第2話 ボディガード

「ボ、ボディガードッ!? そんなこと聞いてねぇよっ!」

「──言ってないからな。当然だ!」

 ギュッ!

「イダ、イダイダダダダダダダッ!! 腕を離せ!」

「ひ、ひぃっ!」

「あっ、おい! 逃げるなッ!」


 パチンッ


「──お嬢を辱めるヤツは、ハァッ!」

「グハッ!」

「俺たちが許さないよ?」

 ギコッ

「う、腕がぁああああああっ!!」

「おい、テメェ、なにノコノコと逃げようとしてんだ〜? ──犯罪者」

「はっ……はっ……アッ、アチチチチチチッ」

「チッ、タバコが一つ無駄になったじゃねぇか。クソがッ! ぺっ!」

「はぁ……はぁ……」

 カチッ シューッ

「すぅーっ、ふぅーっ。お嬢への侮辱は終身刑に値する。あーそれと、今この配信を見てる奴もこいつらと同罪だからなー」


〈はっ? 悪いのはそいつらだろ〉

〈何でオレたちも同罪なんだよ!〉

〈意味分からんことほざくな〉


「──どうして、こうも自覚がないバカ共が大勢いるのか知りたいが、この配信を視聴するお前たちに教えてやる。──誰かを傷つけたり、イジメたり、辱めたりする奴が一番悪いし許せねぇ……だがな、それが悪いことだと承知の上で、誰も通報せずに呑気にも、画面の向こうで、今にも男に女が犯されようとしているところを見て、〈住所はどこ?〉だとか〈俺も混ぜろ〉だとか、自分じゃないから大丈夫。やられてるのは他人なんだからって言って、高みの見物をして、あぐらをかいてるお前ら糞ったれ共を俺は一番許せねぇッ! ナメたことを言うのも大概しろよゴラァッ!」


〈わー、おじさんが怒ってるー〉

〈オレたちに動画を提供したのはそいつら〉

〈そうそう、だから俺は関係なーい!〉


「まだ反省が足りないクソったれども、覚えとけ。ここは、ネットだから平気。匿名だから大丈夫。どうせ、ただのハッタリだとでも思っているであろうそこのお前……? こちとら金なんて腐るほど、わんさかあるんだ。探偵、警察、弁護士、何だって好きな時に動かせんだよ。逃亡しても無駄さ、何処へ逃げようとも、俺たち護衛ボディガードはお嬢を傷つけたお前たちを地の果てまでだろうと追い掛け、取っ捕まえてやるからな。ふんっ!」

 

 バキッ!


「お、俺のスマホ……グスンっ」

「武蔵、スマホは壊しておいた」

侃士かんじさん、ありがとうございます」

「武蔵さん、こいつらどうします?」

「そうだな、半殺しにして当主様に突き出しておけ」

「アイヤイサーッ!」

「む、武蔵……」

「何ですか、お嬢?」

 い、言わなくては──

「そ、その……ありがと……助けてくれて」

「いえ、当然のことをしたまでです。お嬢に怪我がなくて安心しました。本当によかったです」

「……あっ!」

「お嬢っ!」

 あ、あれ? おかしいわね。足が震えて上手く立てませんわ。

「よしよし、よほど怖かったのですね、お嬢。大丈夫です、もう心配ありません」

 もう、怖い思いはしなくて……いいのよね?

「今は安心してお休みをお取り下さい。──伊吹、玄武ッ!」

「「はいっ!!」」

「お嬢をベッドまで運んで差し上げろ。私は事後処理があるから、一度屋敷へ戻り装備を整える。後のことは頼んだぞ」

「「はっ!」」

 事後処理? 先ほど捕まえた方々のことかしら?

「お嬢大丈夫ですか」

「立てますか、お嬢」

「え、えぇ」

「どうぞ、お手を」

「お嬢こちらへ」

 武蔵……。


 

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