50歳で始まった、訳ありの結婚生活。
恋愛感情のない結婚――だったはずが、静かで穏やかな日々のなかで揺れ動いていく心。
本作は、傷ついた過去を持つ女性・中野カナコと、その幼馴染・宏海の視点を交互に描きながら、誤解、葛藤、そして再生を丁寧に紡いでいきます。
ただの「大人の恋愛」ではない。
親子関係、自己肯定、そして“幸せになる資格”への問いまでを含んだ、奥行きのある物語です。
重ねられた描写の細やかさと、登場人物たちの体温のある台詞に、何度も胸を打たれました。
読むほどにじんわり沁みてくる、そんな一作です。