曰く、賢者は一晩で海を魔法で干上がらせた
「無理よ」
「ですよねぇ~」
賢者様。即答です。さすがです。自分が出来ることと出来ないことの区別がキチンと出来るのですね。
「そもそも、海って範囲がアバウトすぎじゃない?」
「それな。海とか、この世界全部繋がってんだからよ。勇者だったら数キロに渡って叩き割るぐらいなら出来そうだが」
「ですよねぇ~」
流石にデマすぎます。一体どんな噂が独り歩きしたらこんなになるのな。私、気になります。
「何か、それに近いエピソードありませんか?」
「クソデカ湖消滅させたとか?」
「でも、やったとしてもメリットがありませんよ?」
「そもそも、そんな非生産的なことしないわよ。そんなことした記憶もないし」
うーん、と再びまたまた考えるタイムに入ります。
海……海……それと似たようなものとかですかね?例えば、海のように広い~とか、海のような色をした~とかですかね。この辺りが現実味がありそうです。
「干上がらせたっていうからには、火の魔法か、それに準ずるものだろ?賢者、なんか青色系統のやつに火魔法撃った思い出」
「無茶言わないでよこのナルシスト。火魔法とか、私が一番得意な属性じゃないの」
足を組み替え、顎に手を当てる賢者様。
「そもそも、青色の魔物とかいくら居ると思ってるのよ。多すぎて、検討もつかな────」
「そういやよ、めちゃくちゃでっけぇスライムいなかったっけ?ほら、体をうすーくひろーく伸ばして地面に擬態して、身体に触れた人間を取り込んで溶かす性質を持つ、厄介なやつ」
「「「………………」」」
聖騎士様を除く三名は、思わずと言った感じで見つめ合い────
「「「そ、それだー!!」」」
────ばぁん!とテーブルを叩いて同時に立ち上がるのでした。あの、テーブルにヒビが……。
「思い出した思い出した!あの見渡す限りの一面スライムな!」
「結局大きさは分からなかったけれど、結構長く火が燃えてたのは覚えてるわ」
「スッキリしました。あのスライム、純粋に害悪だったので、一気に燃やしたんでしたね」
「なるほどなるほど……つまり、海の正体はおっきいスライムさんということですね!」
これでまたひとつ謎が解けました!
「スライム……スライムなぁ……。あいつ、何でも溶かすから嫌いなんだよな……」
「物理攻撃も全然効かないし……金ピカ装備溶かされるし」
「魔法で攻撃しても、核潰さない限り再生するの……めんどくさかったですね……」
「独自進化して魔法吸収するやつもいたわね……」
おっと!皆さんの目からハイライトが消え去っているので、早く次の話題にいかなければ!
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