第27話 永谷くんが気付いていたのなら……

 昨日の夜のイコさんの言葉が気になって、ユウは寝不足気味だった。一体どういうつもりであんな言葉を口にしたのだろうか? 考えれば考えるほど悪い方向にばかり思考が偏っていく。


「永谷先輩、暇っすね」

「ん、そうだね。そういや水城の合コンはどうだった? いい子に出会えた?」

「えー、それを聞いちゃいます? 可愛い子はいたんですけど、身体の相性がイマイチっていうかー……? けど今朝からずっと連絡が入って面倒っすね」


 悪びれた様子もなく毒を吐く水城にユウも神崎もドン引きしていた。


「何で女の子って身体許した瞬間に彼女面するんですかね? こんなのヤッてみなきゃ分からないじゃないですか?」

「いや、水城……お前相当クズな発言してるぞ?」

「そうッスか? 永谷先輩は分かってくれますよね?」


 えぇー、そんなゲスなことに同意を求められても……。

 そもそも聞く相手を間違っている。ユウには経験すらない。相性がどうのこうのも語れる立場でないのだ。


「大体俺、浮気とか不倫を否定する気持ちも分からないんですよ。ずっと付き合っていたら飽きることもあるじゃないですか? たまには遊びたいこともあるし、息抜きも必要だと思うし。結婚って、結局その人と家族になるってだけで一生その人を愛するって意味じゃないと思うんです」

「———うん、水城。お前の言ってる意味が全く分からん」

「えぇー、そうっすか? つまり俺が言いたいのは、その人との関係を続けたい意志があるなら少しくらいの浮気は許すべき。最終的には戻ってくるっていう意思表示さえあればいいと思うんですよ?」

「え……? それじゃ水城は彼女が浮気をしてもいいんだ?」


 極論を述べる水城にユウも口を開いた。


「もちろんですよ? その代わり俺が浮気しても文句は言わないでほしいっすけどね? 一人の人と死ぬまで添い遂げるって理想論っすよ? もし後から更に好きな人が出てきたらどうするんですか? 最初に結婚した人が思ってた人と違ってたらどうするんですか? エッチしたからって責任とって付き合って結婚して、自分を偽りながら過ごすなんて俺は嫌ですね」


 いつもならメチャクチャだと呆れる水城の意見だが、否定しきれない自分もいる。ただそれは加害者側の意見だ。被害者側はそう簡単には割り切れないだろう。


「えー、永谷先輩は自分のことを好きだと思わない人と一緒にいたいですか? 俺は嫌だなー」

「けど、ずっと一緒にいたら情が湧かない?」

「んー……それでも俺は出会いを求め続けるかもッス。他を知って、その人の良さを実感する。もしさらに好きな人ができたのなら、それまでッスよ」


 頭をフルスイングされたような衝撃だ。

 それなら自分がシウに惹かれているのにイコさんとの関係を続けないといけないと思うことは、イコさんを裏切っているようなものなのだろうか?


 関係を続けることが誠実だと思っていたが、そうではない。ケジメをつける方がよっぽどいいのだろう。


『けど僕の場合、同時に娘さんを下さいと宣言するようなものだから微妙なんだけど……』


 簡単なことではないのは分かっている。だが水城の言葉で少し目が覚めた気がした。


「神崎さんはどう思いますか? 水城の意見」

「わ、私か? そうだな……まぁ、浮気をしても戻ってくるならいいのか……いや、でもやられた方がツラいよな」


 そうだよね。騙し続けている方が最低だよな。やっぱり今度、ちゃんとイコさんと話し合おう。


「浮気された方は嫌ですよね。うん、そうですよね。ちゃんと謝罪して関係を見直してもらいたいと思うのが普通ですよね」


 哀愁を漂わせながら考えるユウを見て、神崎と水城は顔を見合わせて頷いた。


「……永谷、やはりお前も薄々気付いたいたのか」

「え?」

「実はな……お前の奥さんが他の男とホテルに入って行くところを私達は見てしまったんだ」


 ———え? 何それ? え? 食事とか、打ち合わせとかじゃなくて?

 顔が引き攣ってコントロール出来ない。今、自分はどんな顔をしているだろう?


「ラブホだから言い逃れはできないっすよ。良かった、先輩が浮気を許するような甘ちゃんなら黙ってた方がいいかなーって思ったんですけど、やっぱ浮気は許せないっすよね?」



 ………いや、もしかしたらそうかもしれないと薄々感じてはいたけれど、この角度からの告発は予定外だった。

 流石のユウも頭を抱えて蹲った。



 ・・・・・・★


「これは処理不能。完全キャパオーバー」


 この話は自分が二十歳前後に男の子が話していたのを参考にしました。「今の彼女が最高地点とは思わず、どんどん出会いを求めるんだ。だから俺は合コンに行き続ける!」と———……。衝撃だったなぁ。

 彼は最高の彼女を見つけたのでしょうか? 


「相手にそれ相応のレベルを求めるなら、自分も磨かないといけないのだよ、水城くん」


 次の更新は6時45分を予定しております。

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10月23日ラブコメカテゴリ週間ランキング22→22となりました!

 週間総合ランキングは121→124です。

 数々の実力者の中でこの順位を保ち続けるって奇跡! ぶっちゃけランキングに関しては読者様のおかげです。だって★やフォローの集計なので。だからひたすら感謝しかないです!


 今書いてるところは一番佳境で……まぁ、今回公開したところも酷いは酷いシーンですが、一番の伏線回収シーンだったので。皆様の応援を糧に頑張ります!

 いつもありがとうございます‼︎

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