第35話 聖教市のエリス市長

 公都は住む所じゃ無い、仕事だから来たが1拍しただけで懲り懲りだ。

 イノマも米がムチャ高と、ブリブリ怒ってた。

 カレェゾに米は欠かせん、物価高の原因は聖教市国の金貨ばら蒔き買いの後遺症だそうだ。


 公都の東門を出た、雪の無い街道が続いている。

 異常どか雪の冬だったが、春はいつも通りやって来たのか?


 寒さを感じない、1時間程の駆け足で東ウエルズ市に到着した。

 お荷物だった騎士達も、結構頑張れるようになった、シノブの指導が的確なのだろう。

 魔物のゴン子の方が、俺達に近い走りをしていたが。


「物価高で不愉快な思いをすると思う、このまま北上して聖教市に入る!」

 イノマの指示で、全員北に向かった。

 俺達が走って行くと、通行人は道の左右に避けてくれる、市内は特に走り易かった。


「何でこんな作りになってる?」

 イノマの言うのももっともだと思う、東ウエルズ市の北門を出て10メートル先に聖教市の門が有った。

「つい最近まで聖教市国って独立国だったよね?何でこんなにくっついてる?」

「宗教国の考えなど、分かる訳が無い」


「ここ聖教市の南門を入り東門に向かい、東門を出た所からナカエ州帝都までが300㎞有って、約100㎞先にナマカゼ町が有るそうだ」

「レミーさんが、地図を指差しながら説明してくれたよね…レミーさんにギルドマスター就任の話、途中止めのままだった」

「ギルド幹部については俺達がどうこう出来る話じゃ無い、気にする必要無いぞ!」


 聖教市の開放された門を通ると、若い女性が話し掛けてきた。

「聖教市へようこそいらっしゃいました!市長のエリスでございます。冒険者の方……上級冒険者!!が何か…」

 なぜか美人市長に迎えられた。


「市長さん、ナカエ州のナマカゼ町に行く途中、1拍させて貰いたい」

「あ、そう言う事で御座いますか?お持て成しはできませんが、ゆっくり休んで頂く事は出来ます、宿はこちらです」


 エリス市長の話では、変な宗教国から観光の市を目指し改革中だとか、特にダンジョン目当ての冒険者は歓迎しているようだ。


 持て成し出来ないと言ってたのは市長の謙遜けんそんで、宿は一人銀貨5枚夕食と朝食込みの宿泊代で、お米の主食に肉煮込み料理は素朴だが絶品の味だった。

 風呂も気持ちよく入れて、寝心地の良い寝具で、公都の高級宿など比べ物にならない満足感の宿だった。


「もう何泊かしたくなる良い宿屋でした」

 翌朝市長さんに聞かれ、私の返事に笑顔で。

「そのお言葉で、やって行ける希望が持てました、ご利用ありがとうございました!」

 と言って宿泊費、無料にしてくれた。


 無料に感謝して、東門からナマカゼ町に向かったが、何か代わりのお礼をと考え、聖教市宿の宣伝を出来る範囲でやる事にした。


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