第2幕(2)

■長吉の家の前


       家の中では、ゆきが囲炉裏端に一人で座っている。家の外には吾助たち、何やら相談している様子。

       しばらくして、相談がまとまった様子。


子供たち :「(声を揃えて)長吉が学校から帰って来ただ!」


       叫ぶや、一斉に薪小屋の陰に隠れる。ただ一人末松が残ってうろうろしていると、一松が戻って来て、小屋の陰に引っ張り込む。

       ゆき、家から出てくる。


ゆき   :「長吉ちゃん、おかえり・・・。」

       誰の姿もないので、不思議そうに辺りを見回しながら薪小屋の前までやって来る。

       薪小屋の屋根に与一と一松、ゆきの頭の上にカエルを落とす。

       ゆき、驚いて、その場にペタンと座り込む。

       カエル、「ケロケロ」と鳴いて、ゆきの頭から飛び降りる。


ゆき   :「(泣き出す)あーん!」

子供たち :「(薪小屋の陰から飛び出して、一斉に)おゆき、どこの子、家なし子! カエルが怖いいくじなし! やーい!」

ゆき   :「(更に激しく)あーん、あん、あん。」


       下手より、長吉が走って来て、ゆきの前に立ちふさがる。


長吉   :「おゆきをいじめっと、おらが承知しねぞ!」

吾助   :「長吉は、娘っ子の肩持つんだと。」

一松   :「長吉とおゆきは『めおと』だべ。」

子供たち :「わーっ!」

長吉   : やにわに下駄を掴むや、吾助の頭に投げつける。

吾助   :「いてっ! やっただな!?」

長吉   :「やる気かー!」


       長吉と吾助、取っ組み合う。地面に転げ、上になり下になりする。


子供たち :「やっちまえ、やっちまえ! 吾助、長吉なんかに負けっでねえぞ!」

ゆき   :「(あわてて泣き止み)やめれ! 危ねっから、怪我すっからやめれ!」


       長吉と吾助、組んずほぐれつして転げまわり、勢い余って、二人で川に落っこちる。

      「ドボーン」という水の音。


ゆき   :「長吉ちゃん!」

菊子   :「大変だなっす。長吉と吾助が川さ落ちた」

与一   :「春先で、川は増水しているべ!」

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