第12話 魔獣アウルベア その2 ~ソフィアサイド~
あやつも順調に魔物を倒せるようになってきてるようだのぅ。
最初苦戦しておったが、コツを教えたら、早く結果を出しおった。
案外切れ者なのかもしれん。
だいぶ倒してきたようじゃが……
「今度はそうもいかんぞ」
ちと違う気配がしてきた。
「何かいるのか」
「そうじゃな」
「強い気配があちらからする」
「たぶん、親玉じゃろう」
気配がする方へと近づいてみる。
物陰から覗き込んで見てみると、そこには魔獣がいるではないか。
「ほぅ、あれは……」
「魔獣アウルベアだのぅ」
「アウルベア?」
「頭がフクロウ、体が熊の魔獣じゃ」
「ちと厄介じゃのう」
「厄介?」
「今までの魔物と違うのか?」
「ちょっとばかり知能もあるから、いろいろ考えおる」
「まぁ、ワシが出れば造作もないことじゃがの」
「今まで休ませてもらったし、ここはワシの出番かのぅ」
剣から飛び出してアウルベアの方へ近づいていく。
久々に少し手を煩わしそうな魔獣だ。
思わず笑みがこぼれてしまう。
「さて、体を動かすか」
あやつも、ワシの後に続いてきた。
「久しぶりじゃのぅ、お前らの種族と戦うのも」
魔王になる以前じゃったかな。
あの時はまだワシも力が乏しかったから苦戦したがな。
「オマエハ……」
「おっ、覚えているのか」
「ワシとやりあっておったか」
「シラン……」
「違う奴じゃったか」
「そうじゃそうじゃ、さすがにあの時のアウルベアも生きてはおらんな」
「オマエハ……」
「マオウノテキ……」
「マッサツ……スル……」
ん?
魔王の敵とな。
何がどう伝わっておるんじゃ。
「お前、何か聞いているな」
「今の魔王から何か言われているな」
「マエノマオウ……キエタ」
「デテキタラ……ケセ……」
「オクビョウモノ……イラナイ」
ワシが逃げたことになっているのか。
ゼドのやつ、なんてことを言っているんだ。
罠に嵌めたくせに。
「ぁあ?」
「誰が臆病者だって」
「ゾルダ、何を怒っているんだ」
「少し落ち着け」
「ゼドのやつ、ワシを臆病者にしたてあげたようだ」
「魔王の立場に耐えられず逃げたということになっているらしい」
「そんなことするはずがないじゃろ」
「わかった、わかった」
「ゾルダはそんなことしないのはよくわかるから」
「だから、落ち着け」
「いや、我慢ならん」
「八つ裂きにしてやる」
「マオウノテキ……キタ」
「オクビョウモノ……キタ」
「マッサツ……スル……」
「また、臆病者って言ったな」
さすがにカチンときたのぅ。
ワシを臆病者と言った報いは受けてもらう。
「まずは、これを喰らえ」
「闇の炎(ブラックフレイム)」
アウルベアの頭に向けて黒炎を放つ。
その瞬間、頭の部分が離れて上へと飛び立った。
「ちっ……」
そういえば、こいつは上と下で分かれるんだった。
頭に血が上ってすっかりそのことを忘れていたわ。
「あっ、あれはなんなんだ、ゾルダ」
あやつがビックリした様子でこちらに確認をしてくる。
「だから、厄介な奴じゃといったじゃろ」
「1匹の魔獣じゃが、二手に分かれて攻撃してくるので厄介なのじゃ」
「そうか」
「じゃ、下は俺が相手する」
「ゾルダは上をお願い」
「誰にお願いしておるんじゃ」
「お前の願いなどはきかん」
「これはワシの獲物じゃ」
さすがに二手からだと多少のダメージはあるやもしれん。
まぁ、大したことはないはずじゃがな。
ただあやつに下だけ足止めだけでもしてもらえば無傷で済みそうだ。
あやつが耐えきっている間に上を仕留める。
「ちょこまか動きよって」
「逃げておらずに、こちらにこい」
闇の炎を打ちながら、動きを止めようとしてみた。
相手も逃げ回っていて、なかなか当たらないのぅ。
でも、動きが単調になってきているぞ。
「次はここ」
「闇の雷(ダークサンダー)」
予測をして黒い雷をぶち込んだ。
「ウッ……」
ほら、命中しただろ。
ここからはワシをバカにした報いだ。
「闇の吹雪(ブラックブリザード)」
「闇の雷(ダークサンダー)」
「闇の炎(ブラックフレイム)」
「ウギャギャギャ……」
「どうだ、思い知ったか」
「おぬしの方はどうじゃ」
あやつの戦いぶりを確認する。
思ったよりやれているようじゃ。
「こいつも弱点は雷でいいよな」
「アトリビュート、サンダー」
「そうじゃが、グリズリーより体力もあるぞ」
「わかった」
「うぉぉぉぉーーー」
また力任せに剣を振りおって。
もうちょっと洗練されてこんかのぅ。
でも、これなら問題なさそうじゃな。
「ギギ……」
「おっと、まだ生きておったか」
「では、特大のをお見舞いしてあげようぞ」
「闇の大雷(ダークギガサンダー)」
「グギャァァァァァ」
こっちはこれで終わりじゃ。
あやつの方も終わりそうじゃな。
「うぉぉ」
「やぁぁ」
「でやぁ」
あやつの剣戟で、下の方も倒れたようじゃ。
ちと頭に血が上って、もうちょっと上手くやる予定じゃったが、まぁ、いいか。
結果オーライじゃ。
「ゾルダ、大丈夫か」
「だいぶ怒っていたようだが……」
心配してかあやつがこちらに近づいてきた。
「ワシは至って冷静じゃ」
「怒ってなんかおらんぞ」
ちょっとカチンときたのは確かじゃがな。
「それならいいが……」
「でもそういえば前回は結構強力な魔法を使ったとたん、剣に戻っていったけど……」
「今日はまだ実体を保っているね」
ん?
確かに言われればそうじゃな。
以前よりも力が出せていたようにも思える。
これはあやつも力をつけてきたのに関係があるのじゃろうか。
「封印の気まぐれじゃろう」
どういう関係があるかはわからんからごまかしておこう。
「そんなことあるのか」
「こういう場合、俺との絆の力とかそういうのが鉄則なんじゃないの」
「絆?」
「そんな訳なかろう」
「封印も劣化してきているのかものぅ」
劣化なんてする訳はないが、適当に言っておくか。
「それよりか、これでこの辺り一帯の魔物の気配は収まったようじゃ」
「もう少し調べて、洞窟への手がかりがあればいいのぅ」
「そうだな」
「魔物の気配が収まったのなら、ゆっくり調査できるし」
日を追うごと、あやつが力をつけるごとに、ワシの力も取り戻せているのは確かじゃ。
このままあやつが成長していけば、無事封印も解けるのじゃろうか。
そんな単純な封印をゼドのやつが仕掛けるのか……
まだまだわからないことが多いのぅ。
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