いっぱいのハイボール
@keito_kurisu
プロローグ
「いらっしゃいませ」
流木で作れた木製テーブルのカウンター越しから聞こえるその声は、お客さんの心をワクワクさせる。ここのBARはちょっと特殊だ。完成な住宅街のマンションに一階にうっすらと店を構えている。21時を過ぎると人通りはまるでない。しかし、このBARには人がたくさんいる。
私が注文するのは、毎回決まってハイボール。木のテーブルに曼荼羅模様のコースターが置かれ、切子の美しい柄に包まれたハイボールがやってくるのだ。カラン、と上品な音を奏でるこの一杯は、同じハイボールでも安い居酒屋と違う世界にいることを教えてくれる。
カウンターの後ろには、シングルモルトやブランデー、カクテル用のリキュールがびっしりと並べられている。さほど広い店ではな店内には、カウンター8席とテーブルが一つ。ジャズのようなBGMが流れ、夕日を暗くしたような暖色ライトが店内を包んでいる。オーセンティックなBARを経験したことがなかった私にとって、高級なお酒を始めて体験させてもらった店。来店するお客さんはおじさんばかりだけど、経営者やタレントなどがくるほど、いわゆる「隠れ家」なのです。一杯の値段も安くない。
もちろんお酒を提供する店だから、ちょっとしたトラブルはあるんだよ。例えば、お客さんが酔っ払ってグラスを割っちゃったり、女の子にちょっかいを出そうとするおっさんがいたり。それでも楽しい店だった。あんなことがあるまでは。
いっぱいのハイボール @keito_kurisu
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