夕暮れの生き人

倉住霜秋

第1話

壊れた街、夕暮れの双子。

二人はずっと一緒だった。お互いのことを愛していて、ただ一緒にいるだけで二人は幸せだった。

人のいないビルに登り、街を見下ろして語り合う。

「この夕暮れは私たちだけのものだ」

「そうだね。きれいだね」

街を夕暮れが赤く焼く。二人はずっと一緒にいたいと思っていた。この先もずっと、永遠に。

冷たい夜は肩を寄せあって眠りにつく。小さな体躯が揃って上下する。寂しくなんてなかった。

赤錆た線路の上、靴をもって裸足で進んだ。海の音が近づいてくるのがわかって、二人は駆け出す。

「私たちずっと一緒だよね」

「うん。ずっと同じ」

二人にとってそれが全てだった。一緒ならどこへでも行けた。どこまでも幸せだった。

それも終わりがあることを二人は知っていた。それでも、二人はそれを口にはしなかった。

「誰かを愛すんだよ」

「うん」

「笑っていてね」

「うん」

「元気でね」

「うん」

ずっと二人同じだった。同じことをしてきた。しかし、それの最後には二人で違うことをした。

一人がそれをして、一人はそれを受け入れた。

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夕暮れの生き人 倉住霜秋 @natumeyamato

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