第4話
此処へ来て初めて、私はリーン教典の元となったアルビオンの書を此の手に取った。ファーリーンでは司祭位上の者でなければ触れてはならぬとされている神聖なる書は、アウリーでは一般に出回っていた。私はリーンの修道士で在るからして、斯様な状況に在れど本来其れに触れてはならぬのであったが、好奇心に敗北したが故、密かに一冊入手した。果たして其れは非常に興味深い神話であった。リーン教に於ける最高神たる天空の神は無性であるとの記載
時は過ぎ往く。私は二十三に成っていたが、逃亡した際の年齢より成長している心持ちがまるで無かった。そして此の一六一九年と云う年、ファーリーン王国は
兵力は原書派が上回っていた。其の差は歴然とする程のものではなくとも、充分な知恵を働かせなければ為らぬ程度の開きであった。アウリー本土から六千の増援がウェリアに集った。ウェリア騎士と合わせて八千となる。此処はキュアス諸島の中枢であって、諸島はフォルマからの攻撃を受け易い。基本的にフォルマ帝国が対抗しているのはファーリーン王国であって、其の内乱に加わる事は建前上は恩を売るものであっても、彼らの本心はリーン人を殺戮したいという至極単純なものである。されどアウリー王国がファーリーンに加勢した以上、フォルマの矛先はいずれアウリーへも向いて来るであろう。しかし緊張感漂う中でも三年の間、ウェリアはフォルマ兵に侵攻される事はなかった。此れ迄と変わらず、時折海賊が現れるのみであった。
しかし其の三年が経つ頃には、フォルマ帝国やザルツ公領の原書派勢力が諸島に攻撃を仕掛け始めた。フォルマ帝国は原書派に付いてはいるものの、兵は特に此れと云って教典派だの原書派だのと考えては居らぬ様で、キュアス諸島全域に出没し島を襲うので、ウェリア島に集ったアウリー兵はそちらへの対処に向かうべく散った為、ウェリアに残されたのは千人ばかりだった。ところがザルツ公領から
ウェリアは島である以上、戦闘は海上で行われた。原書派はフォルマ兵との混合で遣って来るが、フォルマ兵はまるで無尽蔵の様であった。如何なる時代の戦いに於いても、どうやらフォルマ帝国と云うものは数で仕掛けて来るらしい。ウェリア騎士団員二千とアウリーの増援兵一千に対するのは、一万二千の兵であった。幾ら此方には拠点が在るとは云え、四倍の戦力差と云うものは
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