まんじゅ世界昔ばなし『キレモ族』

 昔々あるところにキレモ族という人達がいました。


「キレモーッ! キレモーッ!」


 キレモ、という魂の叫びを荒野に轟かせ、ある者は狩りに、ある者は農業に、ある者は工芸に従事していました。

 その叫びに深い意味はありませんが、キレモ族に代々伝わる叫びで、何かを成し遂げようとする時や一致団結する時などに叫ばれていました。


 キレモ族は荒野を住処としていました。かつての住処を追われた彼らは荒野に定住し、そこで力強く生きていくことを誓ったのです。

 そして彼らが農業をする為に荒野に畑を作り、その結果荒れ果てた大地に自然が蘇りました。そんなキレモ族の願いの一つは、「荒野を草花で満たすこと」でした。


 キレモ族は狩りが得意でもありました。

 様々な道具を生み出し、炎を駆使し、自然を利用する。そうやって強大な獲物を追い詰め、討伐していきました。


 キレモ族は強く、賢く、優しい。そんな人々だったのです。


 だからこそ、キレモ族は消えてしまったのかもしれません。


 ある日豪華な服を纏った人達が現れました。

 彼らはキレモ族を見るや否や攻撃し始め、何人ものキレモ族を殺していきました。


「キレモーッ!? キレモーッ!?」


 キレモ族は困惑する他ありませんでした。彼らは何も悪いことをしていなかったからです。

 初めは宥めようとしましたが、それも虚しく、キレモ族はこの侵略者達との戦争を決意しました。


 いつもの狩りのように道具を用い、炎を駆使し、自然を利用し——しかし、その健闘も虚しく終わりました。

 槍や弓といったキレモ族の原始的な武器に対し、敵の武器は銃や大砲などの文明の利器で、キレモ族は鉛の雨を浴びることになりました。


 無惨にもキレモ族は返り討ちに遭い——滅びました。

 しかし彼らはただ滅ぼされた訳ではありませんでした。


 腕を失おうとも、脚を失おうとも、頭を失おうとも、仲間を失おうとも、未来への希望を失おうとも、キレモ族は勇敢に戦いました。

 その狂ったような戦いぶりは、優勢であったにもかかわらず敵に恐怖を植え付けました。彼らの目には、目の前の人間が獣、魔物、悪魔、死神として映っていました。

 そこに彼らの強さ、賢さ、優しさは一切無く、ただ憤怒と憎悪を携えて突き進む姿だけがありました。

 そして彼らの脳裏には生きている間中ずっと——或いは死んでも尚、あの叫びがこだましたのでした。


「キレモォォォ————————ッッッ!!! キィィレェェモォォ————————ッッッ!!!」


 キレモ。


 キィレェモォ。


 キーレーモー。


 キールェームォー。


 キールゼームオール。


 キルゼムオール。


 そう、「kill them all」の語源はキレモ族なのです。


 おしまい。

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ほぼ週刊青年アワゾイ 粟沿曼珠 @ManjuAwazoi

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