第19話 ハロウィン

 ハロウィン当日

 

 召使いの少女は未だに寝ている二人に声をかける。


「卑弥呼様、谷崎様起きてください」


「んん……」

 

 谷崎はスマホの時計を見ると8:36になっており通知欄には『今日はハロウィンです。家族にはお菓子をあげ、友達とはパーティーをして好きな人とはうふふなイタズラをしちゃいましょう!』と書いてあった。


 (……ふざけるな)

 

 谷崎は思わずスマホを投げそうになるが何とか食い止める。


「後でスマホに入ってるアプリを確認しよ……ってもう8時半じゃん!」

 

 谷崎は急いで身支度をする。


 少女は卑弥呼を揺らして話しかける。


「卑弥呼様、起きてください!朝ですよ!」


「……もう……ちょっとだけ寝かせておくれ……」


「もう!」


 声をかけても起きないため谷崎に助けを求める。


「谷崎様、卑弥呼様を起こしてください……」


「え、……卑弥呼さん起きてください。今日はハロウィンですよ」


 谷崎は卑弥呼の近くにしゃがみ、顔を見ながら話す。


「……そうじゃな。子供たちを楽しませないといけないからな」


 卑弥呼は起きて準備をする。


「私と谷崎様の態度が違いませんか……」


「そうか?」


「そうですよ!」


「すまない!待っておくれ!」 


 少女は頬を膨らませ外に出て、それを卑弥呼が追いかけるのを谷崎は見て思った。


「ハロウィン大丈夫かな……」




 数分後、少女と卑弥呼が戻り、谷崎と卑弥呼は前日につくっていた飾りを卑弥呼の家に飾っていき、少女は村の子供たちに昼頃に卑弥呼の家でお菓子が配られること、そしてお菓子を貰うための合言葉トリックオアトリートを伝えていった。


「よし!全部飾り終えたな」


「はい、今日は子供たちがとても楽しかった一日にしましょう」


「そうじゃな!では、頑張るぞ~!」


「「お~~!!」」


 そして昼頃、卑弥呼の家にたくさんの子供たちが来ていた。


 最初に来たのは三人の女の子たち。


「卑弥呼様!……うわぁ!!きれいだよ!見て見て!」


 卑弥呼の家に飾られた飾りを指さして一緒に来た子に話しかける。


「ほんとだぁ!!」


「すごーい!」


「そうじゃろ!そうじゃろ!」


 卑弥呼は女の子たちにそう言われ喜ぶ。そしてお菓子が入っているかごを持ち、女の子たちに話す。


「合言葉を言えたらこの菓子をやろう!」


 女の子たちは顔を見合わせ笑顔で一緒に言う。


「「「トリックオアトリート!お菓子をくれないとイタズラをしちゃうぞ!!」」」


 卑弥呼はお菓子を、谷崎はパンプキンのイラストとトリックオアトリートと書かれたカードを女の子たちに渡す。


「「はい!どうぞ!」」


 女の子たちはお菓子を貰いはしゃぐ。その中の一人が何か思いついついたのか二人に話す。


「おれいを言わないと!」


「そうだね!」


「そうだった!」


 三人は少し考えて息を合わせて言う。


「せーのっ!」


「「「ありがとう卑弥呼様!!彼氏さん!!」」」


「うんうん!お礼を言えて偉いぞ!……え、彼氏?誰が?」


「となりのお兄さんは彼氏さんじゃないの?」


 女の子は谷崎を指さす。


「えっ、僕?」


 谷崎は卑弥呼と顔を見合わせる。


「晴人がわらはの彼氏……」


 谷崎と卑弥呼の顔が赤くなる。


「違う!違う!晴人はわらはの彼氏じゃないぞ!!」


「そうですよ!!」


 女の子たちは首を傾げる。


「そうなの?いつも卑弥呼様の隣にいて楽しく話しているし、一緒に暮らしているからお母さんは卑弥呼様の彼氏さんだって言っていたよ」


 谷崎と卑弥呼は顔を見合わせる。


「ち、違いますよ!」


「そうじゃ!わらはには勿体ない良い男じゃ」」


「えっ」


「いやこれは言葉のあやで……」


 谷崎と卑弥呼はもっと顔を赤らせる。


「私たちはじゃまだね!」


「「「じゃあね、お菓子、ありがとう!!」」」


 そい言い女の子たちは走っていった。


「待っておくれ!」


 卑弥呼は追いかけようとしたが他の子供たちがたくさん並んでいたので追いかけるのを諦める。


「さっきの事は気にしないでいこう」


「そ、そうですね。他の子供たちも喜ばせましょう」


 そういったものの谷崎と卑弥呼の間で気まずい空気が流れていた。だがその気まずさは悪いものではなく不思議な感覚だった。


 そして村の子供たちに配り終え片付け始める。


「二つ残ったな」


 一つを谷崎に渡す。


「食べるか!」


「「いただきまーす」」


 谷崎と卑弥呼は食べようとしたとき、


「あの、まだありますか?」


 声をかけられ振り向くと以前谷崎が助けた女の子、チナだった。


 谷崎は一度卑弥呼と顔を見合わせチナに歩み寄る。


「大丈夫、まだあるよ」


「ほんとうですか!!」


 お菓子をチナに見せる。


「……!」


 チナは目をキラキラさせお菓子を見ている。


 そして谷崎はお菓子を指さし、尋ねる。


「合言葉が言えたらこのお菓子をあげよう」


「えっと、えっと……トリック……オア……」


 すると卑弥呼も駆け寄る。


「よいか、チナ。トリック」


 チナが続けて言う。


「トリック……」


「オア」


「オア……」


「トリート」


「トリート……」


「トリックオアトリートじゃ!」


 チナは一度深呼吸をして恥ずかしながらも谷崎に言う。

「トリック……オア……トリート!!お菓子をくれないと……イタズラしちゃうぞ……!」

「はいどうぞ」


 谷崎はお菓子を渡す。


「わぁ!ありがとう!」


「どういたしまして」


「……食べてもいい?」


「もちろん」


 チナはお菓子を一口食べる。


「…………!」


「美味しい?」


 チナは頭を振り、残りも食べる。


 食べ終えたとき、谷崎が思い出し、


「ああ、忘れてた……はいこれ」


 チナにカードを渡す。


「……かわいい……ありがとうお兄さん!」


「どういたしまして」


「……卑弥呼様!」


「ん?どうしたのじゃ?」


「……またやりますか?」


 卑弥呼は顎に手を当て考える。


「そうじゃな……みんな喜んでおったし、またやろうかの。晴人も良いじゃろ?」


「もちろんいいですよ」


 チナは笑顔になる。


「ありがとう卑弥呼さん、お兄さん!」


 チナは家に帰っていく。


「気をつけてな」


 卑弥呼と谷崎はチナを見送る。すると、チナは振り返り、


「卑弥呼様!彼氏さんありがとう!」


「おう!……////……じゃ~~か~~ら、ち~~が~~う~~!!////」


 卑弥呼は顔を赤くして叫んだ。


 村で初めてのハロウィンは子供たちが喜び、大成功?したのだった。

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ある日、弥生時代で激かわ卑弥呼と同居することになった 日菜島ニゲラ @hinashima

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