第4話
あの夜から、俺は廃人のようになってしまった。仕事ではミスを連発し、若年性の痴ほう症じゃないかと言われるようになった。そして、人事の部長から呼ばれて「有休取って静養したらどうですか?」と勧められた。俺は一人になるのが怖くて、その提案を断った。
***
あの夜の後、女から一日何度もメッセージが届くようになった。
「今日、デパートに赤ちゃんのグッズを買いに行ったんだ」
そうして、新生児用のベビー服の写真が送られて来る。
「今日、うちに寄れない?」
俺が断っても毎日誘って来た。
数か月後には、おなかが大きくなっている写真もあった。
「赤ちゃんがおなかの中で動いた」
「名前何にしたらいい?」
俺は適当に返事を書いていた。もちろん、あの夜から一度も女に会ったことはなかった。
「◎◎医大病院に入院するから。出産予定日は十月十五日。病室は****だから」
俺はそれも無視をした。女は親族と絶縁しているから、付き添ってくれたのは会社の人だったらしい。
そして、史上最悪の日がやって来た。
「赤ちゃんが生まれたよ💑」というメッセージが届いた。あまりの絶望に失神しそうだった。
「名前何にしようか?聡史君の漢字を一個もらおうかなぁ」
自然と涙がこぼれた。猟銃を向けられた時の精神的なショックで、俺は一日何度も泣いてしまう。
俺はメッセージの次に届いた写真を恐る恐る見た。
すると、そこに写っていたのは、普通の赤ちゃんではなかった。
張り子人形のようにボロボロの表面をした、得体のしれない何かだった。これは何だろう…。
生き物なのか?
それとも…。
「今から会社に赤ちゃん見せに行くね!パパ👶」
俺の思考は停止した。
ディナー 連喜 @toushikibu
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