第七話 美月
「はい、じゃ補修はここまで。」
二時間ほどして、補修が終わり先生が出ていった。そして、俺と霧島さんは二人っきりで部屋に取り残される。
帰るか……
出していた、教科書をしまい帰る準備をする。
霧島さんは……
「「あ……」」
どうせなら、一緒に帰りたいと思い霧島さんの方を見ると目が合う。
「えっと……霧島さん一緒に帰らない?」
「う、うん……」
準備が終わった後、霧島さんと一緒に部屋を出る。しばらく、会話もないまま道を歩いていく。
き、気まずい……話題がない……
話題の提示ができず、ただ沈黙が流れるだけだった。
「ねぇ、霧島さん……」
「うん?」
「もしかして、数学苦手?」
「うっ……」
俺は今日霧島さんと補修を受けているときにずっと感じていた疑問を尋ねてみた。
全然解けてなかったからもしかして、と思ったけど、どうやらあたりらしい…
「で、でも、太陽くんだって今回は補修受けにきてるでしょ?」
「俺は、数学の回答用紙に名前書き忘れたから、0点になっただけで……って今回は?もしかして、いつも補修受けてるの?」
「……」
どうやら、霧島さんは墓穴をほってしまったらしい。
「以外だなぁ……」
「ごめんなさい……こんな見た目で勉強できなくて……」
思わず声に出てしまい、霧島さんにも聞こえてしまったらしい。横で、自分のことを卑下しながら謝っている。
「ハハハ!霧島さんって面白いね!」
「私、馬鹿にされてる……」
霧島さんの意外な一面を知ることができて、俺は嬉しかった。
「ね、ねぇ、太陽くん。」
「ん?どうしたの?」
「お願いがあるんだけど……」
霧島さんが急にそんなことを言い出した。
霧島さんから話題をふって来るのは珍しいな…いや、初めてか。
霧島さんが俺に初めて話題を振ってくれたことがなんだか、距離が縮まったようで嬉しかった。
「も、もし良かったら、私のことも名前で呼んでくれないかな……私だけ名前で呼ぶのなんだか恥ずかしくて……」
「え?俺は良いけど……むしろ、俺なんかが名前で呼んで良いの?」
「うん……」
「ていうか、恥ずかしいならべつにやめt……」
「それはだめ!」
霧島さんが俺の言葉を遮り、否定する。
そんなにやめたくはないんだ……俺は、正直どっちでも良いんだけど……
「わかったよ……それじゃあ、
とりあえず、許可をもらったので名前を呼んでみる。しかし、思っていた以上の羞恥心にさらされてしまう。きり……美月の方を見ると、うつむいていた。
怒らせてしまったかな……急に呼び捨ては流石に……
「ご、ごめん。さんとかつけたほうが良かった?」
「い、いや……大丈夫……」
そこから、家に帰るまでなんだか恥ずかしくて俺は会話をするどころか、顔を見ることもできなかった。そんな俺には、美月の耳が赤く染まっていることに気付く余地など、なかった。
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