夕暮百物語・第28話 胃液
由実さんは就職のため地元の広島を離れた。勤め先は岩手。寂しい思いをした。
その生活にも徐々に慣れていく。同僚Oに出会えたからだ。
Oは同性で由実を気にかけてくれた。ただ1年程が経過すると悩みが出来る。
夜、頻繁に金縛りに合う。Oは「取り憑かれてるのでは?」と親身に話す。
そのことが頭に離れず、由実さんは拝み屋を生業とする広島の祖母に話を伝えた。
祖母は電話越しに、「生霊よ。とっても酷いね。あんたを妬んでる」と返した。
祖母は続けて「枕元に刃物を赤い布で包みなさい、それで分かるから」と答えた。
言われた通りにすると、金縛りは消えた。出社し、Oに経緯を話すが元気がない。
そしてOは突然みぞおちを抑え、のたうち回り、病院へ運ばれた。
胃に穴が開いていたことが分かった。刃物で切られたような穴だった。
由実さんが帰宅すると、枕元にある赤い布に包んだ刃物が濡れていた。
周りには水はなく、布からまるで胃液のような臭いがしたそうだ。
由実さんはその後、Oに距離を置かれた。理由は分からない。
夕暮百物語 穢 夕暮怪雨 @yugurekaiu
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