メラニーパート

第12話

 花嫁までの一週間。

 あまりにも時間が足りなかった。

 神様の花嫁となるのだから、もちろん花嫁衣装がいる。

 その名の通り、あちこちに花をあしらったドレス。

 本当なら一ヶ月かけて作るものだけど、今回は一週間で作らなきゃいけない。

 村のみんなで手分けして作り始めたけど、徹夜でやっても間に合うか全然わからなかった。

 でも、晴れ舞台にみすぼらしい服で送り出すわけにはいかない。本当なら妹とできるだけ一緒にいて、思い出をもっと作るべきなんだろうけど、私はほとんど寝ないで衣装作りに没頭していた。

 ニノンは手伝ってくれたし、みんなにお茶を入れて励ましてもくれた。


「お姉ちゃん、そろそろ寝たら? 昨日も寝てないでしょ」

「一時間くらい寝たよ」

「全然足りない!」


 衣装を作り始めて三日目。

 夜は更け、みんなはそれぞれに家に帰り、作業場には私とニノンがいた。


「きりがいいところまでいったら寝るよ」

「きりがいいってどこ?」

「完成したら」

「何日後よ!」

「だって、間に合わなかったら困るでしょ」

「そうだけどさ……。お姉ちゃんに倒れられても困る」


 ニノンが急にしゅんとするのでちょっと戸惑ってしまう。


「私が丈夫なのは知ってるでしょ」

「でも……」


 気付けばマリウスと同じ言い訳をしてた。

 ニノンはいつもなら「勝手にすれば!」と出て行ってしまうところだけど、今日はそうじゃなかった。


「ニノンを送り出すんだから、ちゃんとしたものを作りたいの。無理だってするよ」

「それは嬉しいけど、あたしなんかが着ても、神様と釣り合いとれないんじゃない?」

「かもねー」

「ひどい! そこは大丈夫って答えるところでしょ!」

「ふふっ、冗談だって。私が作ったのをニノンが着るんだから」

「えへへっ。神様も喜んでくれるといいな」


 すごく返しにくいことを言われてしまうが、これでニノンが喜んでくれるなら安いもの。いや、本当にそういうことしか言ってやれないのは悲しい。

 甘えたいんだと思うけど、できるだけこうやって応えていきたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る