小説に手を伸ばさせる好きというパワー

 これは私が初めて購入した小説で、同時にちょっとした珍事でもありましたね。なにせ感想文の宿題をやる以外はまったく本は読まなかったわけですから。おまけに斜め読みどころか飛ばし読みの私が、小説、それも翻訳された海外の本ですよ。


 当時、夢中で読んだと言えば漫画雑誌。ただ、小学生の私の小遣いでは週間なんちゃらを毎週買うほどの余裕はない。だから大抵は気に入ったコミックを立ち読みする程度。幸いなことに当時はそういうのが普通に出来る本屋さんも溢れていましたからね。


 で、ここからが小学生ならではの安易な考え方。当時の私はこと西部劇が大好きでTVでやるたいていの映画はほとんどというくらい見ていました。中でもアランラッドの「シェーン」が好きでDVDと言わずビデオでもあれば繰り返し見たかったほどですが、そんなものは当時はない。


 そこでたまたま目にした「シェーン」という小説にクラッと来てしまったわけです。そうだ。これを読めばもう一度映画を見たような気分になれるはずだと。映画とまったく同じことが本にも書かれていると思ったんでしょうね。


 ところがです。読み始めるとなんだか違う。それはそうです。台本じゃないんですから。おまけに漢字が読めない。読みつけないから異様に時間が掛かる。こんな薄い本をいつまで読んでいるんだって感じです。


 それですっかり魅了されて本の虜になったというのなら一つの転機となるのでしょうが、読み終えた達成感は多少はあったものの、文字だけの本は自分には合わないと再認識した瞬間でもありましたね。

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