曰く、聖騎士は雲を突き抜ける山を一瞬で超えた

「いや、無理だろ」


「無理だな」


「無理よねぇ」


「無理ですね」


「ですよねぇ~」


 聖騎士様含む全員が同意しました。私も無理だと思います。


 だって、この世界に雲を突き抜ける山なんて一つしかありません。しかも、その山の頂上には神話で語られる地上最強の生物『ドラゴン』がうじゃうじゃといるのだと聞きます。


「そもそも物理的に無理じゃね?王女ちゃん王女ちゃん。コイツの鎧、何キロあると思うよ」


「え?えーっとですね……」


 勇者様にそう言われ、聖騎士様の金ピカに光る鎧を見る。


 ふむふむ……全くもって分かりませんね!ですが、聖騎士様は普通にしているのでそんなに重くは無いのでしょうか。


「これ、500キロあるのよ?」


「……………ごひゃっ!?」


 驚きのあまり、王女の口から飛び出てくるとは思えない言語を発してしまいました。


「なんと言っても最高硬度を誇るアダマンタイト100パーセントの鎧だからな!巨人族の拳ですら耐えてみせるぜ!」


「まぁその重りに慣れるまで半年ほどかかったがな」


「ベッドから動けないお荷物のお世話、大変でしたね」


「全くよ。イラつきすぎてたくさん舌打ちしたわ」


「ごめんて」


「ぽへ~……」


 500キロ……全くもって重さが想像────あれ、そういえばですけど、聖騎士様が座っている椅子なんで壊れてないんでしょうか。さすがに、500キロ以上が乗っているのなら壊れると思うのですが……。


「巨人族……巨人族と言えばお前、1回真正面からの蹴りを喰らってめちゃくちゃ吹っ飛んだ時あったよな?」


「おん?……あった……おう。あったぞ」


 勇者様にそう言われた聖騎士様は、顎に手を当てながら頷きました。


「……そういえば、めちゃくちゃ吹っ飛んで、空飛んでる途中でめちゃくちゃドラゴンにちょっかい出されたな」


「絶対それじゃん」


「しかも、あの日って確か夜だったわよね」


「月明かりに照らされた金ピカが、誰かに目撃されたのでしょうか。こんな趣味悪い金ピカは聖騎士さんしかつけませんし」


「おい、かっこいいだろ金色」


「「「それはない」」」


 ふむふむ。つまり、これの噂の正体は巨人族に高速で吹っ飛ばされている途中の聖騎士様ということですね。


「……ちなみにですが聖騎士様。飛ばされている時にちょっかい出してきたドラゴン……覚えてます?」


「おん?………今思えばあれ、バハムートとウロボロスだったかもしんねぇな」


「神話生物ーーー!!!」


 なんでこの人無事なんですか!?

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