第12話 〈呪いの指輪〉
真莉は2つ目の〈混沌石〉を叩いた。
「えいっ」
瓶に入った赤色の魔法薬が錬成される。
体力と魔力を全回復させるアイテム、〈エリクサー〉だった。
・ファッ? また、Sクラスレア?
・〈混沌石〉でここまでレア引けるもんなの?
・このギャル、
「えっ? これもレアアイテムなの? うそー。これはどういう時に使えるのかなー。わかる人いるー?」
また、コメント欄の流れが速くなる。
「わっ。これって万能回復薬なんだ。じゃあ、これを飲めばもっとみんなに配信できるね」
配信の視聴者は順調に増えていた。
同時接続数は1000人を超え、SNSの投稿もどんどん拡散されている。
(他人の注目を惹きつける才能に長けている。予想以上に配信者向けの性格だな)
このまま続けていけば、さらに同接数は伸びていくだろう。
ただ、〈竜宮の羽衣〉は一向に出る気配がなかった。
(真莉のステータス運勢の効力が思った以上に強い。さっきからレア度Aをはるかに超えるレアアイテムを錬成しまくっている)
このままでは〈竜宮の羽衣〉を引くことなく配信が終わってしまう。
悟は〈マッピング〉で〈混沌石〉の情報を照合し直した。
――――――――――――――――――――
〈混沌石〉
――――――――――――――――――――
【レア度S(ドロップ率0.1%)】
〈エリクサー〉
〈雷帝の護符〉
……
【レア度A(ドロップ率1%】
〈竜宮の羽衣〉
【レア度B(ドロップ率5%)】
……
――――――――――――――――――――
レア度Aのドロップアイテムは〈竜宮の羽衣〉だけだから、運勢値200があればすぐに引くと思っていたが、レア度Sのアイテムばかり引いている。
(どうしたものか。……!?)
悟のマッピングがこちらに近づいてくる多数の敵影を察知した。
「真莉、一旦中断だ」
「えっ?」
「敵モンスターが近づいてきている。このダンジョンだから多分ゾンビ。数は10体ほど」
「げっ。どうします?」
「ここは迎え撃とう。さっき錬成した〈雷帝の護符〉を使う。範囲攻撃で敵を薙ぎ払えるはずだ」
「わかりました」
――――――――――――――――――――
〈雷帝の護符〉
――――――――――――――――――――
レア度 :S
雷力 :120
使用回数:5/5
――――――――――――――――――――
この護符を貼り付けた装備には、雷帝の加護
が宿り、使用者は雷帝のスキルを取得する。
――――――――――――――――――――
真莉は錬成槌に5枚綴りになった〈雷帝の護符〉を1枚貼り付ける。
するとハンマーはにわかに雷電を帯び始めて凄まじいエネルギーを宿す。
(すごい魔力量。こうしてハンマーを持っているだけでもわかる。この護符本当にSランクレアのアイテムなんだ)
真莉は一時的にスキル〈
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
怒れる雷帝の槌。
〈雷帝の護符〉がついた槌で地面を叩くと発
動し、周囲一帯のモンスターに
を落とすことができる。
――――――――――――――――――――
真莉が待ち構えていると、岩盤の向こうから魔鉱石の輝きに釣られて生ける
皮膚は崩れ、目玉は飛び出し、体のいたるところが腐っている。
ゾンビ達は真莉を見るなり、
「やあっ」
真莉はハンマーで地面を思いっきり叩いた。
すると、ハンマーから火花が飛び散り、火花は稲妻となって、ゾンビ達に向かって走っていった。
稲妻を食らったゾンビ達は高圧電流にさらされて、跡形もなく消し飛ぶ。
貼り付けた護符は焼失する。
「よーし。やったー。あ、一体残ってる」
10体のうち9体までは倒せたが、1体だけ胴体の半分を消し飛ばされながらもヨロヨロとこちらに向かって歩いてくる。
「もう一発撃とうかな? うーんでも、5回しか使えない護符をここで使っちゃうのはもったいないね」
真莉は口に手を当てて少し思案した後、ドローンの方に向き直る。
「みんな何かいい方法ないかな?」
真莉の疑問にコメント欄が答える。
・周囲の魔鉱石映してみ
「魔鉱石? よーし。じゃあ、ちょっと映すよー。ドローン。周囲を映して」
ドローンがゆっくり回転しながら部屋の全景を映す。
・お、〈緑風石〉あるやん
・ホンマや
・緑のでかいやつ錬成すれば〈
真莉は目敏くコメントを拾う。
「おっ、この〈
真莉は〈緑風石〉を錬成槌で叩いた。
すると、エメラルドのような魔鉱石は風を纏った投擲用の鎌に姿を変える。
――――――――――――――――――――
〈疾風鎌〉
――――――――――――――――――――
レア度 :C
風力 :50
使用回数:1/1
――――――――――――――――――――
投げると1体の敵に50のダメージ。
この鎌は一度しか使えない。
――――――――――――――――――――
真莉が〈疾風鎌〉を投げると、鎌は回転しながら飛んでいき、ゾンビを真っ二つに切り裂いた。
「わー。この武器本当につよーい。教えてくれた人ありがとねー」
悟は真莉の様子を見ながら感心した。
(へぇ。結構周り見えてるな)
〈雷帝の護符〉を節約するために、コメント欄に意見を求めた上で、新たな武器を生成した。
迫り来るゾンビを前にして、なおコメント欄に最適解を求める冷静さと視野の広さ、対応力。
これは戦闘においても十分使えそうだった。
この部屋の〈混沌石〉はすべて錬成したので、2人は次の部屋へと向かう。
悟は〈マッピング〉でこの近くに落ちているアイテムを調べてみた。
すると、目当てのアイテムが見つかった。
――――――――――――――――――――
〈呪いの指輪〉
――――――――――――――――――――
レア度 :C
運勢 :-10×10分
腕力 :+10×10分
――――――――――――――――――――
この指輪を嵌めた者は運勢が10分ごとに10
低下する。
代わりに腕力が10分ごとに10増加する。
――――――――――――――――――――
(これでいくか)
「真莉」
悟はコメントへの対応で夢中になってる真莉に声をかけた。
「〈竜宮の羽衣〉を錬成するためのアイテムが見つかった。これだ」
悟は呪いの指輪の情報を見せた。
「これで羽衣を錬成して一旦配信を終わろう」
「えー。せっかく盛り上がってきたのに?」
真莉は不満げに言った。
「もっと、配信したいなー。ダメですか?」
真莉が甘えるような声で言った。
悟は真莉の可愛さに
「真莉。もうすぐこのダンジョン内にある〈混沌石〉が枯渇する。そろそろ当たりを引かないとチャレンジ失敗になってしまうから」
なおも真莉は名残惜しそうにしている。
「配信はまた明日もできるよ。今日はこの辺で一区切りしよう」
そう言うと、真莉は渋々納得する。
「わかりました。えー、みなさん、ちょっと今日の真莉は運が良すぎるみたいなんでー、一旦運勢を下げるアイテムを使ってみようと思いまーす。ガイドのクマさんが運勢を下げるアイテムを見つけたのでそれで錬成を試してみますね」
悟と真莉は〈マッピング〉の示す場所へと行って、〈呪いの指輪〉を取得した。
およそ50分ほど経って運勢が下がるのを待つ。
「では、そろそろ運勢も下がってきた頃合いなので、この〈呪いの指輪〉を嵌めた状態で〈混沌石〉を錬成してみますねー。えいっ」
真莉が〈呪いの指輪〉を嵌めた状態で錬成を行うと、見事一発で〈竜宮の羽衣〉を錬成した。
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〈竜宮の羽衣〉
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レア度 :A
魔抵 :+100
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竜宮に嫁ぐ姫のために織られた羽衣。
装備した者は、竜王のブレスにも耐えられる
ほどの魔法抵抗を持つ。
――――――――――――――――――――
「あれっ? えっ? これってもしかして〈竜宮の羽衣〉? やったー。みんな見て。〈竜宮の羽衣〉錬成できたよー」
真莉は羽衣を羽織って見せる。
華やかな真莉が羽衣を纏うと、天女と見紛うばかりの優美さだった。
・うおお
・おめでとー
・チャレンジ成功ですね
錬成が成功したこともあって、リスナーからスパチャが飛ぶ。
「わー。スパチャありがとう。はい。では、〈竜宮の羽衣〉が錬成できたので。チャレンジ成功ということで、今日の配信はこれまでにします。みんなよかったらチャンネル登録と高評価していってね」
真莉のお願いに応える形でチャンネル登録と高評価はドンドン伸びていった。
真莉と悟は5階層に行ってから、ダンジョンから離脱する(代々木ダンジョンは5階層まで行くと、max100で離脱できる)。
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