第7話 ウォーウルフキングとの戦い ~アグリサイド~

ウォーウルフキングと対峙して苦戦をしていると、ゾルダが急に現れた。


「お前、こっちだ」

「ワシが相手をしてやる」

「ありがたく思え」


そう言いながらウォーウルフキングの前に立ちふさがる。


「グルルルルゥ……」


ゾルダを睨みつけている。


「そう血気盛んにならんでもよいのに」

「そうだな。30秒くれてやる」

「その間に、逃げるなら見逃してやるぞ」


そんなに煽らなくても……

俺が全然歯が立たなかったんだから、かなり強いんじゃないのか。


「ゾルダ、油断するなよ」


「ほぅ、油断するなよとは誰に言っている」

「このゾルダ様にか」


「いかにも余裕がありそうにしているから、大丈夫かと思って」


「余裕があるから、そういう態度をしておるのじゃ」


ゾルダがこちらを向いて話してくる。

そんな隙を見せたら、ウォーウルフキングが襲ってこないか……と思ったら、案の定襲ってきた。


「危ないっ」


思わず声を上げる。

ゾルダはこちらを向いたままだ。

ウォーウルフキングの爪がゾルダに襲い掛かってきた。


「おっ、きたか」


全く振り向きもせずにひらりとかわす。


「時間をあげたのに、逃げずに襲い掛かってくるとは、なかなかの度胸よのぅ」

「その度胸を賞賛してあげようぞ」


ゾルダがなんか楽しそうだ。

にやりとしながら、ウォーウルフキングに目を向ける。

息つく暇なく手を出してくるウォーウルフキングだが、全くゾルダにはかすりもしていない。

風に吹かれている柳のようにしなやかにかわしていく。


「すっ……凄い」


ゾルダの動きに目を奪われる。

そう言えば、元魔王って言っていたけど、本当なのかもしれない。

俺があれだけ全く敵わなかったウォーウルフキングを手玉にとっている。


「なんだ、その程度か」

「お前の勇気に免じて、しばらくこちらから手を出さずにおくぞ」

「一発でも当ててみろ」


ウォーウルフキングの目があやしく光り、ゾルダを凝視する。


さらに一層、力が入ってきたようだ。

手だけでなく、牙もつかい襲い掛かる。


「アオーーン」


さらに力が入ってきたようだ。

少し距離をとり、口から青白い炎を吐き出す。


「おっ、メガフレイムか」

「そこそこの術を使うのぅ」


放たれる光をも瞬時に避けてしまう。


「ゾルダ……」

「お前はどれほど強いんだ……」


あっけにとられてしまう。

圧倒的な強さを目にしている。

あれだけの攻撃を全く受けないなんて。


「もう終わりか……」

「もっと楽しませてくれよ」


さらに煽るゾルダ。


「ウゥゥゥゥゥ……ウォーーーーン」


毛を逆立てゾルダに突進していく。


「そうだ……もっともっと力を出せ」

「楽しくやろうぞ」


めいっぱい力であろうウォーウルフキングに対して、余裕の笑みのゾルダ。

これほどのものなのか。

魔王というのは。


これを戦いと言っていいのか。

一方的に攻めたてるが一切当たらない。

力任せで襲い掛かるウォーウルフキングも徐々に動きが鈍ってくる。

それでも、これでもかこれでもかと手を出してくる。

魔物とはいえ、見上げた根性をしている。


「ゾルダ、楽しんでないでそろそろ攻撃したらどうなんだ」


「久々に動けたので楽しんでしもうたわい」

「もう少し楽しませてくれんか」

「これぐらいの相手なら、一発で終わってしまうからのぅ」


「いやいや」

「相手もだいぶ動きが鈍っている」

「先も急ぐし、一発で終わるなら、そろそろ終わらせてくれないか」


眉をひそめてこちら向き


「うーーーん」

「仕方ないのぅ」

「さて、少しだけ力を出して相手してやろう」


そう言うと手のひらをウォーウルフキングに向ける


「闇の炎(ブラックフレイム)」


黒く禍々しい炎が標的を目掛け解き放たれる。

狙った先のウォーウルフキングは瞬く間に黒炎に包まれた。

もがき苦しむ姿が見える。


「んっ……」

「なんかワシの体がおかしいぞ」


ゾルダの体が陽炎のように揺れ動いて見えると、そのまま剣先へと吸い込まれていく。


「力を使いすぎたかのぅ」

「実体が保てなくなったようじゃ」


ウォーウルフキングから黒炎が消えてしまう。

まだ息はしているように見えた。


「力もまだ戻ってないようじゃ」

「一発では倒せんかったわい」

「あとはおぬしがとどめを刺せ」

「もう、あそこまで弱っていれば、おぬしでも大丈夫じゃろ」


「えっ、俺が?」


「大丈夫じゃ」

「あと一発剣で殴れば終わりじゃ」


「わかった」


剣を構えてウォーウルフキングに飛び込んでいく


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


「ズサッ……」


ウォーウルフキングに剣を突き刺すと鈍い音がした。


「グォォォォォォォォォォ」

「バタッ」


「やったのか……」


突き刺さった剣を引き抜きながら、様子を伺う。


「まぁ、大丈夫じゃろ」

「九分九厘方、ワシの方でやっておるからのぅ」

「いいとこどりしよって」


頭の中でゾルダが笑う声が聞こえる。


「いや、ゾルダが最後まで出来ただろ」


「……」

「おぬしにいいところを任せようと、最初から考えておったぞ」


「ほんとか……」


ゾルダの本心はわからなかった。

それでも、ウォーウルフキングを撃退できたのは確かだ。

親玉が倒れたせいか、近くにいたウォーウルフたちも散り散りに去っていった。


「ゾルダ、周りに魔物はまだいるか?」


「どれどれ……」

「さすがにもう群れているのはおらんのぅ」

「いたとしてもちょろちょろという感じで、この森本来の魔物じゃろう」


とりあえず当面の危機は去ったのかな。

気を取り直して、再びシルフィーネ村に向けて歩みを進めていく。

ところどころ、魔物に遭遇するも、先ほどのウォーウルフほどの強さはなかった。

俺だけでも十分対処できるようになっていた。

ウォーウルフキングを倒したことによってのレベルアップの影響もあるのだろう。


それから数日のちに、ようやくシルフィーネ村にたどり着くことが出来た。

これで最初の目的だった王様が言っていた魔物の増加と魔王の情報収集が出来る。

まずは村の長を訪ねにいこう。

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