すれ違い想い合い第三話

すれ違い想い合い

ずっと勘違いしていた。君が特別で、私が平凡なのだと。ずっと。だけどそれは違った。すごく単純なのにね。


キーンコーンカーンコーン

授業終わりの合図が鳴り響く。あのことが起きてから、私は君と一切話していない。何度か、話そうと思ったけれど、気まずくて、あんなことを言った私が果たして、受け入れてもらえるのか。そんな不安が足を止めた。そんな日々に終止符を打ちたくて、今日、君の席へ行った。君の席に行くと、君は珍しく起きていた。私が声をかけた

「ねぇ」

口から漏れた声は、酷く掠れていた。私は唾を飲み込んで、返事をしない君に

「ごめんなさい」

と言う。すると、君はばっと顔を上げる。まん丸な目をさらに丸くして、なんで、と目で訴えていた。私はそれを見て、君から視線をそっと外し、君の方へ歩みよる

「この数日間、ずっと考えていたの」

「何……を」

「なんで君は、あんなことを言ったんだろうってね」

私は逸らしていた視線を、窓の外に向ける。そこには木に止まって、羽を休めている鳥が二羽いた

「私達は、すれ違っていたんだね」

こんなにお互いを想っていたのに。そう、唇でなぞると、君は、声を震わせて

「私、わたし!……」

泣きかけの呼吸音がする。私は、外していた視線を君に合わせて

「鳥って自由だよね。でも、永遠には飛べやしない。止まり木がいる」

君は白い頬に涙の筋を何本も作る。そして

「私ね!なんであんなこと言ったんだろうって、あんなことを言わなければ、日常を、壊さなかったかもしれないのに」

「うん」

私はそっと相槌を打つ

「でも、苦しくて、君があまりにも、眩しすぎて」

ヒックっと喉を鳴らす君。それにつられて、私の目にも涙が溜まってきた

「君は、私にとって」

私達は互いに想っていたことを吐露する。

「「鳥なの」」

そう言ったとき、私達は数秒、見つめ合って、やがて、ふっと笑い始めた。二人とも頬にいくつもの筋を作って、それでも笑い合う。いつもの日常とは違うけれど、今までよりもずっと、互いを分かり合えた気がした

「ずっと勘違いしてたんだね」

「ねー」

私達は、共に教室の窓を見る。そこには、先程止まっていた二羽の鳥が、飛び立つ瞬間だった。私達はどちらかが言い出したのかは、分からないが

「私にとって、君は鳥。それと同時に君は私の止まり木だ」

そっと呟いた。


鳥は永遠には飛べない。けれど、止まり木があれば、どこまででも飛んでゆける。私達は共に同じようなことを想い合い、そしてすれ違っていた。私はそっと苦笑し、君を見つめる。もう、鳥になりたいとは想わない。だって私も、鳥だから。

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すれ違い想い合い 八月一日茜香 @yumemorinokitune

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