第31話 要救助者?

 一頻ひとしきり、銘々ワイワイ思いを吐き出したが、公爵様の考え思惑など分かる訳がなく。

「最悪の事を考えれば…貴族位を返上し普通の冒険者に戻るか…もしギルドからも国に対しての遠慮えんりょから、冒険者階級剥奪なんて事が有れば私設傭兵団を立ち上げ、魔物素材を商人に直接売り付ける。私達の実力なら充分やって行ける」

 イノマは、クランリーダーとしての最悪の場合の対処を皆に言って、覚悟を促した。

 実はモノがオロに言い掛けた、今後の最悪の場合の対処と同じ結論だった。




「この辺り以前は、盗賊が頻繁に出没してたそうね」

「あれ?あれは……人が倒れてる!」

 前方を見ていたシノブが何か見付けたようだが、生憎私達にはまだ見えて居ないが速度は落とした。


 間隔は詰まったが、後続のモノ達も速度を落とし、付いて来る。

「前方に人が倒れているそうよ!」

 コノハが後続のソリに向かって叫んだ。

 聞こえたようで、モノが手を挙げた。


 暫く徐行し前方に人らしき物が倒れているのを確認した。

 速度を一段と落とし、注意しながら進む、もし襲撃があるとすれば、右手の森からだ。

 倒れて居るのは小柄な者、子供か女性と思われる。

 3メートル手前で停止、注意しながら近付いた。


 乱杭歯らんぐいば細いあごに太い歯がいびつに生えた、醜悪な顔がニヤリと笑って錆びたナイフを突き出す。

 私は瞬間頭を蹴り飛ばし相手を昏倒させて、辺りを見回す!

「こいつはゴブリンだ!」

 私の反応で、手筈が狂ったようだ、潜んでいた多数のゴブリンは襲撃して来ない。


 クランの全員が駆け寄って来て、剣を抜き構えた。

 オロが滑って転んでる、格好悪ぅ。

 衣服を着用、人に化けて囮になる、ゴブリンと思えない知恵を付けた魔物に興味が湧き、拘束し一個だけ持ってたメイが着けてた奴隷の首輪を装着させた。

 ゴブリンに奴隷の首輪が効果のある物か不明だが、知恵を付けたゴブリンは興味を引かれる。


 気付いたようだ。

﹝ギギッ?オデボ、ドボヅル、ヅボリダ﹞

「ん?『俺をどうするつもりだ』って言った?」

﹝オデバ、ザルゴボ、リカイズル﹞

「サル語?」

﹝オバエダヂノゴドダ﹞

「私達は人間よ」

﹝オデダヂバ、ザルド、イッデル﹞

「それと命令する!私はお前のご主人様だ!言ってみろ!」

﹝ギギッ…ゴジュジンザバ﹞

「ん?今一だな?イノマ様と言ってみろ!」

﹝イノバザバ﹞

「ん~ん、ま、こんな物かゴブリンと本気で会話出来るとは…お前をゴンと命名ずる、じゃ無い!する!」

「オデバ、ゴン」


 ゴブリンが使役出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る