校内放送。それは書くことへの御告げか

 中学生になっても読書感想文という課題は出ます。確か中学校には図書室なるものはなかったと思うし、家に漫画はあっても私が読むような小説といった類のものは目にしなかったので、(もしかしたら兄貴の本があった可能性も)市の図書館に借りに行くとこになるわけですよ。


 しかし、この借りに行ったという記憶がまったくないんですから弱ったもんです。それはともかくとして、中学は三年。となれば三回は読んで書いてるわけですが、これも記憶に残ってるのは一冊だけ。とは言え、これは私としては珍しく最後まで読んだんですよ。


 小説と言うのとはちょっと違いまして、発明に関する事例などを書き綴った本で、題名は今でも覚えています。「発明のヒント」です。牛乳瓶の蓋に摘まむ部分を付けたとか、歯ブラシの先を丸くしたとか、それらの話があれこれ出ていて、面白かったせいもあって最後まで読めたのでしょう。


 こうなるとあらすじを書くわけにもいかない。もちろん書いたところでどの道、どうでもいい文章には違いないと、開き直りもあったはずです。この開き直りこそが重要なのか、ある日の校内放送の時に事件は起こりました。


 読書感想文の優秀だったものが各クラスから三人選ばれ、その名前が一組から校内放送で流れ始めたのですが、なんと私の名前が三人目に出たのです。学年ではなく各クラスと言っても私には偉業と言って良い。


 疑いと尊敬のような視線を受けつつも呆然としました。もしかしたら書けるのかも。そんなことを感じた瞬間でもありましたね。佳作でしたが、賞状は今も大事に残ってます。

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