すれ違い想い合い 二話
私は君が羨ましい。自由そのものだから。私が憧れる鳥そのものだから。だけど、それを本人に伝えた事は一切ない。私の中の何かが、「何も言うな」と叫んでいるから。あの日も、それで良かったはずだったんだ。でも、君があんなことを言うのは反則じゃない。そのせいで、今まで抑えていたものが、溢れ出てしまった。
このことが起こったのは体育が終わった後の事だった。私はとうに着替え終わって、君が体操服から制服に着替えているのを、待っていたとき
「空っていいよね」
って君が言った。私はその問いかけに
「そう?」
と素っ気ない返事を返すしか無かった。君は、私の様子を気にとめずに続けて
「正確には鳥。だけどね」
と補足した。君が、制服のボタンを上から一つずつ留めていくその間。私は心臓の音が、聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらいうるさく鳴っていた。「(やめてそれ以上、何も言わないで!じゃないと…)」
君はスカートに履きながら
「私はずっと君が」
「(やめて!!!)」
「羨ましい」
その時の君の顔は覚えていない。というか見ることすら出来なかった。君の顔は逆光で、しかも俯いてたから。私はその言葉を聞いて、徐々に見開き、唇を震わせた。内心、怒りでいっぱいになってしまった。何が羨ましいなの。私だってあなたのことが
「羨ましい」
私たち以外、誰も居なくなった更衣室に私の、小さな声が通った。君はこれを聞いて、ばっと顔を上げた。そして
「ッふざけないで!なんで、君は、君は!」
「自由だって言いたいの?」
うっと言葉を詰まらせる君。私は体操服を入れた鞄をひったくるように抱え込んで
「君は、鳥そのものだって言うのに?!」
こぼれて欲しくない言葉が、どんどん溢れでてくる。「(止まって、私の口よ、止まれ!!!)」
願いとは虚しく、口は回り続ける
「笑わせないで、君なんか」
「(やめて……)」
「最初から、大っ嫌い」
そう言って、私は更衣室を出た。その後のことは何も覚えていない。ただあるのは、後悔だけだった。
鳥は永遠に飛べない。空を飛ぶ二羽の鳥は止まり木を見つけられるのだろうか。
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