第29話 ゼドの思惑は何じゃ ~ソフィアサイド~
「なぁ、ゾルダ。
そろそろ、剣から出て姿を見せてくれないか。
一人きりで歩いているのも、なんだかさみしく感じて」
あやつが何か心許なく感じておるみたいじゃのぅ。
「なんじゃ、おぬしは一人ではさみしいのか」
「そうかもしれない。
ここのところ、フォルトナも居たし、賑やかなことが多かったから。
もくもくと歩いて、戦って……
そういうのもなんかなぁと思って」
そういえば、シルフィーネ村を旅立ってから数日は経っておるところじゃ。
それも致し方ないのかのぅ。
人というものはお互い触れ合っておらんとさみしいのかもしれん。
「小娘も、小娘の娘も、ワシからしたら賑わしいったらありゃしない。
あんな五月蠅い奴らとの旅はもうごめんじゃ」
「そうかなぁ……
俺は楽しかったけどな。
久々に人の温もりを感じて嬉しかった」
まぁ、道中はともかく、村で酒を飲めたのはワシも嬉しかったぞ。
ただ、もう少し酒が飲みたかったのぅ。
休息も兼ねて数日は浴びるほど飲んだのじゃが。
少し酒をくすねてくれば良かったかのぅ。
「ほぅ、それは良かったではないか。
また向こうに着いたら、そういう奴もおるじゃろう」
「そういう気さくな人たちがいるといいな」
そういえば村をたつ前に見送りに来ていた小娘の娘は、いつもの元気じゃなかったのぅ……
小娘の娘もさみしかったのかもしれんな。
まぁ、ワシの知ったことじゃないがのぅ。
「ただワシは、他の者がいると剣に入れずゆっくり休めん。
今は、剣の中で休ませてくれ」
「えーっ」
「おぬしは文句を言わず歩け。
魔物が出てきたら倒せ。
もうザコしかおらんじゃろ」
それにしても、あやつとワシはじじいからの伝言もあって東の……
なんとかって街に向かっているところじゃが……
なかなかと辿りつかんのぅ。
あと数日はかかるやもしれん。
もう少し剣の中でゆっくりできるじゃろ。
ところで、ゼドは何を企んでおるんじゃ。
思惑はどこにあるのじゃ……
まず何故ワシを封印したのか。
ワシに対して何かの不満があったのじゃろうが……
それとも野心が膨らんできたのか。
ゼドの内心まではわからんが、そんなところじゃろう。
あとはこの封印の仕方じゃが……
あやつとの行動でなんとなくじゃが、分かったことは……
あやつの存在が封印を解く鍵なのじゃろう。
勇者と言っておったからのぅ。
魔王と勇者は相容れない存在と思い、勇者を封印の鍵にしたというところかのぅ。
それにしても、ゼドのやつめ。
こんな封印の仕方をしおって、気に食わん。
まぁ、あやつが強くなるにつれ、力も戻ってきているのは確かだしのぅ。
このままあやつを強くしていけば封印はなんとかなるじゃろう。
あとはワシの部下のマリアたちも同様の封印にかかっていると見たほうがよさそうじゃ。
あいつたちも、どこぞに隠されておるのか、放置されているのか……
探し出して、一緒に封印を解いてもらう必要がありそうじゃ。
「なぁ、ゾルダ。
何を黙っているんだ。
出てこなくてもいいから、俺と話してくれよ」
ええい。
考えておるのに五月蠅いのぅ。
「ワシは今は休息の時じゃ。
しずかにしてくれ」
次にシルフィーネ村に対しての出来事。
あの結界はそれほど強くない魔物には聞くのじゃが……
北の洞窟におったシエロとやらぐらいあれば効かぬはずじゃ。
直接襲わせず、結界を壊すようにしたのは何故じゃ。
ゼドはそこまで何か考えて動く奴じゃったかのぅ。
これはクロウとやらの考えに近いのかもしれぬ。
あの結界に何があったのじゃろうか。
うーん。
わからんのぅ。
あのシエロとやらも分かってなかったからのぅ。
しっかりと分かっていてくれれば、強引に吐かせたものを。
頭が悪すぎじゃ。
これから向かうなんとかって街は今度は力尽くで奪おうとしておるらしい。
別の奴の指示なのか、はたまたクロウとやらの指図なのか。
行ってみないことにはわからんのぅ。
あとは、あのワシがいなくなった理由じゃ。
『勇者が怖いから逃げ出した』って……
ゼドのやつ、嘘を言うにも、もっといい嘘があるじゃろ。
子供が考えるような理由にしておって……
例えば……
『親が病気になってしばらく帰ってこない』とか
『長期の出稼ぎに行かないといけなくなった』とか
『より強くなるために修行に出た』とか
いろいろあるじゃろ。
もう少しマシな理由を考えてほしいものじゃ。
本当にもう。
ゼドのやつ、あったらただではすまさんぞ。
「あの……ゾルダ?」
「なんじゃ」
「途中からこころの声が俺の頭に漏れてきているけど……」
「んぁ?
どこからじゃ?」
「『ワシがいなくなった理由じゃ』あたりから」
「すまんのぅ……
ちょっと頭に来て興奮してしまったかのぅ」
「でもさぁ、ゾルダ。
『親が病気になってしばらく帰ってこない』とか見え見えの嘘にしか聞こえないよ」
「そんなことはないのじゃ。
ワシのセンスを疑うのか」
「それこそ、子供が考えそうな言い訳だよ。
特に『より強くなるために修行に出た』なんて、中二病っぽい言葉だよ」
「なんじゃ……そのチュウニビョウとやらは?」
「えーっと、こっちの文化に合わせての説明が難しいなぁ……
まぁ、子供っぽいってことかな」
あやつ、ワシをバカにしておるな。
「な……なにを言うんじゃ、おぬし。
ワシは全然子供っぽくないぞ」
「はいはい。
ゾルダは大人ですよ。
酒もいっぱい飲むしね」
「そうやってはぐらかしおって」
あやつが割り込んで入ってきたせいじゃ。
せっかく頭の中で整理していたのに。
あーっ、もう。
ゼドが何を考えていようと知ったことか。
立ちはだかる奴らをぶっ潰していけば、ゼドのやつが出てくるのじゃろう。
もうそれでいいのじゃ。
ふぅーっ。
考えるのはもうやめじゃ。
今はゆっくり休んで次に備えるかのぅ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます