2話

依頼の報告に王都に訪れていたキース

報告が終わり日用品や食材を買い込んでカバンの中に詰め込み、後はプレゼントを探すのみだった。


しかし、探せば探すほどピンとくるものはなく、様々な所を彷徨っていた。


「食べ物……は何時でも買える。玩具……はそもそも要らないな。ほぼ外に遊びに出掛けてるからいらんな…いや、そもそもあの歳で外でってどうなんだ…?」


ブツブツと呟きながら、アレじゃないコレじゃないと悩みながら歩みを進める。


「うーん……おっ?」


悩みながら進んでいた場所は裏路地の奥

ひっそりと建っていた古い店

看板には【〜〜〜書店】と書いてあった。

しかし看板も古い為か、【〜〜〜】が掠れて

いて読めない


「本……なるほど?本か。子供なら本だな!よし!」


奥にひっそりとある書店に、なんでこんな所にと疑問も感じず、意気揚々と入っていく。


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【????】


「はぁ〜〜〜〜…」

軽く体を伸ばす

暇である。

いや、暇であることは別に問題は無い。

ただ、毎日毎日、来るか来ないかお客様を待ち続け、時たま来るお客様に物を売る。

ただそれだけなのだ。


元々趣味で始めたものだ。そこに一切の不満は無い。

が、逆に来ないのもどうかと思う。

ここに店を構えて何年経ったか…。

10年?20年?

もう昔の話なので覚える気は無い。


「さて、と。暇つぶしにまた何か読みましょうかね。珈琲豆はあったかな?」


焙煎してある豆を戸棚から取りだし、ミルでゴリゴリと挽く。

挽いた豆から良い香りがふわっと広がり、鼻を擽る。

少し粗めに挽いた豆をフィルターに入れ、お湯を注ぎ、香りが店全体にふわっと広がる。

「普通は蒸らしたほうがいいんだけど、ま、提供するわけじゃないしいいよねっと」


出来上がった珈琲をコップに注ぎ、飲む前に香りを楽しむ。

いつの時代も、この飲み物はいいものだ。

ズズッと啜り、口に広がる苦味と酸味を感じながら、椅子に腰かけ本を読む。

嗚呼、これぞ最高の一時


『カランカラン』


ドアの鳴子が誰かが入ってきた事を知らせる。


「おや?お客様かな、いらっしゃい。ゆっくりしていってくれたまえ」


にこやかに微笑み、また珈琲を口に含む。


お客様が来ることはいい事だ。

さて、


楽しみだね。


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「おや?お客様かな、いらっしゃい。ゆっくりしていってくれたまえ」


眼鏡をかけ、髪を紐かなにかで後ろ結んだ金髪の女性が珈琲を飲みながらこちらに声をかけてきた。


珈琲の匂いが店全体を包むように広がっている。


「そういえば家の珈琲も切れていたな。帰りに買うか。」


かく言う自分は珈琲愛好家だ。家では自分しか飲まないが、いつかは息子と一緒に飲みたいものだ。


「っとその前に、プレゼントだな。何がいいか…」


ずらっと並んだ本を眺める。

様々な本があるがめぼしいものは見当たらない。

「『王国建国記』、『薬草の見分け方』、色々あるけどあいつに読ませるとしてもこれはなぁ……『女の抱き方』、ってなんでこんなものまであるんだ…」

ふと入ってみたものの、やはりピンとくるものは無い。


「お客様、なにかお探しかい?」


珈琲片手に椅子に座りながら話しかけてくる店員

接客としてどうなんだろうか。


「あ、あぁ、すまん。息子にプレゼントを渡そうと思ってな。何かいいのは無いか?」


店員は眼鏡を外し、珈琲を机に置く。


「ふむ、お子さんにプレゼントか。いくつのお子さんだい?」


「明後日に5歳になる。ただ、外によく遊びに出てるから、何かいいものはないかと」


店員は溜息をつき、本を探す。

「5つの子が外で遊んでいるなら、本じゃなくてもっと外で使えるものだろうに。そもそもこういう書店じゃ、お子さん向けの本なんて普通は無いもんだよ。」


「そ、そうだよな……でも何故かここを見てピンと来てな…」


くくくっと笑いながら本を持ってくる。

「お目にかかって嬉しいこったね。まぁ自分の店を『こういう書店』というのは間違いではあるが、ただここは普通じゃないんでね。」


スっと差し出された本を手に取る。


「これは…?」


ニヤッと笑う店員は楽しそうに話す。

「これは様々な人から聞いた【英雄譚】さ。小さいお子さんで、息子と言っていたから男だろう?ならこういうのは憧れるんじゃないかい?」


受け取った本を見る。これなら息子も喜ぶかもしれない。

、だ。

、か。」


「……」


店員も押し黙る。

分かっているのだろう。

少しの間の沈黙が訪れる。


そして先に口を開いたのは店員だった。

「確かに、【英雄】が題材にはなっている。だが、こういうことがあった、と歴史の勉強にもなるだろう。その先のことは君次第さ。」

「俺次第…?」

ニヤッと笑いながら店員は頷く。

「ああ。」


それなら、と思う。

が、本当にそれで大丈夫なのだろうか?

あの好奇心旺盛な息子を何とかできるのであれば苦労はしない。

しかし、憧れを持つことは別に悪いことでもない。

自分もそうであったように。


「…わかった。これを買おう。すまないがプレゼント用に包むことは出来るか?」


「毎度あり。プレゼント用に包んであげるよ。ついでだ。栞も付けておくよ。」


綺麗な包装紙に包まれた本を受け取る。


「頑張りなよ、


ギョッと店員をみる。

ニコニコと笑顔を見せた後、机に戻り少し冷めたであろう珈琲を飲み干す。


キースは少し怪訝な顔を作りながら、軽く会釈をして店を出る。


「…あの店員は、なんであんなことを言ったんだ…」


複雑な気持ちと、プレゼントが手に入った嬉しい気持ちが混ざり合う中、帰路に着くことにした。











家に到着して扉を開けようとしたところで思い出す。

あ、珈琲豆買うの忘れてた。くそう。





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作者です。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


遅くなり申し訳ございません。

リアルが忙しいので中々筆跡することが出来ないでいました。

もうすぐで落ち着くので、普通の頻度で投稿出来ると思います。



【没案】

アレじゃないコレじゃないドラゲーーー何か変なのが頭をよぎったが、悩みながら歩みを進める。


と変な案が浮かんだけどこれダメだろってなって直ぐに消しました。

でも自分の中でおもしろいと思ったので没案として残しておこうかなって……


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心優しい冒険者は、英雄になりたい ふすま @husuma_poyoyon

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