第三話 天霧らひに泣く
一月になれば、
ずっと、
「これで最後なの……。もう会えなくなっちゃうの……。」
あとからあとから、金弓は泣いた。
「そうだよ。たたら
ちなみに小僧は、
「
と真っ赤な顔で言いかけたが、
「あたしは
と
「えぐっ、元気で過ごせ、えぐっ、バカヤロー。えぐっ……。たたら
泣き止まぬまま、小僧は最後にそう言った。
降っても、降っても、溶けて、残らない。
「
金弓が苦しそうな顔で泣きながら、両手を広げて、ゆっくり
その時は、六歳、七歳、ちっちゃい
* * *
年が明けて、十五歳になった
「あなたの強さは才能よ。
何か突き抜けたものを持っていたほうが、女官の世界では、強みになるのよ。
頑張りなさい。
と言葉をかけられ、
しかし、母刀自の教えは正しかった。
意地悪と評判の女官も、
(ふん、弱っちい。喧嘩にもならん。)
また、同室の女官、
「
と泣くので、その
(まったくもって弱い。)
下人は泣きながら謝り、すぐに
それ以来、すっかり
「かっこいい
と朝に夕に抱きついてくるようになり、
「
とまわりに噂を広め、
「これ、食べて。」
「あたしのも、あげる。」
「ああ、ずるい。はい、あたしのも。」
と食事を貢がれるようになった。まあ、快適だったと言えよう。
* * *
命のかぎりあなただけを
万葉集 作者不詳
* * *
十六歳になった
綺麗に弧を描いた眉に、くりっと丸い目。
愛嬌のある、穏やかな顔立ちで、九歳の頃の印象のまま、大人となっていた。
(相変わらず、喧嘩は弱そう。相手にならんな。)
金弓がふっくらしているのは、好ましい。肉付きが良いのは、
郷の者は、誰一人このような体型になることはできない……。
「オレ、十六歳になった。ずっと、この日を待ってた。手を握るよ。」
とそっと
「一目見たときから、ずっと、
オレがせめて、あと三年早く生まれていたら、もっと早く、女官を辞めて、すぐに妻になって欲しいって、申し込むこともできたのに。」
背丈はまだ、
梅の枝に雪が積り、
金弓は、くりっと丸い目で、まっすぐ、
「
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