第2話 不思議な話
さて、夕暮れ近くに、空中を彷徨(さまよ)よう謎の男性器の事件は、生徒会長の浜辺渚、その同級生の橋本優子、今田環奈らの見事な活躍によって、真犯人は捕まったのである。
浜辺渚の右回し蹴り、一閃で、カタが着いた。
驚くべきは、その真犯人とは、何と、自分達が通う、女子高校の生物の岩尾先生だった事だ。……まさか、こんな変態野郎が、女子高校の先生を長年していたとは?
「浜辺会長、即、警察を呼んで、この変態教師を、引き渡しましょう!」
ところが、この変態教師は、泣いて許しを請うたのだ。
「頼むから、今回だけは、見逃してくれ。皆の成績は、満点にするから……」
「何、眠たい事言うてるねん。私の、親友の立花優子ちゃんを襲ったのは、あんた、この変態教師でしょ。
彼女、そのショックで、今も、学校に来れないのよ。
この落とし前、どないしてくれるねん!」と、今田環奈は、親友の恨みをも込めて、関西弁を使ってまくしたてた。
今田環奈は、小中と大阪育ち。スポーツ推薦で、この北陸の地の辺鄙な女子高校に入学して来た。スポーツ特待生故、学費は免除なのである。親戚の、叔父さんと叔母さんちに下宿している。
すると、この変態教師は、不思議な事を言い始めたのである。
「神に誓って、この私は、立花優子さんを襲っていない。大体が、このようにアソコに蛍光塗料を塗ったのは、今回が、初めてで、今、アソコがヒリヒリして痛い程じゃ。
だから、百歩譲っても、この私が、立花優子さんは、襲っていない。
頼むから、今回は、見逃してくれ……」
「甘い、甘い。性犯罪の再犯率は、軽く、1/2を超えるのよ。
貴方が、立花優子ちゃんを襲っていないなら、一体、誰が犯人だと言うの?」と、浜辺渚会長が聞く。
「それについては、この私も、変な噂を聞いた事があるんじゃ」
「噂って?」と、橋本優子も聞く。
「君らは信じられ無いだろうが、私が、この女子高校に初めて教師として着任した時、ある奇妙な噂話を聞いた事があるんじゃ。
それは今から30年以上も前の頃の話じゃと聞いておる」と、ここで、この変態教師は、即座には信じられ無い話をし始めたのである。
「今、ここにある寺の先代の住職は、それはそれは、異常な程の禁欲家だったと聞く。
しかし、禁欲家で有れば有るほど、性欲は、余計に強くなるんじゃ。
で、このままでは、自分は生涯禁欲の誓いを破ってしまうと心配して、自らのアソコ、つまり、男性器を包丁で切り落としたと言うのじゃ。
で、あまりの激痛に、大声を上げてのたうち回ったため、近所の人が、警察に通報。
で、駆け付けた警官の前でも、包丁を振りまして暴れたため、二人の警官が身柄を緊急現行犯逮捕した」
あまりに不思議で、不気味な話であった。
先輩からの、長年の申し送りにも、この話は、一切無かったのだ。
「で、その住職は、どうなったのです?」皆、シュンとした顔つきで聞き始めた。先ほどまでの勢いは消えていたのである。
「勿論、色々と捜査はされたらしいが、誰も傷つけていない。で、そのまま、精神病院に強制措置入院され、その後、病院で狂い死にしたらしい。
だが、ここで、最大の問題が残ったのだ」
「最大の問題とは?」
「つまり、先代の住職が、自ら切り落とした筈の男性器がどこをどう探しても、見つから無かった事じゃ。
30年以上前は、トイレも水洗では無い。
くみ取り式のトイレも、流し台も、玄関も、全て調べたらしいが見つからなかったと言う。最後は、警察犬まで導入して探したが、発見出来なかったと言うから恐ろしい話じゃのう……」
「じゃ、そのチン○○、どこへ行ったのかしら」と、橋本優子は聞く?
「ここで、この私は、思うのじゃがのう。その切り落とされた男性器が、再び、この世に復活したのでは?」
「んな、馬鹿な?」と、即座に、浜辺渚会長が反論する。
「私は、ただ、この変装をして、我が校の女子生徒を驚かせかっただけじゃ。今では、若い時程の性欲も無くなっている。ハッキリ言えば、起たないのじゃからのう。
で、この前、この寺と神社の周辺を下調べしていた時、私は、偶然に出会ったのじゃ。その彷徨(さまよ)する男性器にの!」
「またまた、そうやって、私らを騙そうとする。このまま、警察には連絡しますからね」と、あくまで強気の浜辺渚会長。
「嘘じゃ無い。ここに、下調べしていた時に、私が、偶然遭遇してスマホで撮った画像がある」と、あの変態教師が宣う。
「じゃ、見せて見なさいよ」
しかし、変態教師が差し出したスマホには、屹立した男性器のみがハッキリ映っていた。しかも、それ以外の、背景もシッカリ映り込んでいるのである。
ユーチューバーのフワチャンがCMで言うように、グーグルマジックで消し込んだ画像で無い事も確かだ。グーグルでなくて、S社製の古いスマホだったからだ。
では、そこに映っている屹立した男性器は、一体、何なのだ?
気の弱い、橋本優子は、「オエー」と、嘔吐した。
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