すれ違い想い合い
八月一日茜香
すれ違い想い合い
すれ違い想い合い
私はいつも、いつまでたっても平凡のままだ。けれどそれを不快に感じたことは一切なく、ただ“そう”であることを定められている。それだけ。私が過ごす日々は簡単に、アニメや小説のように、百八十度変わるなんてありやしない。だけど、それでも、鳥のように空を飛べたら、なんて願うのは無粋なのだろうか。
キーンコーンカーンコーン
「ねぇ、授業終わったよ?まだ寝るきなの?」
「うーん」
今日は言ってくれた。自然と笑みがこぼれる。君は言う時と言わない時があるから。君のその自由な姿はまるで猫のよう
「ねぇ、起きてってば!」
「…分かった…から」
そっと目を合わせる君。私はそれを見つめ返す。見つめ合うその瞳はビスクドールを彷彿とさせる。君は喉から甘く、万人受けするであろう可愛らしい声で
「次、何の授業?」
「数IIだよ」
そう返し、目を閉じる。ふととりとめのない感情が、心を、体を支配する。君は何でもできる。いや、これじゃ語弊があるが、仕方がない。そう思えるほど、君には欠点がない。だからか
君はいつもつまらなさそうだ。
とそっと呟いた。その自由気ままな様が眩しくて、見ていられなくて、まるで太陽を背に飛ぶ鳥のようで。私なんかとは違う
「君が羨ましい」
そう言った声は誰の耳にも届かない。
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