第7話まぶたから離れない光景
今から数年前、まだ、母が鹿児島で暮らしていて、その日は夕方の飛行機で名古屋に帰る予定であった。
母は、お金がないから孫にお土産を買えない事を申し訳無さそうに言うので、しょうがないよ。と、慰めた。
暇潰しに、僕は母を連れてパチンコを打った。
僕は1万円程使い、出たり飲まれたりで結局は負けた。
車に戻ると、母が助手席で泣いているのが見えた。
僕は悟った。
負けたんだろうと。
「泣く必要ないよ。苦しかったらまた、生活費を振り込むし、今、必要なら渡すよ」
と、言った。母は、3万円負けたらしい。
この短時間で3万円は痛い。
「孫のお土産も買わない母ちゃんに、罰が当たった」
と、はらはらと涙を流す。
僕は財布から3万円取り出して渡した。
母はもっと泣いた。
8年前に、今は完済したが、鹿児島銀行から100万円借りた。そして、その半分の50万円を母に渡した事がある。
その時も、母は泣いた。
町県民税を26万円滞納していて、財産が差し押さえになる寸前だったのだ。
50万円貸しても、母は父親に僕から借りたと言えば、暴力を振るわれるので黙っていたら、父親は僕には空っぽの財布を投げつけ、僕がいるからお金が無いんだ!と、言って酒を飲みながら僕を罵倒した。
僕は一生忘れないだろう。
母親が泣いていた姿と、お金を300万円貸しても僕のせいでお金が無いんだと罵倒された時の事を。
神様は早目に父親を迎えに来た。
父親には悪いが、早く亡くなって良かったと思う。
僕は300万円あったら、多分、大学に行き直して違う人生を歩いていたに違いない。
障がい者の僕から、お金を借りた親を半分は家族だからと言う諦めと、怒りの気持ちの2つがある。
兎に角、子供にとっては親は、悩みの種だけだ。
若い内に、鹿児島を出て良かったと思う。弟は、配偶者の親に歓迎されて幸せな様子。
こんな私生活と残業ばっかりで、病気にならない方がおかしい。
人生の折り返し地点。
ちょっと疲れている。
そんな子供になってしまった事を謝りたい。好きで、嫌っているんじゃないんです。だが、父親が亡くなって良かったと思う心を恥じています。
僕は謝りたい! 羽弦トリス @September-0919
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