第26話 ミッション5:学年一位ノ美少女ヘノ告白ヲ阻止せよ 《達成度31%》

『俺、頑張って気持ち伝えてるつもりなんだけど』


 僕からはNOを突きつけられないよう自暴自棄になってただけに見えました。


『なんで何も言わないの?』


『あっ、いや、その……』


「アンタがNOと言わせないために喋りまくってたからでしょ」


「鳥羽ちゃん目が怖いよ」


『さっきから全然俺に目合わせてくれないし』


『ち、違くてぇ……』


『つーか、なんで俺と距離取ってんの?』


『そ、それは……』


『俺じゃダメってこと?』


 ダメなんだよ。察してくれ。


『ねぇ、さっきから気になってたけど。そのイヤホン、何?』


 やべっ、気づかれた!な、なんで!?


『もしかして……誰かと通話してんの?』


『あっ、これは……』


『えっ、イミフすぎる。キミ、状況分かってんの?』


「あっ、いや」


『俺、本気なんだけど』


『……違くて』


『何が違うの?おかしくない?』


 そりゃそーなるよなー!


『キミ大切な話聞いてる時もイヤホンしてるのが普通なの?時と場合って言葉知らない!?』


『ち、違います』


『さっきからそればっか!なんなのキミ?冷静に考えておかしいよね?あーしらけた、キミのおかげで言いたいこと全部忘れたわ』


『えと、えっ……と』


 これ告白だよな?オカンに説教されてるわけじゃないよな?


「ひめちゃん!とりま緊張でイヤホン取り忘れた感じで見繕って!」


『あっ、えっと、緊張で……』


『わ、わかった。キミひとりじゃ断れないから、誰かに指示してもらってんだろ?』


『ひぎっ!』


『その反応は図星ってこと?」


『いやぁ!ちが、違くて!な、なんで、そう思ったのか……』


『俺もワイヤレスのヤツ取り忘れる時よくあるけど、そん時普通両耳つけてるだろ。片耳は音楽聴いてる時とかお袋が話しかけてきて片方だけ取るって状況でしか発生しなくね?』


「それは人によるだろ」


 にしても勘が鋭いなアイツ。どうするここから!


「わたしちょっと行ってくる!!!」


「湊!もうちょっとだけ待って!」


「でもこのままじゃひめちゃんが責められるだけだし!?」


 たしかに天束さんが危険だ。ヤツはプライドだけは一丁前そうだし、馬鹿にされたと勘違いして実力行使に乗り出す可能性も否めない。


「みなが行っても解決しないって!」


「だってだって!ひめちゃん辛辣な言葉責めされると泣き出しちゃうじゃん!ひめちゃんの尊厳を守るためにも行かなきゃ!!!」


 湊、辛辣だな。


「わかるけど湊は適任じゃないし逆にエスカレートするからここで正座してなさい」


「でもぉ~……ぐむっ!しゅましぇん……」


 湊を諫めつつ、脳天に軽めの手刀を振り下ろす鳥羽さん。湊も前回のやらかしをフラッシュバックしたようで、居心地悪そうに足をもじもじさせている。

 

「てかわたしに説教してる暇じゃなくない!?」


「その通りだ。何か打開策は……」


『もういい、キミの本性大体わかった。そのイヤホンちょっと貸せよ』


『えっ!?』


「ぴ、ピンチぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


 えと、適当に素通りしてお茶を濁すか?ダメだ、天束さんなら助けが来たと反応してしまう。それか、「先生が読んでるよ」と声かけるか……でも、それだと事態を先延ばしするだけだしあの人気のない校舎にいきなり現れるのは不自然だ。

 理想は僕らが介入せずに、天束さんだけで事を収束させることだが、


『いいから貸せ!』


『だ、だめ……』


 スピーカーからガサガサと雑音が漏れ始めた。湊の言う通り、本格的に僕らが二人の間に割って入るべきか、

 よくよく考えれば最初からわかっていたことだ。僕らは天束さんの決意を耳にして、前向きな天束さんに信頼しすぎたのかもしれない。

 だって、天束さん唯一のディスアドバンテージはまだ──。


『んだよもう!押せば行けるって聞いたから気合い入ってたのに、ただのコミュ障なら最初からそう言えって!!!』


 コミュs……

 

(あの、いや)


『自覚してねぇの?まともに会話できねぇのが証拠だろ』


「あっ、ごめん考えてたこと全部吹っ飛んだ。ぶん殴ってきていい?」


「鳥羽ちゃんダメ堪えて!」


「私は落ち着いてるよ」


「よっちゃん助けて!鳥羽ちゃんの目が殺人鬼!いや阿修羅!」


「……」


「よっちゃん?」


 鳥羽さんは見たこともない真顔で机に置かれた湊のスマホをぶん獲ろうとしている。湊が両腕で脇を絞めて必死に食い止めているが。


 僕は僕で、あれだけフル回転させていた思考がぴたりと止まっていた。




 えぇ、ハシ人と同じ班じゃん。


 私外れ席引いちゃった、やだぁ。


 幼馴染だからってハシ人と関わり続けても人生無駄にするよ?ほら、あっち行こ。



 封印していたはずの黒歴史が、ここぞとばかりに封を切って僕を蝕んでくる。

 顔がじわじわと熱くなる。脳が沸騰してまともに前が見えない。

 あの記憶にいた自分をめいっぱい殴りつけたい。恥ずかしさで此処から消えてしまいたい。


「ねぇ、よっちゃん?」


「……っ!」


「よかった生きてた」


 スマホ越しでは、同じく沸騰しきった宮町が天束さんを好き放題に罵倒する。


 鬼神が乗り移ってそうな怒りを秘めた真顔でスマホを要求する鳥羽さん。鳥羽さんからスマホを守りながら、僕にも気にかけてくれる湊。たぶん、一緒に鳥羽さんを止めてほしいのだろうけど。


「なぁ湊」


「ん?」


 宮町の言葉ひとつひとつが、僕の心臓にズキズキと突き刺さる。その度に息が苦しくなる。

 

 僕はふと、言葉に出してしまった。


「なんで、本を読んでちゃいけないんだ?」


「ん、ん?」


「ごめん、ちょっと黙っててくれ」


「みんなどうしちゃったのー!?」

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天束さんとのビミョーな距離カン【中宮高校の人々!(天束姫佳編)】 ホメオスタシス @HOMEOSTASIS

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