第40話:DLC① "Prelude"
《2029年|東京駅丸の内駅前広場》
あの頃って、堂々とまだ外を出れていた頃だったっけ?
自分達を囲うビル群に、ビルの隙間から見える青い空。
朝も夜も、東京の景色が私は好きだった。
当時7歳だった私は、ボス(栄ノ助さん)と東京駅前の広場のベンチに座って色々話していた。
「どうだ?(組織に)入ってから。」
〚居心地良いですよ。私の帰るべき場所だと実感してます。〛
「そうか、それは良かったな。」
〚......ボスは、どうして組織に入ったのですか?
やはり過去に何かあったからですか...?〛
ボスは広場を歩く人々を見渡し、私の方をちらっと見て言った。
「鳴霾は、自身の過去や現在における人との繋がりを知ってるか?
自分が知らなくても、必然的に出会う運命の様な...目に見えない繋がりを。」
〚.....まだ7歳なのでそう言った繋がりは、無いかと。〛
「ハッハッハッ、君も時期に分かるはずだ。
俺には孫...と呼ぶべきか分からないが、孫がいたんだ。
その孫の家は、実に貧しく、家もボロく、治安の悪い地域に住んでいた。
俺の息子は、生まれたその孫に貧しい思いをさせたくない一心で働いていたが...バカな息子は道を外した。
孫とは生まれた頃にしか会っていなかった。
その頃から俺はこの世界に居たから。
俺は.....ある日息子を殺さなくてはいけなくなった.......俺の所属する組織のシマのルールに反したから....処罰の対象となった。
そしてその執行を任されたのが、俺だったんだ。」
〚......自身の息子を殺すことに......っ殺したんですか...?〛
「(首を縦に振る)」
〚あぁ........そう...なんですね........
息子を殺した時と言うのは、どういった感情だったんですか...?〛
「分からない.....昔のことだからな.......
鳴霾もそう言う経験は、この先に待ってるはずだ。
しかしその経験は必ずしも悪いものでもない。
自身の大切な人を、自身が殺さずとも失う事になる悲しみ.....俺が言わなかった事の意味が、きっと分かるはずだ......」
〚......そうですか───〛
───────────
戦局は大詰めだ。
もう10年が経過した。そろそろ潮時だろう。
死んでった者達はこの物語の終わりを願っている。
どれだけ時間が経っても、その思いが消えることなく、それは燃え尽きることの無い炎の様だ。
平和を願う者の願いと言うのは、そうやって時間をかけて燃え続け、終結と共にその火は燃え尽きる。
燃え尽きるのが命か、願いか、それを決めるのは運命でありそれに抗う者達。
────────────
家の中は普通の一軒家。
玄関も綺麗で、荒らされてもない。
物音1つしないのも逆に不気味ではあるが、その環境にどこか安心感があった。
しかも何よりこの一軒家、間取りがとても広い。
普通の一軒家にしては中がかなり広い。
玄関も広いしドアの数に部屋、廊下の数が普通より多い。
外観と違って中は広いようで少し驚いた。
『これじゃあもしここに居たとしても、どこの部屋か見つけるの苦労しそうだよ。』
〚手分けして探す?〛
『んー.....どうしよう....徠鳴、この家のどこにいるかまでは分からないよね?』
{うーん、流石にある程度の場所までしか特定出来ないからぁ....わっかんないなぁ流石に.....}
広々とした家内から鳴利を探すのに苦労しそうだと、そう思った時───
───ガタッ
『っ?』〚ん!?〛《っ...!?》
物音が鳴った。
それは外からでは無く、確実に上の階で鳴ったのを感じた。
《この家の2階で今、音がなりましたね。》
『行くよ。』
ダッシュで階段を上がり2階に到達。
そして怪しさ満開の通路奥のドアを、力強く開ける。
するとそこには私達に背を向ける女の子と、その奥で手足を拘束されてる鳴利の姿とその横で同じく拘束される綾子さんの、3人の姿があった。
〈....っ!?二人とも........っ月詠...?どうしてここに居るの...?〉
《綾子さんっ!!》
英里奈と鳴霾の間を強引に通り、綾子さん目掛けて抱きつこうとする。
しかし服の襟を掴んで英里奈が止めた。
『ダメ、月詠。』
《っ!?な、何するんですか...!?離してくださいっ...!》
『落ち着いてって........あぇっと...名前なんだっけ?』
‹ソラと申します。ご無沙汰ですね。›
『.......聞きたいんだ、アンタが何故こんな事をしてるのかを。
綾子さんに対して、鳴利に対しても、アンタとこの2人になんの関係があるの?』
そう問い掛けると、ソラは私の顔をじっと見つめ、そしてこう言った。
‹───誘き出す為....ですね。どうです?騙されましたか?笑›
『誘き出す...?私達をか?』
‹えぇ、綾子さんは鳴利を、鳴利は貴女達を誘き出す為。全てに意味があったのです。›
〚私達をここに来さして、アンタの言う誘き出したとして何がしたいの?殺すだけ?〛
‹あなた達をここへ来させたのにはもちろん理由がございます。
皆さんにはゲームをして頂きます。
過去へ戻って、自身を守る。ただそれだけです。›
《なんですか...それ......》
〚ケッ...アホらしい、エリーはこんな話に乗るわけないでしょ?〛
『もちろん、ソラを殺してこんな家すぐにでも出るよ───』
‹貴女達は私の能力を忘れた訳ではないでしょう?
貴女方が私に何をしようとも、いかなる行動は無効となるんです。お忘れですか?›
迷いが生じた。
こいつの言う能力がホントならば、私達がコイツに危害を加えるのは不可能に近い話だ。
とはいえ、コイツのふざけたゲームとやらに乗るのも今の私達がするべきことでは無い事に思える。
そう迷っている時に、鳴利が口を開く。
【いや、こいつの能力には弱点がある。
"間隔"があるんだ。こいつの能力にはな。】
『間隔...?』
【"3秒間"
3秒間だけこいつの能力発動まで遅延がある。
俺しか知らないコイツの弱点だ───】
その瞬間、鳴利は声を失ったかのように声がプツンと途切れた。
‹無駄な事は喋らない方がいいです。命が惜しければね。
そして、受けますか?私のゲーム。
それともここで勝てもしない殺しを続けますか?›
〚エリー....ダメだよ、この話に乗るなんて.....〛
《そもそも過去に戻るなんて....意味が分かりませんよ.....》
迷いが更に加速する。
こんな訳の分からん内容のゲーム、乗るヤツなんて居るわけないのは分かる。
しかし、じゃあ今ここでソラに攻撃を仕掛けて勝てる可能性は?
能力もソラ自身の事も何も知らない、そんな敵を倒せる確証はどこ?
今までは自身の力や能力を過信し自惚れてた部分があって、それが理由で負けた事もあった。
あの頃とは違うんだ。状況が。
少し慎重にならなければ、この一件は終わらない。
だからといって慎重になりすぎて時間が過ぎていき長引くのも避けなければならない。
だから私は───
『───いいよ、人生最後の遊びだね。』
《英里奈さん!?》〚え!?〛
『2人とも肩の力抜いてよ、私達は負けない。
余裕でも気は抜かないし、何より私には2人がいるから!ね?』
〚っ....ふんっ...あ、あっそ!仕方ないな全く....〛
《英里奈さんが言うなら.....受けます...!》
‹良い友情ですね。
ゲームの内容は前述した通りですが、簡単に言えば鬼ごっこです。
過去の私が貴女方を殺すまで追いかけますので、過去の自分自身と共に逃げて下さい。
安心して欲しいのは、過去の改変は現在に影響を受けないのでご安心を。
それでは説明はこの辺にしておきまして、死の鬼ごっこを始めます。
それでは、幸運を───›
その言葉の後、私達の足元にゲートの様な穴が現れ、その穴に私達は落とされた。
──────────
《2029年|夏南区某ファミレス》
『───っ........ここって......』
──────────
《同年|樽原村》
〚───っ......は???なんで樽原村???〛
──────────
《同年|東京総合研究所》
《........研究所?》
──────────
飛ばされた地点それぞれには、自身の人生を大きく変えるきっかけがそこにはある。
決して意味の無い場所では無いんだ。
ゲームが始まった。
3人は目の前にいる過去の自分を守り抜き、ソラを打ち倒し決戦の時を迎えるのだ。
DLC カオさん @KAO_SAN
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