魔女
勇はヨートゥンの一族だという魔物の話を聞いて
座り込んでしまった
エリカは少しため息をつき座り込んだ勇を見ている
勇は座ったままたくさんの氷の塊
祈りを捧げ氷の塊になってしまたヨートゥン一族の
墓標をじっと見ている
『ねぇエリカ・・・私どうしたらいいのかな・・・』
エリカはやっぱりという表情をし
『どうって・・・あの真ん中の氷柱をぶっ壊して終わりよ』
勇は困惑した顔を浮かべエリカを見上げる
エリカはヤレヤレと言いながら
『どうせ魔物に同情してるんでしょ・・・
そうだと思ったけどね
じゃあどうするの?
このままほっておくと村でたくさんの人が死ぬわよ
勇の言いたい事も分からなくはないけど
あなたは人間に、人族に依頼され
助ける為にここに来たんでしょ?
両方を助けるには遅すぎたわ
なら、あなたが人である以上
割り切りなさい
できないなら私がぶっ壊してあげようか?』
エリカは片手をを上にし炎の魔法の詠唱を始めた
『まってエリカ!』
勇は思わずエリカの詠唱を止めてしまった
自身が迷ったまま誰かに選択を任せてしまったら
後悔だけが残ると思ったからだった
勇は覚悟を決める為に一旦通路に戻り
アイスドラゴンと戦った広場に戻った
彼らの墓標となった氷の塊を見ない場所に行き
決断をしたかった
エリカは黙ってついて来た
勇は大きく深呼吸をして
目を閉じ少し考え込んだ
エリカは黙って待っている
勇が目を開けた
そしてエリカに
『ねぇあの氷柱そのままにしておけないかな?』
エリカは驚いて
『はぁ!?何言ってんのよ!
村が凍りづけになってしまうわよ?
村の人に出て行けとでも言うつもり?
そんな簡単に故郷を捨てれないと思うけど?
それに誰も納得してくれない・・・
この世界はそうなのよ・・・』
エリカは語尾が弱くなる
この言い方は勇には納得できないって事を
旅を通じてわかっていた
この世界の常識が勇には理解できない部分がある
魔物が敵対すべき討伐対象ではないのだろう
話が通じればなおさらだと思っていた
そんな考えを巡らせていると
どこからか声が聞こえた
『そうよ、氷柱を壊したらダメよ』
勇とエリカはお互いの顔を見る
そしてハッとする
自分たち以外の声が聞こえた事に
周りを見渡す
2人は大きな広場に人影を探したが
誰もいない
勇がキョロキョロしていると
『こっち、上よ
う〜え〜〜ウフフフ』
2人はバッと上を見た
そこにはスリットが入った
黒いロングワンピースを着て
さらに黒くヨレヨレのとんがり帽子を被り
腰まである黒髪をなびかせ
黒いヒールを履き
横向きになっている浮いている魔法杖の上に立ち
上空から2人を見下ろす女性の姿があった
真っ赤な目が2人を見て微笑む
その姿を見て勇とエリカは魔物の話にでてきた
全身黒い姿の女
そして人ではなかった
その言葉を思い出し勇は臨戦態勢をとり
エリカはとっさに魔法を詠唱し
炎の玉を右手に作り出していた
2人とも敵だと認識したのだった
しかし杖にのって浮いている女性が
親指と人差し指でパチンと鳴らすと
その炎が消えてしまった
エリカは驚愕した
『え・・・詠唱キャンセル!?
他人の?詠唱を?まさか??
あ・・・あなたがやったの??』
杖の上でニヤニヤを笑う女性
勇はその見た目に覚えがある
勇がいた世界ではその格好は
『魔女・・・・?』
勇は思わずそう呟いた
杖の上に乗った女性は
少し意外な顔して
『あら、よく知ってるわね〜
そうよ、私は魔女よ
会うのは初めてよね
勇者ちゃん』
その声に聞き覚えはあった
勇と戦った後の魔人が消えていく時に
どこからともなく聞こえて来た声だった
魔女はスウ〜ッと杖に乗ったまま降りて来て
勇の目の前に立った
勇よりも大きく180cmくらいのスタイル抜群の美女
赤い目だけが獣のようだった
顔を勇に近づけてジッと見つめる
『上にいるとパンツ丸見えだものね
さすがにちょっと恥ずかしくなって
降りてきちゃったわ ウフフ
あなたに会うつもりはなかったのだけど
せっかく研究を重ねて作った
命を魔力に変換する魔道具なのに
簡単に壊されちゃうと
ちょっとショックなのよね
結構研究に時間かかったのよ〜
壊しちゃ困るわ〜
異世界の勇者ちゃんは壊さないでねフフフ
と、いう訳で〜〜・・・
起きなさい私のかわいいペット』
そう言って杖を持ち上げた瞬間
寝転がっていたアイスドラゴンが
起き上がり咆哮をあげた
続く
私勇者です、がんばります!! 春夏秋彦 @harunatuakihiko
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