まず、文章として評価です。
細かいところまで描かれていますね。情景がはっきりと浮かびます。普段からささいなこともないがしろにしていないことが良くわかります。それは小説家にとって大切なことです。繊細ということは、変化に気づく信号が多いということですから。昔も今も繊細な人間は生きづらい。しかし、現代は繊細な人間が増えている。つまり、小説家も増えているということです。この小説家飽和時代に埋もれないよう、お気をつけて。
さて!内容に触れていきましょう。一読しての印象は一言、「温かい」。人への愛を感じますな。人間がお好きなのですね。
この小説には2つの熱を感じます。一つはあなたの人に対する熱。この時代にこれだけ青い熱を持っている方がいるとは笑、さながら、「平成の色男」でしょうか。
もう一つは、登場人物の熱、です。終末になるまでは、当たり障りない生活をしていたであろう登場人物は、死を直面して心から自分を表現していますね。わかりやすくメガホンを持つのもそうですが、私はここにいるんだぞ、と、皆さん主張しております。なぜ死を直面してバイトへ?、運転をする?、そもそも主人公は人とのつながりなど求めて居ないようなのに外に繰り出した。彼らは自分の存在を証明しなければいけないことを思いだした。甘く硬い日々に溶かされた自己証明欲求は、未来と引き換えに再び肌が潤う。無尽蔵な時間ではなく、無制限な時間で、心は膨張し剥き出しになったのでしょう。
この猛暑の中、もっと熱いものがこの世にあったのですね。