正義の味方を急速に
ユウに断りを入れ、俺はトイレに駆け込むように入る。
そして個室の方に入ると、ひとつため息を吐いて、リュックの中を開く
「やれやれ、もっと中身を少なくしたらどうだい?私の入るスペースが少ないじゃないか、」
「うっせーよバケモン、さっきからゴスゴス背中叩きやがって。」
中から出てきたのは、クマなのか、キツネなのかよく分からない生物だった。
昨夜、サッカー部の助っ人としてクラスメイトに呼ばれ、帰宅時には既に日が暮れてきていた頃だった。
「ニャーン」
薄暗い通路にある、小さなダンボールの中から、子猫と思われる小く、弱々しい鳴き声が聞こえた。
どうしよう。
最初にそう思った。
あの捨て猫を拾うのは簡単だ。だが、拾ったからと言って家で飼えるのか、そして飼えなかった場合どうするべきなのかという考えが次々と頭の中に流れた。
だが、きっと俺が憧れるヒーローなら、
『それでもその捨て猫を見捨てる訳には行かない。』
と言って手を差し伸べるだろう。そう思いなおし、今も尚弱々しい鳴き声のするダンボールへ近寄る。
そして、ダンボールの中を除くと....
「ニャー........ふむ、やはり君には適性があるとみて間違いないな。どうだ?世界を救う気はないかい?」
「はぁ??」
そこには、偉そうにしたよく分からない生き物(?)がそこにはいた。
その後、こいつ(名前は ホヌグというらしい。)は俺の家にまでついて来て、ヒーローにならないかと聞かれたが、俺はホヌグが信用出来なくて断っていた。しかし、夜中0時を過ぎてもこいつはまだ勧誘してきた。
おかげで映画館に着くまでに何回か寝そうになった。
「それで、さっきから背中蹴ってたけど、なんかあったのか?言っとくけど、ならないからな。」
「そうか、ならば今すぐこの建物から出るべきだ。」
意外にも勧誘ではなかったようだが、気になることを言い始めた。
「は?なんで?」
「魔獣が来るからだ。恐らく、後5分もかからないだろう。」
そのセリフを聞いて、直ぐにトイレから出た。
何もおかしい点はない。
ただ、普通のショッピングセンターだ。
安心すると同時に、浅い溜息が漏れるが、その瞬間だった。
重々しい音が響いた。
爆発音と同時に、何かが崩れるような音と悲鳴が聞こえ、その次の瞬間には、皆逃げ惑うように走り出していた。
俺は通路から外れていたからか、巻き込まれるようなことはなくその場に取り残された。
そうやって呆気にとられていると、目の前見たことのない生き物が飛び上がってきた。
「うわぁ!?」
「ッフ!!」
俺はとっさに手を前に出すことしか出来なかったが、ホヌグが瞬時に前に出てバリアのようなもので化け物を弾く。
「ッツ....助かった....。
な、なぁ、あれが魔獣か?」
「ああ、君たちとは別世界から来た怪物、そして我々が倒すべき『害獣』だ。」
その言葉を聞いた時、ふと周りの光景に目がいった。
装飾品はどこも壊され、逃げ遅れた人が何人か食い殺されている。
バケモノ達は殺すことが目的なのか、食い殺された人はほとんど無駄な傷はないそして、そんな空間が、まるで時が止まってしまったようにも感じさせた。
こんな非現実的な出来事が、いきなり押し寄せてきた事に気が狂いそうになるのを必死に堪え、俺はホヌグに話しかける
「なぁ、あれがお前の敵なんだよな?」
「ああ、そうだ。あれらを撃退する為に我々は来た。」
「なら、武器もあるんだよな?」
「無論だ。」「貸してくれ!」
その返事に即座に俺は食い付いた。
「構わないが、いいのかい?ついさっきまでは断っていたじゃないか。」
「うっ....そ、そうだけど....でも、今抗う方法があるのに、なんにも死なずに誰かが殺されるのも、自分が死ぬのも嫌だなんだ!だから、力を貸してくれ!」
「わかった。ではこれを。」
そう言うと、ホヌグはどこからかカードリーダーの様なデバイスを取りだし、それを俺の腕に付けた。
「使い方は感覚で分かるはずだ。」
「そうなのか.....魔獣は....下だな。」
動きが止まっている魔獣達と一緒に、二人の逃げ遅れた人たちがいる場所を確認し、その場に向かうために俺は仕切りのガラスを飛び越えて向かう。
「
そう無意識のうちにつかんだカードをデバイスに入れ、叫んだフレーズと共に、目の前に赤いスぺ―ドが現れる。
俺はそれに包まれると同時に、全身が赤い装甲で包まれる。
手には赤い剣があり、俺はそれを振り上げ、
「ッオッラァァァ!!!」
逃げ遅れた人を襲う魔獣目掛けて、全力で振り下ろした。
魔獣は瞬時に離れ、周りを囲んでいたほかの魔獣も一歩引いているように感じる。
「大丈夫か!?....って!?!?」
かけたら
安全のために逃げ遅れた人に逃げてもらおうと声をかけたら、ユウであったことに、一瞬名前を叫びそうになり、口をふさぐ。おそらく、抱えている子供を逃がそうとして、囲まれたんだろう。
「え?なっちゃん!?どうしたのその恰好!?」
一瞬で気づかれただと....!?
「なっ!?格好は今はいいだろ!!!それより早くその子連れて逃げてくれ!!ッツ!」
体にゾッとする感覚から咄嗟に剣を構えると、魔獣が襲いかかってきていて、ギリギリで防ぐ形になる。そのまま押されそうになったから魔獣を蹴り飛ばし、「逃げろ!」っと叫び他の魔獣をユウ達から意識を逸らせるためにあばれる。
「ガウゥ!!」
「ック、オラァ!!」
近づいてきた奴から防いでは蹴り飛ばし、不正では蹴り飛ばしと、繰り返すが、まだ明確にダメージが入っているような様子はなく、ジリ貧に感じている。
(くそっ、なにか有効手段は!!!)
そう考えると、身体から力が溢れ出すような感覚に見舞われる。
「これなら!」
「「ガウゥ!!!」」
2体同時に襲ってくる。それらを正確にめで終えてる俺は、件を両手でしっかり持ち、
「オッッラァァァォ!!!!」
叩き切る。そうすると、獣達は黒いモヤのようになって消える。
「やった!!よし、あと1匹!!」
仲間をやられたからか、あからさまに警戒しているように見える。
「お前が来ないなら、こっちが行くぜ!!」
俺は、デバイスからひとつのカードを取り出す。
「index!ランク
そうデバイスにカードを入れると、持っていた剣の刀身が、光に包まれる。それを見た魔獣は、こちらに怒りを露わにするように吠え、突っ込んでくる。
俺は、剣を構え、1歩思いっきり踏み込み、
『ライトブレイカァァァァ!!!」
次の瞬間に、最後の1体を真っ二つに斬る。
よくある爆発はなく、ただただ魔獣は黒い粒子となって消えていく。
「....はァァァ、あっぶなかったぁぁぁ」
緊張が解けたのか、急に体から力が抜けて、その場にドカッと座り込む。周りを見ても、瓦礫しかない。
「お疲れ様だな、夏希」
物陰に隠れていたのか、何処からかひょこっとホヌグが出てくる。
「あぁ、ホヌグ....ありがとう。こいつがあって助かった。」
「それはいいさ、これからもヒーローになってくれるならな。」
それに対して俺は、「おう!」っと答える。
この先苦労はしそうだが、今はこれが最善だと思ったからだ。
「えっ、何その生き物!?てか、さっきヒーローになる云々言ってなかった!?」
後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。
俺はどこかぎこちなく首を後ろに向けると、
「どうゆうことか教えて!!!」
何時になく目がキラキラと輝いたユウがいた。
正義の味方になりたくて @inb1091
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