ブライアンはパパの弟(アリア視点)
羊をさわったり、魚をつったり、旅はすごくたのしかった。
いろんな宿にとまって、ぶらぶら歩いて、歩くのにあきたらディーリアにおぶってもらって、お店でごはんをたべる。
パパのつくるごはんは大好きだけど、それはそれ。
テポラではみかけないものもたくさんあった。
でも、コルドラについてもっとすごいことがあった。
パパの弟がいたんだ。
ブライアンっていって、弟だけどパパより大きい。
ディーリアとどっちが強いかな。
そこまで考えてパッと目が覚める。
きれいなカーテンが見えた。
大きな街の大きな宿に泊まったんだ。
ベッドからおりて、パパんのベッドにいく。
そこにはパパとディーリアがぎゅうぎゅうくっついて寝てた。
ディーリアがさびしくなってパパのところに来たんだとおもう。
「だからいっしょの部屋にすればよかったのに」
ぐうとお腹が鳴る。
朝ごはん、食べたいな。
でもパパとディーリアを起こすのはかわいそうだ。
私は上から長衣を着た。
刺繍のはいった格好いいやつだ。
これなら外にでてもだいじょうぶ。
そっと鍵をあけて部屋をでる。
「たしか、こっちのほう?」
私は廊下のつきあたりの階段をおりた。
*
「おうちのかたとおこしくださいね」
ちゃんとごはんを食べに来れたのに、食堂に入るのを、にこにこしたおじさんに止められてしまった。
ゆうべはお金は宿代にはいっているからいらないっていわれてたのに。
どうしよう。
もといた部屋の場所がわからない。
おなじようなドアがいっぱいならんでいた。
くうとお腹がないた。
私も泣きたい気分だった。
「アリア?」
「ブライアン!おはよう!おなかすいた!」
こまっていると、ちょうどいいところに、ブライアンがやってきた。
私は宿のおじさんに言った。
「ブライアンはパパの弟で、ぼくのおじさんだよ」
「よかったですね」
宿のおじさんがにっこり笑った。
ふわふわのパンケーキと紅茶、焼いたベーコンとオムレツ。
ブライアンが注文してくれた朝ごはんは最高だった。
「まったく、子どもをひとりで出すなんて」
ブライアンがカップをおいてためいきをついた。
黒いコーヒーはいい匂いだけど、飲みたいとはおもわない。
「ぼくがこっそりでてきたんだよ。パパとディーリアはねてたから」
「ディーリアの部屋にもいったのか?」
「ううん。ディーリアはパパのベッドで一緒にねてるよ」
「……へえ」
「最初からいっしょに寝ればいいのにね」
「……」
宿のおじさんがデザートの果物をもってきてくれた。
お腹いっぱいだけど、つい食べちゃう。
私はニコニコだけど、ブライアンは顔をしかめてコーヒーを飲んでいた。
やっぱりすごく苦いみたいだ。
「ごちそうさまー、おいしかったー」
「部屋まで送ろう。兄上たちにも困ったものだな」
「私が起こさなかったからだよ。いまごろびっくりしてるかも」
そのときだった。
「アリア!」
食堂にパパがとびこんできた。
「パパー、こっちだよ!いまブライアンと朝ごはんたべたとこ」
パパは私をぎゅうぎゅう抱きしめた。
「勝手にいなくなるな!おどかさないでくれ!」
「ごめんなさい」
私はしょんぼりと謝った。
泣かせるつもりはなかった。
パパはすごく心配したみたいだった。
「兄上」
ブライアンがこわい声で言った。
「ああ、ブライアン。アリアといてくれてありがとう」
「アリア!いなくなったら心配するだろ!」
あ、ディーリアも来た。
「兄上、ディーリア。アリアを責めるのはお門違いでしょう」
腕組みをして立つブライアンをみて、ディーリアが目をまるくした。
「どうぞお二人も朝食を済ませてください。アリアは私が預かります」
そうなの?
ブライアンは部屋の名前をディーリアに言うと、私に手を差し伸べた。
「兄上たちはあとでくるから、私の部屋でまっていよう」
*
ブライアンの部屋は広かった。
私たちの部屋は一間だけれど、寝室とリビングが分かれている。
「開けていい?」
「ああ」
広いバルコニーにでると賑やかな通りが下にみえた。
「たかーい」
「四階だからな」
ブライアンが大きななにかを広げている。
「なにしてるの?」
「地図だ。みてごらん」
それは二枚の地図を張り合わせたものだった。
私は読める単語を探した。
「あった、テポラ!」
ブライアンが頭を撫でた。
「そうだ、良く読めたな。コルドラはここだ」
少し離れたまるを指さす。
何日も歩いたのにわりと近い。
「私と兄上の故郷はこっちだ。おまえもここで生まれたんだ。マンデヴィルという」
そういってブライアンは大きな森をこえたもう一枚のほうに指をおいた。
すごく、ものすごく遠いのだと、ひとめでわかった。
「遠くから来たんだねえ、ブライアン」
「兄上とアリアを追ってきたんだ。アリアの祖父もいる」
そふって。
「おじいちゃん?」
大好きなパパとディーリアと三人家族でしあわせだけど、ほかにも親戚がいるのは嬉しい。
「ああ。アリアに会いたがっている。私の家族もだ」
ブライアンがじっと私の顔をみつめた。
「いっしょに、マンデヴィルに帰ろう」
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