第2幕(3)

■川の中


       遠景に、岸を走る子供たち、


与一   :「長吉ー!」

一松   :「吾助ー!」


       水面に、吾助と長吉が浮かび上がる。


吾助   :「うわー! 冷て!」

長吉   :「このー、吾助!(吾助に掴みかかる)」

吾助   :「離せ、長吉! 離さねっと、二人とも溺れちまうだ!」

長吉   :「おゆきをいじめねっか!?」

吾助   :「それどころでねえべ!」

長吉   :「約束しろ、おゆきをいじめねって。しねなら、こうだ!」

       吾助の頭を水の中に沈める。

吾助   :「(必死に顔を上げて)ブハア! 分がった! 分がったから、手さ離せ!」

長吉   :「ようし。」

吾助   :「『ようし』でねえべ! おら達、溺れかかってるんだべ!」

長吉   :「え!? ワッ!!(吾助にしがみつく)」

吾助   :「離せ! 約束だべ!」

長吉   :「んだ事言ったって、おら、泳げねんだ。助けてけろ!」

吾助   :「離れろ! しがみつくな!」

長吉   :「助けてけろー!」

吾助   :「父っちゃー!」

長吉   :「母っちゃー!」


       二人、抱き合ったまま沈んで行く。

       下流側で、突然、川岸の雪が崩れて流れを堰き止める。

       流れて来た二人は、その上に投げ出される。


二人   :「いで!」

長吉   :「助かっただー!」

吾助   :「雪に助けられるなんて、おらあ、生まれて初めてだあ!?」

長吉   :「ヘックション!」

吾助   :「クシュン!」


 第2幕 終

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