第28話 ・・・★ こんな酔い潰れたユウを見たのは初めて(R-15指定)

 シウside...★


 その日、いつまで経っても連絡が返ってこないユウにそわそわと心配していた。

 お母さんはいつものことだし、今日も帰ってこないだろう。今更、あの人に母親らしいことを求める方が間違っているから、どうでもいい。

 でもユウは、彼は違う。


「もう10時……事故とかじゃないよね?」


 その場合、連絡が行くのは妻であるイコなのだろう。自分の方がユウを大切に想っているのに、スゴく嫌。もし仕事のトラブルなら迷惑でしかないだろうが、気持ちを抑えられずにユウのスマホに繰り返し着信を残してしまった。


 それからしばらくしてインターホンの鳴る音が響いた。急いでモニター側の通話ボタンを押すと、画面には酔い潰れたユウを担いだ男の姿が映った。


『すいませーん、俺、永谷先輩の会社の後輩なんですけどー? 開けてもらえないッスか?』

「は、はい!」


 急いでマンションのエントランスのオートロックを解除した。

 酔い潰れた……? あのユウが、連絡もなしに?


 只事ではない事態にシウは戸惑いを隠せなかったが、今はユウを引き取らなければ。

 玄関を開けて部屋を飛び出し裸足のまま廊下を走った。もどかしくエレベーターを待っていると扉が開いた瞬間、ユウの姿が目に入って安堵した。事故じゃなくて良かった。


「え、え? 永谷先輩のご家族の方ですか? もしかして奥さん———じゃ、ないっすよね?」

「あ、すいません。父が迷惑をかけてしまって」


 シウが頭を下げると、介抱してくれていた男がシウの顔や太ももが露わになったショートパンツという服装を見て、雷に打たれたような表情で固まっていた。だが彼は直ぐに切り直して態度を改め出した。


「私、後輩の水城と申します。いつも永谷先輩にはお世話になっておりまして、すごく尊敬しております!」

「は、はぁ……父がいつもお世話になっております」


 ユウを引き取ろうと手を伸ばすが、邪魔ばかりされて全く渡してくれない。


「あなたのような可憐な女性に運ばせるわけにはいかないです! 私めが運びます! どちらにお運びしましょうか?」

「それじゃ、リビングのソファーに……」

「はい、よろこんでー!」


 某居酒屋並みの掛け声と共に部屋に入る水城を見ながら、シウはソワソワしていた。こんなになるまで酔い潰れた理由が知りたいが、聞いていいのだろうか?


「あの、父は仕事でトラブルでもあったんですか?」

「いや、仕事は何も問題ないんですがー………あ、ちなみに奥様は?」

「母は———今日は残業で遅くなると連絡がありました」

「そうッスかー………。あ、えっと、コレ。私の名刺と連絡先です。何か困ったことがあったらいつでも連絡を下さい」

「はぁ……」

「困ったことがなくても、いつでも連絡をください。暇潰しでも何でも、それこそ永谷先輩の相談でも何でも」


 そんなことより早く帰ってくれないかなとシウは眉を顰めた。あ、もしかして連れて帰ってきたお礼にお茶を出せと思ってるのかな? 


「麦茶、飲みますか?」

「え、いいんですか? そんなー、でも折角っていうならー……って、すいません。ちょっと上司から連絡が入って……え、タクシー待たせてるから早く戻れ? えー、今いいところなのにー……はいはい、今行きまーす。すいません、今晩はタクシーを待たせていたのでこれで失礼します! 連絡、お待ちしてます!」


 騒々しい台風のような人だった。

 でもそんなことより、一体どうしたのだろう? こんなになるまで酔い潰れたユウを見たのは初めてだ。


 苦しそうに、でも色っぽく……艶っぽく熱っている彼の表情に、思わずキスしたくなる。


「ユウ、起きて? 大丈夫?」

「ん、んン……、大丈夫……」


 顔を歪めてモゾモゾと動いたが、全く動こうとしない。全然大丈夫じゃない。


「———ちゃんと着替えないとシワになるよ? 言うこと聞かないと、キスするよ?」

「ンンー……もう少しだけ」


 よく分からない返事と共にシウの肩に腕を回して、ギュッと抱き寄せてきた。お酒の匂い、カシス系のフルーティで甘ったるい香りと少し汗ばんだ匂い……大好きなユウの匂いに思わずため息が溢れた。


「———じゃない。ユウ、ねぇ……ちゃんとベッドで寝ないと風邪をひくよ?」

「んー……でも、シャワー浴びないと……イコさんが怒るから……」


 こんな時までお母さんに気を使うなんてと少し不機嫌になった。滅多に帰ってこない人に気を遣わなくていいのに。

 仕方ないとシウはネクタイを外して、シャツを脱がせようと奮闘した。寝ている人を脱がせるのは意外と大変だ。


 首筋、鎖骨、顎骨、耳たぶ……胸部。好き過ぎて見ているだけで胸が苦しくなる。


「ユウ……心配したんだよ? もし何かあったらどうしようって」


 感極まって、そのままユウの頭部を抱き締めて胸元に埋めた。高鳴る心拍数、考えてることが全部筒抜けになるんじゃないかなって思うくらい、強く抱き締めた。


「ん、んン……」


 ユウの目が少し開いたが、まだ寝惚け眼のまま。少しシウの顔を見たと思ったら、そのまま弄り出してシャツに手を入れてきた。普段の彼からは想像できない行動に、思わず声を上げた。

 首元もハムハムと甘噛みするように動かして、何だかエッチ。甘えるように縋られてシウの身体も強張った。着用していた下着をズラされ、覆っていた胸が溢れる。


 チュ……チュパっと、大きな音が部屋に響く。いつの間にか上下逆転した位置。重くのし掛かるユウの体重と込み上がる快感に耐えながら、シウは必死に声を押し殺していた。


 捲り上げられたシャツの裾がシウの口元にかかる。ユウの顔が見たいのに、つむじしか見えない。

 両手で両胸を寄せて、そのまま中央の突起を指で摘んで、クニクニと弄ぶ。かと思ったら、もう片方を吸われて舌で転がされたり、歯を当てられ。ビクビクと足先に力が入った。


「んンっ、んっ! ユウ……、好き、好き……!」


 胸元おっぱいに夢中になっているユウにキスをして、ギュッと抱き締めた。舌を絡ませて濡れた唇を舐めた瞬間、ハッとしたユウが「……シウ?」と呟いた。


 そして今の状況を知って、酷く後悔したように後ろへと逃げた。


「え、僕、何で……?」

「酔い潰れたユウを水城さんが送ってくれたんだよ。大丈夫?」


 ユウは必死に思考を巡らせていたが、アルコールのせいで上手く考えられなかったようだった。青ざめた顔で「あのさ、変なこと……口にしなかった?」と聞いてきたので、シウは黙ったまま頭を撫でた。


「大丈夫、何も言ってないよ」


 きっと真面目なユウのことだから、自分シウお母さんイコの名前を間違って呼んだとか心配してるんじゃないかな?

 でも大丈夫。例えお母さんの代わりでも……ユウに必要とされるなら、それでいいよ。


「早くシャワーを浴びて、寝た方がいいよ?」


 そう言って物分かりのいい彼女を演じた。



 ・・・・・・・★


「……それでもいいの。好きだから、少しでも隙につけ込みたい」


 皆様、いつもお読み頂きありがとうございます。すいません、この回はどうしても……修羅場前に甘さを補充したかったので、つい書いてしまいました。これから一気にいきます、色んな意味で……。伏線がどんどん回収されていきます。


 そして今回、火乃玉様から素敵なレビューを頂きました! まさにこの小説のとおり……賛否両論のテーマですが、これからもお付き合い頂けると嬉しいです^ ^


火乃玉様の作品、今回はコチラ!


カクヨム新参者の底辺、圧倒的PVの枯渇に喘ぐhttps://kakuyomu.jp/works/16817330663950051274/episodes/16817330663950655307


 為になるし、分かりやすいし、面白かったです。ぜひ、ご覧ください✨


 次の更新は12時05分を予定しております。

 続きが気になる方は、フォローをよろしくお願いいたします。

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