第8話 welcome...
「さっきの話じゃ足りなかった……?」
「今日じゃなくて昨日の話。この人言葉が通じなかったから良かったけど、兄貴、魔法使ったとこ見られてたよ。」
え?まじか。いや、でもあそこにいた人は全員消滅していたはずだし、アマノ以外に近くに人はいなかったはず。
「そんでさ、どんな方法で攻撃していたのか教えてほしい、って言ってるよ。ほんと、どうするの?」
「あぁっとぉ……?」
マズい。あまり他人には知られたくないのだ。知っている人が増えるほどバレやすくなる。逆に誰も知らなければバレない。魔法使用者だとばれることは死に等しい。
「シラを切る?とか?」
「多分無理だよ。その時の状況とか、兄貴が攻撃したって思った理由とか、結構詳しく教えてくれたんだけどさ。方法は理解わかってないみたいだけど、攻撃の主は完全に兄貴だって確信してるし。」
さて、どうしたものか。この人は俺が攻撃したって完全に理解しているようだし、ここで隠すのもまた何か変だろう。でも、本当に話していいのか。何かいい感じに脚色して……って言ってもそんな事をすぐ思いつくほど頭の回転が速いわけではない。
そうしてものの数秒考え、結論をだす。
「えぁ、うーん……言っちゃう……?言葉が喋れないなら広まることもないだろうし、隠すのも面倒だろうし。」
本音としては後者だが、この人には知られても特には問題ない、と思った。言葉が通じないほど遠くの人なのだろうから。
「じゃあ、いい感じに説明お願いね?」
そして何よりこれを話すのは妹。いい感じになんとかしてくれる……はず!
そう思い妹に頼んだが、返事は意外なものだった。
「ん?自分で説明しなよ。」
「え?言葉が……」
そう、通じないはずである。しかし。
「ああ、私の魔法使えばなんかいい感じに翻訳されるっぽいから。兄貴とでも問題なく会話できるはずだよ?」
いい感じではあるが、そうじゃない。つくづく思うが、本当に我が妹よ、お前の魔法、万能すぎやしないか。
「いや、うーん、会話難しいと思うよ?うん。」
「そお?じゃあ……」
そう言って妹は何かを呟く。
「どお?この言葉が理解できますか?」
「はい。ちゃんとわかります。えっと、私の言葉は大丈夫でしょうか?」
うーん、大丈夫じゃない。問題大アリだな。本当にしっかり、違和感を微塵も感じないほど上手に翻訳されてるな。
「はい、しっかり理解できてます。残念ながら。」
本当に残念だよ。俺の言葉を聞いて妹は続ける。
「先程あなたに質問されたことは基本的にこの男が答えるので。面倒だとは思いますが、もう一度質問してあげてください。」
言い終わるとすぐに手をひらひらと振り、颯爽と部屋から出て行った。
何とも言い難い空気が流れる。
妹よ、俺はどうしたらいいんだ……
王国軍 vs 異世界軍 winner is 俺!? 老いた羊さん @_-_-__-_
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