第4話 ボディガードはバナナく

 あ、あぶねー! 危うくお嬢の子供らしさに大爆笑をかましてしまうところだったー。

 しかし、危なかったと言ったらオムライスやハンバーグもそうだ。

 何でも子供が好きな食べ物ランキング上位のものを作れと言ってくるものだから、笑いで腹がはち切れそうになりましたよ。

「このわたくしの鞭から逃げられると思わないことね。む・さ・し?」

 ハッハッハッ、どうやら私の目の前では、到底理解出来ようもないことが起こりかけているようだ。

 これは現実では無いはずだ。そうだ! 夢だ!

 これは何かの間違いだ! そうに違いない!

「お嬢、好きなものは人それぞれ。それを笑うような輩はこの私におまかせ下さい!」

「どの口が言うのかしらね? 武蔵?」

 あっ、これはダメだ。お嬢が笑っていらっしゃる。ははっ、特に目が。

「さぁ、武蔵。覚悟は良いわね?」

 ──刹那、お嬢の鞭による連続攻撃をもろに食らったのは言うまでもない。

「はぁーーっ!!」

「アベシッ、アベシッ!」

「はぁーーっ!!」

「アベベッ、アベベッ!」

「オラオラオラオラッ!」

「ちんすこうっ、ちんすこうっ!」

 そんな鞭のやり取りを私はお嬢と数時間繰り返しました。


***


「はぁっ……はぁ……。武蔵、少しは懲りたかしら?」

「ず、ずびばぜんでじた。お嬢」

 顔面が腫れ上がりバケモノになったのは言うまでもない。

「分かれば良いのよ、分かれば。これ以降、わたくしの機嫌を損ねないことね」

「はい、この武蔵頑張って精進致します」

「あなた、怪我が治るのが早すぎはしないかしら?」

「当然でございます。我々は貴方様のボディガードなのですから!」

 それ、全然説明になってないのかしら。

 あと前から思っておりましたが、武蔵ってわたくしに怒られたのに、すぐにいつも通りに戻るのよね〜。

 意外にもエネルギッシュなのかしら?

「それよりも、お嬢。私はあれほど言いましたよね。ネットの世界を甘くみすぎでございますと」

「む~っ」

「『む~っ』じゃありませんよ。ほっぺちゃんを膨れさせたってそうはいきません。今日という今日はもう駄目ですからね。これを機にインターネットなんかで配信するという行為をやめて頂き、お嬢のチャンネルは削除させてもらいます!」

 くぅ〜、せっかくここまで成長させてきたわたくしのチャンネルを消すですって!?

 それは絶対になりませんわ! 考えて、考えるのよ空泉葵。何か、何か武蔵がお父様に報告されて嫌なことはないか探すのよ!

 先ずはあの時起きたことを整理するのよ。

 最初はわたくしがパソコンの画面とにらめっこしていましたわ。

 そこに変態たちが家に押し寄せて来て、そしたら武蔵がわたくしの後ろから助けに…………はっ!

 これですわっ! これなら武蔵もチャンネルの削除をしようだなんて思いませんわ! 

 おーほっほっほっ! わたくしはなんて頭が良いのかしら!

「ビビビッと解決ッ!」

「突然どうしたのですか、お嬢?」

「ふっふーんっ! 武蔵、わたくしは気付いてしまいましたわ! あなたはわたくしのチャンネルを削除することが不可能だということにっ!」

「な、ななな、そんなバナーナことがっ!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

配信者お嬢様に近づく者はボディガードが許さない! 小鳥遊 マロ @mophuline

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ