第3話 お掃除開始

「さぁ〜て……汚れ仕事の始まりだ」

『特定班、位置は割れたか?』

『バッチリですよ、武蔵さん! 今そちらに座標を送信しましたのでご確認を』

 これは中々に骨が折れそうだ。

「俺たちA班とお前たちB班はこの近辺一帯、C班はお嬢の護衛を、D班は全国の空泉ボディガード支部に至急応援要請を。それが一段落した者から犯罪者共の捕縛に向え」

「「「「うっす!!」」」」

「次代空泉家当主になられる葵様に手を出したこと、後悔させてやれッ!」

「「「「うおおおおおおおっ!」」」」

 安心して下さいお嬢。我々がお嬢に代わって、イカれたゴミ虫を掃除してまいります。


***


 無線連絡

《こちらブラボーワン、上空で飛行中のヘリ全機に連絡》

《第7分隊から第8分隊は犯人の捕縛を最優先とし、逃走を図るようなら、その場で射殺するのも厭わない》

《第12分隊から第15分隊は警察当局と連携し、近辺にいる交通網に規制及び犯人の確保に専念せよ》


「こちらアルファーワン、了解した。すぐに向かう」

「うん?」

「どうした?」

(あ、あれはっ!)

「ターゲットが真下にいる、降下準備!」

「お、おい! 降下するにはまだ──」

「出るっ!」

「あっ、ちょっ──」

「俺たちも続くぞ、智也ともなりロープを頼む!」

「わ、分かった!」


***


「ペッ! 『何がクソったれどもだ!』だ。最近の若いもんは頭が固いんじゃ……ん? これは……ヘリの音? おん?」

 (えっ? へり? 人?)

「じじぃいいいいいいいッ!!!!」

「な、何じゃ!?」

「このネットランチャーでも食らえっ!」

「う、うわあーっ!」

「対象を確保、ヘリに乗せろ」

「は、離せ!」

「じじぃ、大人しくしろ!」

「オーライ、オーライッ! 智也、ゆっくりと上げろ!」

「わーってるよ」


《こちらアルファーワン、対象を確保》

《こちらブラボーワン、了解。アルファーワン、引き続き任務を遂行せよ》

《了解》


「武蔵、ヘリに運び終わったぞ」

「ご苦労だ大和。だが任務はまだ終わっていない」

「わーってるって! 任務はちゃんと把握してるって。だけどな、お前のその堅苦しい空気はどうにかならないのかよ」

「そんなに堅苦しいか?」

「ハッキリと言おう! 堅苦しいわ!」

 ──あれから数時間後、アオちゃんこと空泉葵の無断ライブ視聴者約一万人が空泉家の牢屋に収容された。


***


 コンコンッ


 誰かしら? ピッザァ、タピオカ、おにぎりの宅配かしら?

「どうぞ」

「お嬢、失礼します」

「あら、武蔵じゃない」

 宅配じゃ無かったのね。

「お嬢、宅配は部屋には来ませんよ」

「えっ!?」

 何で分かったんですの!?

「何故分かったかと、申し上げるとお嬢はすぐに顔に出るので、非常に分かりやすいですとだけ伝えておきます」

「なっ!? 武蔵、それはからかっていますの?」

「いえ、からかってはおりません。それよりお嬢、体調の方はどうですか?」

 は、話をそらしましたわね! はぁ、まぁ良いでしょう。

「えぇ、だいぶ良くなりましたわ」

「それは良かったです。何か食べたい物、飲みたい物などはございますか?」

 あら、武蔵にしては気が利くじゃない。

「では、お言葉に甘えてを所望いたしますわ」

「ぷぷっ」

「……武蔵、今笑いましたわよね?」

「いえ、とんでもございませんお嬢。しかしながらお嬢。本日はオムライスを作ることは出来ません」

「何故ですの?」

「理由はお伝えできませんが、作れないと言っておきます」

 武蔵の様子が少しおかしいわ。何であんなに汗をかいているのかしら?

「じゃあ、はどうですの!」

「ブハッ!」

「ぜ、絶対笑ってますよねっ! 武蔵っ!」

「い、いえお嬢。ボディガードである私が決してそのようなことはウヒッ」

 もう許しませんわ!

「──あぁ、そうですの……」

「……あっ」

 まさかここでこれが役に立つとは思いも寄りませんでしたわ。

「どうやらお仕置きが必要のようね? む〜さ〜し〜?」

「お、お嬢、お体の方は?」

「不思議ね、武蔵がわたくしを怒らしてくれたおかげで、さっきまでのダルさは消えてしまったみたいだわ。どうやらすこぶる体調が良くなったみたいよ、ありがとね武蔵」

「そ、それは良かったです。では私はこれで──」

「あらあら、武蔵ったらどこへ行こうというのかね?」

「ひっ!」

 一度、このセリフは鞭を持って、言ってみたかったんですのよ!

「このわたくしの鞭から逃げられると思わないことね。む・さ・し?」

 


 

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