第八話 悪夢

「太陽またなぁー!」

「おう!」


 今日は一学期の終業式だった。俺は、ほとんど入院していて登校できていないまま一学期が終わってしまった。


 早かったなぁ……もう、夏休みか……絢斗と遊ぶ約束もしたし楽しみだな!


 そんなことを考えながら歩いて行くと。家についた。飯はも絢斗と食ってきていたので、俺はただだらけているだけだった。ソファーで横でなっていると気づかぬうちに深い深い眠りの中の夢に入り込んでしまった。



 ◎



「母さん!動物園に行きたい!」


 夏の日差しが強い日に僕は母さんにそういった。また、今度ね、と母さんに言われたが、僕はダダをこね近くにある動物園に連れて行ってもらった。


「ライオンさん、ぞうさん、キリンさん!いっぱい、いる!」

「そうね。」


 母さんと一緒に、動物園を周り楽しんだ。気付いたときには時間もたち閉園の時間になり、閉園のチャイムが鳴る。


「太陽、帰ろっか。」

「うん!」


 僕は、めいいっぱい動物園を楽しんだのでダダをこねることなく園を出た。母さんとともに日が沈み始める道を歩く。


「母さん、楽しかったね!」

「そうだね。また行こうね!」


 母さんとそんな話をしながら、道を歩いていく。数歩前を歩いていた、母さんが壁に挟まれ視界の悪い道から出た時、母さんは吹き飛んだ。僕はその時、理解できず立ち尽くすだけだった。数秒してから、僕は母さんが飛んで行ったことを理解した。


「母さん!!ねぇ、母さん!!」


 僕は、少し先でトラックの横に血だらけで倒れている母さんに近づき声をかける。


「助けて!!誰か助けて!!」


 倒れる母さんの横で、俺は声を上げて助けを呼ぶ。その後、近くにいた人が救急車を呼んでくれた。


 少ししたら、救急車が到着した。隊員の人が母さんを担架で運ぶ。母さんを救急車にのせ、僕も乗せられる。車が出発してしばらくして、病院に到着した。


「母さんは、母さんはどうなるの……」


 僕は、手術室まで母さんを運ぶお医者さんたちに聞くがまともな返答は返ってこない。それほど、切羽つまっている様子から、僕も危機を感じた。

 母さんが手術室に運び込まれ、「手術中」のランプに明かりがつく。


 どうしよう……母さんが……母さんが……


「太陽!!」


 手術室の外で、座っていると父さんが駆け寄ってきた。


「とうさん…かあさんが……」


 僕は泣きながら、父さんに訴える。


「大丈夫……大丈夫だ、太陽。」


 僕に父さんが、静かに優しく僕に声をかける。


 いやだ……いやだ……どうして……


 そんな僕の思考も虚しく、お医者さんが僕の目の前に出てきて悲しそうな顔をしながら何かを告げる。


 何も聞こえない。何もわからない。嫌だ……母さんは……どこ?嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


 俺は何も考えれなくなってしまった。


「た…よ………いよう、太陽!太陽!!」


 俺は、親父の声で現実に引き戻される。


「おや……じ……」

「大丈夫か?お前、うなされていたから……って泣いてるのか?」


 俺は自分の頬を伝う涙に気付く。


「……母さんの夢を見た」

「……そうか」


 最悪な母さんとの最後の思い出を。


「母さんが死んでからもう、11年か……早いね」

「そうだな。」


 俺と父さんは母さんの遺影を見ながら寝るまで母さんとの思い出を語った。

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クラスの地味な女の子を助けたらお隣さんでした。 ふかひれ @same1392

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