第16話 拷問と裁判

 不発に終わった民主化革命。

 隣国の仕業である事は明白であった。

 この事件で逮捕されたのは13名。

 関係者だと思われる者は他には54名は殺害。

 逃走したと思われる者は多数。手配しているのは31名。

 逮捕した内、ヴァルキリー隊の手にあるのは3名。

 いかにも軍人と言った感じの30代の男。

 色男風の20代のやさ男。

 腕に入れ墨を入れた20代商売女。

 彼らは武器を取り、ヴァルキリーに攻撃を仕掛けて来た。

 軍人風の男は逮捕される前に自害を図った為、現在、治療中。


 彼らの取り調べを行うのは警務侍女である。

 四畳半程度の狭い取調室に両手両足を拘束具を付けられたやさ男が連れて来られる。彼は部屋の中央に置かれた椅子に座らされた。部屋には椅子しかない。扉以外は天井近くに換気用の小窓があるだけ。

 天井からはランプがぶら下げられている。微かに明るい程度の室内。

 そこに黒い覆面をした警務侍女が入って来た。

 「尋問を行う」

 彼女は手にした鞭を床に放ちながら、そう告げた。

 尋問とは言うが、最初から手荒だった。

 彼女は鞭は座っている男に容赦なく叩き込まれる。

 彼は悲鳴を上げるが、許してなど貰えない。

 皮膚は裂け、血が飛び散る。

 だが、彼女は何も質問する事なく、彼を散々、打ち据えた。

 彼が床に転がり、その床が血で染まる頃、一旦、鞭打ちが止んだ。

 「さて・・・質問だ。名前は何だ?」

 そう尋ねられて、やさ男はニヤリと笑う。

 「さぁね」

 その瞬間、その顔に鞭が打ち込まれた。

 一撃で彼の顔半分が腫れ上がる。彼はあまりの衝撃で気絶した。

 「起こせ」

 彼女がそう言うと、部屋の片隅で待機していた別の覆面をした警務侍女がバケツを持ってきて、彼に思いっきり水をぶっかけた。

 「ぎゃぁあああああ」

 彼は悲鳴を上げた。それもそのはずだ。水はただの水じゃない。しっかりと塩を含ませた塩水だ。それは身体中に付けられた傷に染み込み、激痛を起こす。

 もんどり返りしながら苦しむ男を鞭を持った警務侍女は蹴り上げる。

 「黙れ。名前を言え」

 「誰がお前らみたいな売女(バイタ)に言うか」

 「なかなかの根性だ」

 警務侍女は更に鞭を振るった。

 1時間近い拷問が終わりを告げる。

 ボロボロになった男の意識は無い。

 ただ、死んではいない。痛みが極限に達し、何をしても意識が戻らないだけだ。

 「名前はウラバン。偽名の可能性もある。元ゲット王国兵士」

 警務侍女は得られた情報を確認する。書記を務めた警務侍女が応える。

 「ゲット王国・・・民主化革命で滅びた国ですね」

 「あぁ、王族は公開処刑。確か・・・姫が何人か居たはずだが、民主化革命の首謀者達によって辱められ、殺されたとか。鬼畜の有様だったとか」

 「話では王政による圧政は無く、単純に経済が斜陽となっていた事を逆手にとって、民主化を謀ったとか」

 「民主化革命を狙っている輩は大抵、そういう輩だ。軍隊の中にも潜ってやがる。誰もが一発逆転を狙いたいのだろう」

 「誰もが権力を手にする事が出来る時代ですか」

 「ふん・・・くだらん」

 「次の拷問は女ですか?」

 「そうだな。裁判までに資料を作成せねばならない。急げ」

 「はい」

 こうして、牢屋からまた一人、被疑者が連れ出される。


 王国において、如何なる被疑者も法で裁かれる。

 逮捕されてから1か月以内に裁判が行われる事になっている。

 逮捕した者は彼らを裁判までに捜査して、裁判で罪を告発する。

 被疑者は弁護人を雇う事も出来るが、基本的には自ら抗弁する事が多い。

 それを裁判官が聞き、裁くのである。

 基本的には1審のみで結審する。

 ただ、今回のように革命の罪で捕まった者は大抵、処刑が決まっている。

 すでに公開処刑の準備が着々と行われており、王都の中央にある広場では公開処刑用の巨大ギロチンが設置されようとしていた。 

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エプロンを着た兵士 三八式物書機 @Mpochi

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