大学ノートに文字を連ねる

 小学校の高学年だったころだと思います。当時、うちの兄貴の影響でよくフォークソングを耳にしていました。それまではヒットした歌謡曲が中心で特定の歌手やグループを言う聞き方はしていませんでしたね。


 それで何回も聞いているうちにその曲調と歌詞に魅力を感じるようになり、口遊んだりできるようになったのですが、何曲も空で歌えるほどでもない。そこで歌詞を書けば見ながら歌えると思ったのか、大学ノートにそれを書き始めたのです。


 しかしです。レコードでもあって歌詞カードでもあればそれを写すだけで済むのですが、あいにくあるのはカセットテープだけ。そこで聞きながら書くわけです。速記ってわけにもいかないので、止めては戻し書いては聴く。こんな繰り返しです。


 そのため聞き間違いによる書き間違えも発生。ちなみにその歌手というかグループは「かぐや姫」です。今でも覚えているのは、「僕の胸でおやすみ」という歌の中に出る、古いコートは捨てて。というフレーズ。私は、古い事は捨てて。と書きました。笑い話です。


 二枚組のアルバムの歌詞をすべて書き上げて学校に持って行ったら、かぐや姫を知る人にはすこぶる評判で、それを見ながら歌ったりもしました。しかし、後日、別の友達が兄貴から借りて来たというソングブックを持って来たからびっくり仰天。


 印刷された本ですよ。そんなものが世の中にあったのかと驚きましたね。と同時に汚い字で書いた私のノートは恥ずかしくてもう持って行けなくなりました。今思えば短い詩に隠された物語を読み解く勉強になった気がします。

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