絶対無敵の最強魔王、陥落する

雨蕗空何(あまぶき・くうか)

絶対無敵の最強魔王、陥落する

 ここは暗黒の居城、魔王の城。最強の力で世界を支配せんとする暴虐の魔王のすみか。

 その最奥で、筋骨隆々肉体頑健にして魔力もモリモリ顔面も男前、最強の魔王その人は、高笑いをした。


「ふはははははは! 何者も俺様の敵にあらず!

 すべて蹴散らして、支配してくれようぞ!」


 そこに飛び込んできたのは執事。


「魔王様、大変でございます! 魔王様を倒さんとする人間の勇者が、この城に到達しました!」


「はっはっは! 勇者なぞ恐るるに足らず! 俺様みずから返り討ちにしてやる!」


「ダメでございます! 幹部が足止めしますゆえ、魔王様はお逃げくださいませ!」


「何を言うか執事! おめおめと尻尾を巻いて逃げる魔王がどこにいる!

 それに勇者がどんなに強かろうが、俺様を倒せるわけは絶対にないのだ!」


 魔王は自信満々に高笑いする。

 彼がこんなにも強気なのは、彼の体にかかっている最強の強化魔法ゆえだ。

 強いパワーを発揮し、物理攻撃魔法攻撃いずれも完全にシャットアウトし、毒や睡眠などの状態異常も無効化する、最強の強化魔法。

 解除するには複雑な解除条件を満たさねばならず、それ以外のいっさいの手段が通用しない、まさに無敵の魔法であった。


 しかしそんな魔王に、執事はあわてて食ってかかった。


「ダメなんです魔王様! 魔王様が、いえ魔王様の強化魔法がいくら強かろうが、あの勇者相手では……!」


「ほう勇者はそれほどまでに強敵か! ならば逆におもしろい!

 この無敵の能力ゆえに敵なしで、このごろは退屈していたほどだからな! それほどまでに恐れられる勇者ならば、きっと心おどる戦いができよう!

 それにそれほどの強者をほふってこそ、俺様の武勇が引き立つというものだ!」


「いや魔王様、勇者は……!」


「それに万一、万一俺様が敗れたとしてもだ! この俺様の力を真っ向打ち破る者にやられるのならば、それもまた華々しい最期になろう!

 その勇壮なる戦いぶりは、きっと神話のごとく永劫に語り継がれる壮大な戦いになるだろうな!」


「いや、だから魔王様、話を聞いて……!」


 魔王は照明の下で上半身をはだけ、たくましい肉体をさらしてポーズを決めた。


「世界よ、語り継ぐがいい……この俺様の最強にかっこいい戦いぶりを……!」


「話を聞けェ!?」


「何を心配することがある執事!」


 魔王はキリリと言い切った。


「さっきは万一と言ったが、万一にも負けるはずなどないのだ!

 俺様の最強の強化魔法の唯一の解除条件、

『身長低くて年下だけど包容力があっておっぱいの大きい女の人にバブみを感じて思わず『ママ……』と口走ってしまう』

 を満たさぬ限りはなァー!!」


 この魔法はあと十秒で解けます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

絶対無敵の最強魔王、陥落する 雨蕗空何(あまぶき・くうか) @k_icker

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ