっ!見たところ足も捻挫してるみたいだしっ!すぐに治療しないとっ!下手したら傷口から細菌、あ、え~っと汚い物が入って傷口から化膿しちゃうかもよっ!?それが悪化したら、最悪手足を切断しなきゃいけなくなるかもよっ!?」
「ッ」
四肢切断の話を聞くと、流石に彼女も息を飲んで足を止めた。いや、私だって医学の心得がある訳じゃないから、今の話は言い過ぎかもしれないけれど。でもこの世界の医療技術は、多分私の世界のそれより劣っているはず。なので今すぐ治療しないと。
「……あなた、手当って言うけど、そういうのの経験あるの?」
やがて、少し迷うようなそぶりを見せてから彼女は問いかけて来た。
「ううん。手当の経験は無いんだけど、治療する、え~っと、道具があるからっ」
まさか『治療する弾で人撃って治しますっ』とは言えないから、とりあえず道具、と言って手にしていた
「それで?それは武器でしょ?」
彼女は訝し気に私を睨みつける。あ~、まぁこれで戦ってたからそう言われても仕方無いんだけど。こうなると女神様の言う通り、信じてもらうためにまず自分を撃って治療しないとっ。若干怖いけどっ!えぇいままよっ!
「見てて?」
私は一言、そう言うと、自分の左手のひらに銃口を突きつけた。これならもし、貫通しても大丈夫、なはず。
分かっていても、自分に銃口を向け引き金を引く事には躊躇いがあった。それでも、やるしかない。今ここで、自分で試さないと彼女は多分私を信じてくれない。それじゃあ彼女を治癒する事なんて出来ない。あぁもうっ!女は度胸ッ!
「えいっ!」
ついに覚悟を決め、引き金を引いた。いつもの
と、直後。着弾地点から緑色のオーラが現れ、そのオーラが私の肩の傷口の辺りに、ひとりでに集まって行った。すると、まるで時間が巻き戻るように傷が癒えていく。もちろん再生の痛みも無し。おぉ、すごっ!
僅か数秒で傷が消えたっ。まるで傷など無かったようにっ。ただ服の傷と周囲を赤く染める血の色だけが残った。
「ッ!ホントに、治った?」
「ね?すごいでしょ?」
私は彼女に向かって微笑みかけた。けれど心の内はと言うと……。
いや~よかったぁっ!すごいでしょ?なんて言いつつドヤ顔してるけど、内心はもう心臓バックバクッ!……って、今はそんな事気にしてる場合じゃないっ!早く彼女の治療をしないとっ!
私はエレナちゃんに歩み寄り、その左手を取った。
「ッ!?何をっ?!」
「大丈夫。治療するだけだから」
突然の事に戸惑う彼女に微笑みかけ、出来るだけ安心させようと努める。彼女の様子を伺いつつ、左手のひらに銃口を向ける。
「ちょっとだけチクッとするけど、すぐに痛みは引くから我慢して」
「え、えぇ」
彼女は緊張した様子で弱々しく頷いた。そんな様子を一瞥しつつ私は狙いを定め、引き金を引いた。響く銃声。
「ッ」
次いで彼女の僅かに痛がるような声。けれど次の瞬間、彼女の目は着弾点からあふれ出した緑色のオーラに奪われた。
緑色のオーラが彼女の四肢に出来た傷にまとわりつくようにして、その傷を再生させていく。こうして見るとゲームの再生エフェクトみたいだなぁ。なんて思いながら見守っていると、彼女の傷が消えた。
「ッ、ほ、本当に治ってる?」
エレナちゃんは目を見開き、信じられないと言わんばかりの表情のまま自分の手や足を触り確かめている。
「どう?体のどこかに違和感とかは無い?」
「……えぇ、大丈夫よ」
私の問いかけに、彼女は静かに頷いた。まだ驚きが抜け切れてないって感じかなぁ。と、思って居たその時。
≪ちょっとハルカッ!これはチャンスよッ!≫
≪うぇっ!?女神様ッ!?なんですか突然ッ!?≫
急に女神様が声をかけてきて内心びっくりッ!思わず体がビクッ、て跳ねたけど、エレナちゃんには……。良かった気づかれてないっ!まだ傷があった所を確認してるっ。
で、それは良いとして……。
≪どういう事ですか女神様?これがチャンスって≫
≪それはもう決まってるじゃないっ!あのエレナって子と仲良くなるチャンスって事よっ!幸い今、あの子はハルカに助けられた直後ッ!少なからず恩義を感じているはずっ!そこに付け込むのよっ!≫
≪ちょっ!?女神様が来易く付け込む、なんて言わないでくださいよっ!≫
まるで詐欺師みたいな言葉に思わずツッコまずにはいられないっ!
≪良いからっ!こうして出会ったのも運命って奴よっ!物は試しっ!自己紹介でもしてきなさいっ!森の中から始まる出会いと百合ロマンスよっ!≫
うぅ、女神様の押しが強いぃ。……ハァ、仕方ない。こうなったら、やるだけやってみますか。
私は今も体の様子をチェックしていた彼女に近づいた。
「どう?体の様子は?どこか痛む所とかは?」
「えぇ。大丈夫よ。おかげで助かったわ。ありがと」
彼女は笑みを浮かべず、ただ静かにお礼を口にした。う~ん、仲良くなれる気はしないけどっ!ダメで元々っ!
「そっか。良かった。あっ、私はハルカって言うの。あなたは……」
名を聞こうとした。
「ッ」
けれど次の瞬間、まるで彼女は睨みつけるように鋭い目を私に向けて来たっ!?
「えっ!?」
それに驚いて思わず声が出ちゃうっ!
「……助けてもらった事への恩義は感じているわ。ありがとう。でも私、他人となれ合う気はないの。じゃあね」
彼女はそれだけ言うと、そそくさと歩き出してしまった。瞬く間に茂みの向こうへと消えていくエレナちゃん。私はそれを、呆然と見送る事しか出来なかった。
私は数秒、その場で呆然としてしまった。いやね、分かってたよ?ギルドで一匹狼だって聞いてたし。断られるかな~?とは思ったよ?でもさぁ、流石に睨みつけるのは酷くない?
≪まぁ、その、ハルカ。……ドンマイ≫
≪うぅ、人と仲良くなるの、難しいぃ≫
心を読んで私の心情を知ったのか、気まずそうに励ましの言葉を投げかけてくる女神様。でも正直私は、泣きたかった。
だって私、8人も彼女作って、8股してハーレム作ってそれを維持する必要があるんだよっ!?もういっそ、この
私の百合ハーレムを作るための道のりは、最初から前途多難な始まりを向けていたのだった。
第7話 END
異世界百合旅~~転生した私は百合好き女神からチート武器を与えられ、冒険に出ましたっ!~~ @yuuki009
★で称える
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