第53話 武器ダンジョン調査

「待った!忘れる所じゃった、イノマがこれをモノさんに渡してと言って居った」

 退出する俺達に公爵様が渡して来たのは、質素な作りの短剣だった。

 見た目変哲の無い短剣なので、公爵様は質問も無く渡して来たが、イノマがわざわざ俺にことづけた物、見てくれに誤魔化されてはいけない。


 俺達は全速力で東ウエルズ市を抜け北門から、聖教市南門に入り聖教市内を東門に抜けた。


 暫く行くと日が暮れそうだが、山脈を見上げるとダンジョンらしき入り口が見えた。

「あそこまで駆け登って休憩するぞ!」



「モノ様、少し疲れました」

「普通に走ってたので気付いてやれず済まん事をした、これからは疲れたらいつでも言ってくれ!遠慮はするな、ぶっ倒れられたらその方が困るからな」

「はい」


 この間に短剣を調べる事にした。

「ウォ?手が痺れそうな」

 驚いて岩に刃先を当ててしまった。

 短剣は岩にズボッと入り込んだ。

「何ちゅう切れ味の短剣!これも魔道具だろう…ジライこれをやる」

「そんな凄い剣、私が持って良いのですか?」

「戦力強化だ!ジライが持つのが一番相応しい」


 短剣を受け取り、ジライは鞘から抜いて居るが、俺の慌てた様子を見ていたので平気な顔で短刀を持ってる。

「ジライ?手は痺れんか?」

「はい、これくらいなら大丈夫です」



「よし!ダンジョンに入るぞ!!」

 意気込んで入ったが、1階層はコボルトだった。

 ジライがデンジソードで無双してる。

 アイテムはコボルトナイフ、意気込んだのにセコ過ぎる!


 でも俺は貧乏性、一つ残らず回収した。


「ジライまだ行けるか?」

「はい!」

 2階層はゴブリンだった。


 落とすアイテムはゴブリンナイフ……舐めとんのか!!

 と言いながら一つ残らず回収した。

 イノマが凄い短剣を渡すから、ダンジョン武器期待するだろ!!

 3階層は期待外れで無い事を祈るぞ。


 急に魔物がパワーアップ、聞いてた通りワーウルフが現れた。

 手がビリビリ痺れるので『デンジソード』だそうで、ジライのネーミングセンスは俺より上だな。

 ワーウルフもジライが無双して終わった。

 落とすアイテムは、普通の剣だった。


 強制的にジライを休ませる事にして、眠らせた。

 俺とメイが交代で見張り、手持ち無沙汰なので、食事の用意をした。


 この階はジライが踏破した、きつい匂いを出しても問題無いだろう、俺が飯を炊き、起きて来たメイにカレェゾを作らせた、ダンジョンに凄い匂いが漂ってる。

 イノマと一緒に最初から工夫してカレェゾ作りしたメイは、イノマ以上に旨いカレェゾを作る。


 ジライがカレェゾを食ってどんなリアクションするか、想像しながら少し微睡まどろんだ。


「わぁ!美味しそうな匂い!」

 ジライの声、起きたようだ。

 朝の用が終るまで、もう暫く寝てた方が気兼ね無く出来るだろう、俺って良い主人だな。



「モノさん!食事にしましょう」

 あれ?本気で寝てた?


 寝起きだが、カレェゾなら直ぐに食べられる!冒険者になって健康的になれたものだ。



 カレェゾはいつ食っても旨い。

「おぅ!旨いぞ!!」

 ん?ジライが無表情?……あれ?泣いてる!

「ジライ?口に合わんかったか?」

「いえ、美味しいです!こんな香辛料たっぷり使った高級料理、食べられる身分にして頂いて、夢を見ているようです!!」

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