「実況の魔王です」「解説の側近です」

戸賀内籐

スキル 百人隊長

「こんばんは、実況の魔王です」

「魔王様の側近、解説のメガネっ子です」

「今晩も異世界転生者の行く末を実況していきます。今回の転生者はこちら。ステータスカムヒーァ!」


 パネルを持ったAD下級魔族がパネルを押してくる。

『剣技、言語変換、百人隊長』


「初期スキルは3つしか選べません。それゆえ初期選択は大事なのですが、彼は冒険しないタイプの人間ですね」

「メガネをかけていますし、筋肉もついています。文武両道といったところでしょうか」

「そう見えますね。百人隊長は100人の歩兵をまとめる指揮官としてのスキルです。かなり強力なスキルですが……」

「私の思い違いでなければいいのですが、これは部下がいなければ発揮されないスキルですよね?」

「そうですね」

「今の転生者は森の中で一人!」

「現在は死にスキルと化していますね。人の上に立つべきというプライドがあるんでしょう。ふふふ、森の中でどう生かせるというのか見ものですね」メガネクイッ

「メガネっ子の魔族魂がうずいています! ……おっとここで転生者の前に偶然にも騎士団が現れました。どうやらゴブリンの討伐に来ていたようです。上手く説得すればスキルを活かした立ち回りが可能な状況か!?」


 転生者が騎士団にずかずかと近づき、胸を張る。


「おっとここで転生者が騎士団に物おじせずに近づいたァ!」

「胆力がありますね。向こうは完全武装しているのですが」

「これは手に汗握る展開です!」


『……だから、君らの装備や人材を一時的に俺に預けてみろ。お前らの仕事はあっという間に終わるだろう。一週間はかかると言っていた仕事が一日で終わって、君らも俺も得するだろう?』


「悪手ですよこれ」

「えっ? どういうことですかメガネっ子さん」

「騎士団はもともとプライドが高いものですが、彼らは聖堂騎士団。宗教的にも差別的で、カースト制をいまだに強いている前時代的集団で……」


『異教徒が図々しく話しかけやがってよお、早死にして土葬にされてえらしいなぁ!?』

『耳が腐っちまうぜ、市民権も持たない蛮族ごときがよぉ!』

『お前のような輩には教育が必要だァ! 聖堂騎士団の教育、舌の上でゆっくり転がして味わいなァ!』


「腕を切られたーッ! 悲鳴を上げる転生者にトドメの一閃!」

「さっすが聖堂騎士団、人の殺し方がプロですね! 興奮してきた」

「あまりにあっけない終わり方ーッ!」


 転生者死亡。


「いやー今回の試合展開はどうでしたか、メガネっ子さん」

「胆力と傲慢さをはき違えた結果として、寓話的ですらありますね。傲慢な人間が、より傲慢な人間に殺される。クックック」

「魔族的快楽が刺激されますねえ!!」

「こういうのが見れるから最高なんですよハァハァ。メガネが曇ってきた、くひひ」

「はい! 今回もメガネっ子さんが興奮していただけて何よりです。魔王チャンネルは今後も野良転生者の顛末を放送していきます。解説の魔王と!」

「側近のメガネっ子でした」

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「実況の魔王です」「解説の側近です」 戸賀内籐 @tokatoka00

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