第4話・執事、始まりの音色2

 ここに書くことないなった。

 コメント・ブクマくれたらうれしいです。

 ______________________________


 コンコン。部屋をノックする音が聞こえる。今は朝の7時。京平は、まだ爆睡中。なので、仕方なく俺が出る。


「はい。なんでしょう?」


 寝ぼけてろくに回らない頭と口を何とか動かし、かろうじてそれだけを声に出す。


「陣馬です。話したいことがあるから二人でお嬢様の前に来るようにとの言伝を承っております。橘様はまだご就寝中のご様子ですが、急ぎとのことですので私と一緒についていただきたい。服は制服を着てください。」


「えーっと。制服、くしゃくしゃですけど。。。大丈夫ですか?」


「それなら勝手ながら昨日ご就寝の際に、選択させていただきました。」


 相も変わらず表情筋はピクリとも動かない鉄仮面執事(心の中呼称)こと陣馬さんに当たり前のようにプライベートを侵害されたことと軟禁から一日もたたずして、外出許可が下りるとは思わず苦笑いを浮かべながら京平をたたき起こす。


「京平。おきろ。お嬢様がおよびだって。陣馬さんが呼びに来てる。」


「あい、今起きます。服は?さすがに寝間着で。。。って、えぇ!?おいいつの間に俺ら寝間着姿になってんだ!?昨日制服脱いでパンツとシャツで寝てたろ!」


「あ、それもご就寝中に私を含め男性使用人数名で着替えさせました。」


「あ、そうなんですね。ありがとうございます。」


うん。一周回って平常心を保てている自分の精神状況に不安しか覚えない。さて、多分これだけではとどまらないだろう。朝イチの呼び出しで急ぎの要件。おそらく昨日ちょっとだけ考えていた。学校の件か、もしくは軟禁される理由にもなった俺の家庭事情の件の証拠でも出たのだろう。


「なんで、玲はそんなに動じずにいられるの?俺、お前のことも怖くなってきてるよ。」


若干震えた声で戦々恐々としながら震わせた声でこちらを見てくる京平。自分でもこの順応の速さには驚いてはいるがそれを無視して話を進める。


「京平。言ってても何も始まらない。さっさと着替えてお嬢様のところへ行こう。」


「はぁー、それもそうか。おし!制服はあそこに入ってますか?」


京平も京平でここに来てからの切り替えが早くなっている気がする。いや、まぁ、致し方のない環境ではある。次から次へと予想の範疇を軽く超えていくような出来事が立て続けに起こっているのだ。当然といえば当然なんだろうけど。


「はい。クローゼットの中に入れさせていただきました。10分後に再度迎えに来させていただきますので、なるべく早めに準備を終わらせておいてください。では失礼いたします。」


そういって陣馬さんは足音一つ鳴らすことなくこの部屋を出ていく。まじでどうなってんだこの執事。。。


======


「よし、玲も着替えられたな。そろそろ陣馬さんが迎えに来ると思うが。。。」


コンコン。部屋の扉がノックされる


「陣馬です。そろそろお着換え終わるころでしょうか?お二人とも準備ができていましたら部屋の外までお越しください。」


うん。ほんとにちょうどいいタイミングで来たな。別にもう何とも思わないけど。

そう思いながら部屋の外に出て返事をする。


「ちょうど今終わりました。お迎えありがとうございます。陣馬さんおひとりですか?」


「かしこまりました。ではお嬢様の元へまいりましょう。それと小鳥遊様のご質問に答えるのであれば、使用には私以外にも多数おりますが、あなた方の身の回りの世話等は基本私一人で行っております。」


お嬢様の世話係もしつつ、俺たち相手の世話もやっているらしい。大丈夫か?ちゃんと休めてる?ぞしかしてここって想像以上にブラックなのでは?そういった思いが顔に出ていたのか、いや、顔に出ていてもおかしいのだが、


「心配はご無用です小鳥遊様。私の好きでやっていることですし、スポーツのトッププレイヤーですら目を見張るほどのお給金もいただいております。休憩がないのは確かですが、住み込みでの仕事ですから家に帰るということもしなくていいので寝る時間も確保できております。」


何回も言おう、なぜ表情一つで俺の思っていることをそこまで完璧に見抜けるのか。

この人はもう人間じゃないと思うことにしよう。そう思っていると、今の今まで口を開かなかった京平が陣馬さんへ質問をする。


「陣馬さんが一人で俺たちの面倒を見てくれているのわかったけど、仮にも俺たちは疑われている身。前置きとして、変なことは考えてないってことは言っておきますけど、もし俺たちが良くないことを考えててこの場から逃げようとしたらさすがに陣馬さんも危険だと思いますし、複数人いたほうがいいんじゃ。。。お嬢様の身の危険にもかかわることじゃ?」


確かにそれはそうだ。俺たちはまぁ、不法侵入とはいえ事情があってそうせざるを得なかった高校生に過ぎない。そこに全くのウソ偽りもないから変な気を起こす必要がない。しかし、悪意を持っている人間からしたら割と簡単に入り込めたといっても過言ではないほどスムーズに館に案内されたんだからその疑問はもっともだ。


「あなた方に悪意があってこの館に侵入してきたとは、私自身はもう疑っておりません。ただ、悪意がある人間がこのような状況で逃げだそうとしても無駄です。

屋敷の使用人は男女問わず、最低三つの武術を師範代レベルまで極めた人間しかおりません。もっと簡単に言ってしまえばここの使用人がオリンピックや世界大会に出てしまえば、あっという間に数年間は優勝を総なめにし続けられるでしょう。それほどの強さを持つことがここで働くための必須条件のひとつですから。あなた方に昨日料理を作ったシェフですら二つは武術を極めております。そんな人間が20人近くいるこの屋敷から逃げ出せた人間なら一周回って称賛すらできますよ。まぁ、その後どうなるかはご想像にお任せいたしますが。」


無表情で、さも当然かのごとくいう陣馬さん。まじこわぃ。まじむりぃ。


「さて、そろそろお嬢様のおられる大広間に到着いたします。私は火急の用事がございますので大広間の前で失礼いたしますが、扉の前に使用人がいます。お二人が来たことをお嬢様にお伝えしますので、使用人が戻ってくるまではその場でお待ちください。」


そう心の中でメンでヘラっている人になりかけていると陣馬さんがまもなく大広間に着くことを教えてくれた。


「わかりました。京平と一緒に待っています。」


とりあえずの返事をして、無駄に変に緊張している自分の心を抑えようとする。


「よろしくお願いいたします。では、前に見えるのが大広間の扉でございますので私はここで失礼いたします。」


そういった陣馬さんに返事を返そうとして後ろを振り返った瞬間。


「わかり。。。いない!?」


いやほんと。何回も言うけどさぁ。あの人どうなってんの?忍者なの?アサシンなの?なんなの?なのの四段活用しちゃったよ。いやそんなものがあるのか知らんけどね?


「玲。驚くだけ無駄だよ。ここではそういうものだと思おう。無駄に考えると頭痛くなるぞ。」


なんだその表情は。お前は菩薩様にでもなるのか。達観しすぎだろ。訳の分からんタイミングで悟ってんじゃねーよ。びびるわ。


「それもそうだな。理解はした。納得はしてねーけどな!!!」


屋敷の執事を見た友達。意味の分からないタイミングで悟ってしまう。どんなラノベタイトルだ!ふざけるな!売れねーわ!!!。。。よし、落ち着こう。ツッコミどころはそこじゃない。とりあえず、使用人に話しかけよう。


「あ、えーっと。お嬢様に呼ばれた小鳥遊と橘です。」


恐る恐る使用人に声をかけてみる。


「あ!小鳥遊さんと橘さんっすね!お待ちしてたっす!お嬢に到着伝えるんで、待っててほしいっす!あ!申し遅れたっす!うちは、お嬢様に使えてる使用人の曙 円(あけぼの まどか)っす!よろしくっす!」


奇抜なピンク色の髪をウルフカットに仕上げた中学生くらいの女子。しかもインナーは紫。なまじ顔が整っているからかアニメキャラみたいなくせして似合っている。それに輪をかけるような自然な若者敬語に虚を突かれ普通に返事を返す。


「は、はぁ。えーと。よろしくおねがいします?」


「。。。?」


「はい!今お嬢に伝えてくるんで待っててくださいっす!」


。。。?ふざけんな!なんだこのテンションのジェットコースターは!!!感情がおかしくなるわ!頭もおかしくなるわ!完全に感情が迷子だよ!個性強すぎんだよここの使用人たちは!なんなんだ一体!


「は、はい。わかりました。まってます。」


よし、よく耐えた。俺。心の中の叫びで止めた俺天才。ナイスブレーキ!

あ、そういえば京平のやつ大丈夫だろうか。。。


「きょ、京平?だいじょ。。。あらやだ、菩薩の笑みを浮かべてるじゃないのよあーた。って、おい!京平!正気に戻れ!」


案の定。悟ってました。現場からは以上です。と、そうこうしているうちに先ほどの使用人が帰ってきた。


「入っても大丈夫そうっすね!なんで、ちゃちゃっと中入って要件きいてくるといいっすよ!」


「わかりました。」


そういって俺と京平はその重厚な扉を開けて中に入る。


「待っていたわよ。小鳥遊君と橘君。立ち話も何だし、こちらに座るといいわ。

そこでお話ししましょう。」


そういわれたので、素直に黙って案内された席に座る。


「まず単刀直入に言うわ。あなたたちの言っていたことは本当のようね。これではれて空き巣未遂の容疑は晴れたわ。よかったわね。それで今後の話なのだ。。。「ちょちょちょ!ちょっと待ってくれ!」。。。なによ。」


「昨日の今日でもう事実確認が済んだって言いうのか?俺らは早くても数日はかかると思っていたのだが!?いくら椿家ご令嬢だとしても情報を得るスピードが速すぎる!」


「あら、あなた頭の悪い人相を浮かべてる割には頭の回転早いのね。」


「それはどうもって、ディスってんじゃねーか!いや、違う!そういうことじゃなくて!玲の親は失踪中で言っちゃ悪いが家庭のことを知っているのは俺とほか数人だけだ!そのほか数人は玲の親戚だが玲を煙たがっているからそんなことわざわざ話すとは思えない!こんな早く事実を確認できるとは思わないんだよ!」


「冗談よ、冗談。というかあなたたちは早くここを出たくないの?事実が確認できたといったのにまるで喜ぼうとしないし。」


「ちゃんと確認できていないのにここをでて、気が付いたら東京湾の底にコンクリで固められてた。なんてのは冗談でも嫌なんだよ!だからちゃんと調べてくれ!」


京平が血相を変えたようにいう。おまえ、いつの間に正気に。。。じゃなくて、京平の言うことはまんまその通りだ。


「だから言っているじゃない。ちゃんと調べたわ。納得できないっていうなら。。。そうね。一言であなたたちが納得する理由を言うわ。」


そういって真剣な表情を浮かべるお嬢様。自然と緊張感が走り脂汗がにじみ出てくる。


「それはね。。。」


ドクン。。。ドクン。。。心臓の鼓動が早くなる。


「陣馬に調べてもらったからよ。」


「「あぁ~!なるほど!」」


「って!あ~じゃねぇよ!なんで納得できてんだ俺達!」


「しらねーよ!でも玲も観ただろ!あの常人離れしたよくわからないスキルの数々」


「やっぱり、私の間隔がずれていたわけじゃなかったのね。陣馬は異常なんだわ」


いや、お嬢様が使用人に向かって異常というのはどうなんだろうか。。。いや、俺達も口には出してないだけで人外だとは思っているが。。。


「とにかく、ほんとに安心していいわ。ちゃんと真面目に調べているから。それから、話の続きだけれど小鳥遊君には聞いておきたいことがあります。」


先ほどのようにふざけた印象は全く受けない。至極真面目に話をしようとしているのが伝わってきたので俺も真面目に話を聞くことにする。


「いったい何でしょう?」


「あなたは今、高校の学費が支払われていない。そのため学校はやめなければならないことはわかっているわね?あなたが支払えるなら別だけれど、今のあなたはお金がないわ。バイトするにしても学費は払えないでしょうしどちらにせよあなたは学校をやめなければならないわ。」


それはそうだ。学費が払われていない挙句に無断で二日やすみ(これは京平も一緒だが)親の失踪はもう学校側に伝わっているだろう。となれば学費を自分で払うかやめて働くかの二択になるのは当然だし、お金がない俺からしたら一択しか選択肢はない。


「そうだな。学校をやめなければならないのは確定だな。」


「えぇ、そこで物は相談なのだけれど。。。」


そこからの話をきいて俺と京平は驚愕することになる。


_________________________

いつも通り、詐欺詐欺です。今回も執事になれませんでした。

執事になれる日はいつかきっと来るのでお待ちください。

ブクマ・コメント等くださるとうれしいです!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現実でも執事の私、お嬢様の要望で執事系Vtuberになる。 永遠 水月🚰🌙*゚ @kitunenonakineiri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ