第28話 豪邸イノマの嘆き

 私は貧乏暮らしは苦になりませんが、贅沢で戸惑っています。

 だって、お風呂に着いて来たリンかミンか同じ顔なので分かりませんが、私の身体を洗おうとするんだよ。

 拒むと悲しそうにするもんだから、洗ってもらったけど髪の毛から足の指一本ずつ丁寧に、お尻の前も後ろも洗うんだよ!

 くすぐったいやら、恥ずかしいやら!風呂に入るんじゃ無かったって後悔するくらいでした。

「身体を拭くのは自分で出来るよ」

「服は自分で着れるよ」

 って言ってるのに、全てメイドがやってくれる。


 今度からこっそり身体を拭こうって決心しました。


 男女別のお風呂があって、13人全員が入ってもそれほど夕食が遅くはなりませんでした。

 考えて見ると、私が代表のイノマクランなのに女は私を含めて4人だけ、男が9人も居る片寄った人員になってしまってる。


 変な時間にギルド酒場のご飯食べたので、お腹が減らない。

 お魚に小麦粉まぶし油で焼いたもの、ソースが白くて少し甘酸っぱいの、とっても美味しかったけど執事のバンチャが貴族の食事作法を色々言って来て、食べた気がしませんでした。


 モノとオロは元男爵家の生まれ、食事の作法は洗練されてる。

 シノブもナオ師匠からの指導らしく、作法はほぼ完璧、騎士達は勿論食事の作法が出来てる。

 結果私とコノハに指導が集中して来ました。

 もうご飯食べたく無いよ。


 放って居れば、立ち居振舞いまで言われ出します、ウザイ!

 もう、ふて寝するしかない。


 止めてよ!寝物語みたいに教育するの、流石に寝室にはバンチャ執事は入って来ないけど、代わりにメイドのミンが寝るまで貴族の心得を言って来た。

「えっ?このお屋敷イノマ准男爵邸?」

 私がこの大邸宅の主だって。


 ミンは、物静かな話し方、いいや子守唄と思って⦅お休みなさぁい⦆






「わぉ!一晩中居たの?」

「おはようございますイノマ准男爵様!いえ、私はリンです、ミンとは交代しました」

「リンも寝不足でしょ!夜通しの付き添い必要無いよ」

「館の主様、いつ何が有っても対応できる体制です」

「メイドはたった二人でしょ?負担が大き過ぎるよ、今夜からは隣の仮眠室待機にしなさい!用が有れば呼び鈴で呼びます」


「……はい、ご主人様の命令には従います」

 そうか!私が主人だった!命令すれば良いんだ!!

 なんだ、簡単に解決する事に悩んで、こんな立派な邸宅に住める幸運を不意にするところだった!!


 そんな単純に解決することじゃ無い事に、このあと思い知らされました。

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